テラーノベル
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⚠️冒頭に暴力表現有り
大森がヤクザの若頭です🥱
時は深夜、街の喧騒が静まり返り始める頃。
滉斗は、ふらふらと夜の街を彷徨っていた。普段はあまり飲まない酒を、今日はやけに煽ってしまった。
足元がおぼつかないまま、馴染みのない裏通りへと迷い込んでいく。そこは、ネオンの光も届かない薄暗い路地裏。湿ったアスファルトの匂いと、微かに漂う煙草の匂いが混じり合う、この街の澱のような場所。
滉斗の意識は朦朧としていたが、それでも目の前に立ちはだかる数人の男たちの異様な雰囲気に、背筋が凍りついた。彼らは、この路地裏を根城にする、地元のヤクザの組の若い衆だった。
「おいおい、こんな場所でフラフラしてんじゃねーよ、兄ちゃん」
一人がニヤニヤと笑いながら、滉斗の肩を掴んだ。もう一人が、懐からタバコを取り出して火をつける。その火の光が、滉斗の恐怖で引きつった顔を照らした。
「金持ってんだろ? ちょっと見せてみろよ」
脅すような声と、暴力的な視線に、滉斗は声も出せない。アルコールで鈍っていた感覚が一気に覚醒し、恐怖で体が震えだす。
「ねぇよ…」
か細い声で絞り出す滉斗に、男たちは顔を見合わせて嘲笑った。
「なに?ねえじゃねぇよ、兄ちゃん。ちょっとくらい持ってるだろ?」
そう言って、一人が滉斗の胸倉を掴んだ。そのまま強く突き飛ばされ、滉斗の体は壁に叩きつけられる。鈍い痛みが走る。
「おいおい、抵抗すんなよ。おら!」
ドスッ、と鈍い音が響き、滉斗の腹に拳がめり込んだ。息が詰まり、思わず体を折り曲げる。
更に、腹を抱えてうずくまる滉斗の脇腹に容赦なく蹴りが入った。ヒュッ、と喉から嫌な音が漏れる。恐怖と痛みで、滉斗の目からは涙が溢れ出した。
男達が滉斗に掴みかかろうとした、その時だった。
路地裏の奥から、ゆったりとした足取りで一人の人影が現れた。その人の登場に、先ほどまで威勢のよかった若い衆達が、ピタリと動きを止める。
「…何してるの、みんな」
少しだけ力の抜けた、けれどどこか人を惹きつける声が路地裏に響いた。現れたのは、この一帯を仕切る組の若頭、元貴だった。
元貴は、ゆったりと煙草の煙を吐き出す。ただの青年のように、飾り気のない黒いシャツを着ている。その涼やかな眼差しは、若い衆たちを静かに見下ろしている。
「あ、若頭! す、すみません! こいつが勝手にこの路地に入ってきたもんで…」
若い衆の一人が、慌てて弁明する。しかし、元貴は特に表情を変えず、ただ滉斗の方へゆるりと視線を向けた。
滉斗は、恐怖と屈辱で、すでに目には涙が滲んでいた。体を丸め、小さくなっている。その顔は、酒と痛みと恐怖で赤く染まり、瞳は潤んでいた。頬には、擦りむいた跡まで見えている。
元貴は、そんな滉斗の姿を、しばらくの間、静かに見つめていた。その見るに堪えない様子に、微かに眉を顰める。
何かを探るような、それでいて、ほんの少しだけ、何かを感じ取っているような眼差しだった。
「…もう、いいよ」
元貴は、若い衆たちにそう告げると、彼らは言われた意味を察し、すぐに滉斗から手を離した。
元貴は彼らに向けて特に強い口調を使うこともなく、ただ軽く首を振った。しかし、その静かな態度に、若い衆たちは逆らえないものを感じ、黙って数歩下がった。
元貴は、振り返りもせず、滉斗の近くにしゃがみ込んだ。煙草の煙をゆっくりと夜の闇に溶かしながら、落ち着いた声で滉斗に問いかけた。
「…平気?」
その声は、先ほど若い衆に向けたものよりも、ずっと穏やかで、少しばかり気遣うような響きを含んでいた。
元貴の視線は、滉斗から離れることなく、じっと見守っている。滉斗の頬の擦り傷と、震える体を見て、元貴は小さくため息をついた。
滉斗は、まだ地面に座り込んだまま、震えが止まらなかった。痛みと、恐怖と、そして目の前の男から発せられる、どこか掴みどころのない雰囲気に頭が混乱していた。
元貴は、そんな滉斗の様子をじっと見つめ、ゆっくりと手を伸ばした。
「怪我してる…」
