テラーノベル
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あの約束から、さらに数ヶ月が経った。毎日のメールは、私の心の支えになっていた。
佐野くんの成長報告、些細な日常の話、そして時折混じる甘い言葉。
『先輩、今日も疲れたけど、先輩のメール見たら元気出たわ。早く会いたいな』
そんなメールに、私はいつも温かい返信を送っていた。
でも、ある日から、ぴたりとメールが来なくなった。
最初は1日だけ。
「忙しいのかな……」
そう思って、自分からメールを送ってみた。
「佐野くん、元気?最近忙しそうだけど、体調崩さないでね」
返事なし。
次の日も、来ない。
心配が少しずつ募る。
「もしかして、何かあった?」
3日目。
仕事中も気になって、スマホを何度も確認してしまう。
完璧主義者の私が、資料のミスをしてしまうほど。
夜、家に帰ってから、ついに電話をかけた。
呼び出し音が続く。
……出ない。
留守電に切り替わる。
「佐野くん?メール来ないから