そう呟きながら、元貴の指先が、滉斗の頬の擦り傷にそっと触れた。ひんやりとした指の感触と、予想外の優しさに、滉斗はビクッと体を震わせる。
「っ…平気、ですっ…」
反射的に、滉斗は元貴の腕を掴んだ。その手は、まだ少し震えている。ヤクザと聞いていたから、もっと乱暴な言葉を想像していたのに、目の前の男は、あまりにも静かで、そして優しい。そのギャップに、滉斗の頭はますます混乱した。
元貴は、滉斗に掴まれた腕をそのままに、静かに問いかけた。
「平気じゃないでしょ。顔、血が出てる」
元貴の視線が、滉斗の傷に注がれる。
「…大丈夫、です。自分で、なんとか…」
滉斗は、なんとか立ち上がろうとするが、腹の痛みに顔を歪めた。まだ、体が思うように動かない。
「…無理しなくていい。」
元貴は、滉斗が立ち上がろうとするのを制するように、そっと肩に手を置いた。見た目は華奢で、どこかひ弱に見えるほどなのに、その手から伝わる力は、滉斗が予想もしなかったほど強かった。
まるで巨木が根を張るような、揺るぎない圧力。滉斗は、ゾクリと背筋が冷えるのを感じた。
ああ、この人は本当に『そういう人』なんだ。一瞬で、全身の血が凍りつくような感覚に襲われた。
「このままだと、風邪ひいちゃうよ。それに、傷もちゃんと手当てしないと」
元貴は立ち上がると、滉斗に手を差し伸べた。その手は、細くしなやかで指先まで整っている。
「…僕のとこ、おいで?」
その言葉に、滉斗はハッと顔を上げた。この男の「僕のとこ」が何を意味するのか、滉斗にはすぐに理解できた。ヤクザの組の、本拠地。そんな場所へ、自分が足を踏み入れていいのだろうか。
元貴は、滉斗の迷いを見透かしたように、口元に微かな笑みを浮かべた。
「心配いらないよ。ちゃんと手当てしてあげるから。…それに、このまま放っておくわけにはいかないでしょ」
元貴の言葉は、まるで滉斗の心を読んでいるかのようだった。滉斗は、目の前の男の、どこか不思議な魅力に抗えないでいた。
「…でも…」
「大丈夫。ここから近いし、広いから、ゆっくりできるよ」
元貴は、そう言って滉斗の手を優しく握り、ゆっくりと引き上げた。滉斗の体は、まだ少し痛むけれど、元貴の温かい手に引かれるまま、立ち上がることができた。
路地裏の奥へと続く道を、元貴が先導する。滉斗はその背中を追いながら、これから何が起こるのか、全く予想できなかった。
路地裏の入り口では、若い衆たちが元貴と滉斗の姿を呆然として見つめていた。彼らは、若頭が組以外の人間を、しかも怪我をさせた相手を連れて行くという前代未聞の事態に、目を丸くして立ち尽くしている。
「若頭…、一体…」
一人が呆然と呟くと、もう一人が隣の男の肘を小突いた。
「いいから黙って見送れ! 若頭のお気に召したんだよ、きっと…」
彼らの困惑と、どこか畏敬の念が混じった視線の中、元貴と滉斗は路地裏の闇へと消えていった。
数分後。二人の目の前に現れたのは、想像を遥かに超える、重厚な門構えの日本家屋だった。
(…広い、って言ってたけど…まさか、こんなに…)
滉斗は、圧倒されるようなその屋敷を前に、呆然と立ち尽くした。
本当に申し訳ありません。また新作です。
なんか日に日に妄想の幅が広がっていて、こういう大森さんいいな、っていう思想から物語作っちゃうんですよね。
今回は「俺のタトゥーにキスをして🎶」聴いてたときに、タトゥー入ってる大森良くね…?となり、
タトゥー➡️ヤクザ➡️ヤクザの若頭大森
が誕生しました。
そしてこの作品、mtpにするかwkmrにするかまだ決めてないので、いつかのタイミングで皆さんにお聞きしますね!
どうか温かく見守っていただければ。これからも宜しくお願いいたします🩷
コメント
4件
いやああああ新作嬉しいです!!!!!ヤクザパロ見てみたかったんです😭
初コメ失礼します! ヤクザパロの🍏さんを探してました!めっちゃ好みです… mtpかなと読みながら感じました☺️
さいこぉぉでぇぇす!!欲を言えばmtpもwkmrもどっちも見てみたい!!強欲ですいません!!!なぎささんに任せます!!なんでも読むので!!!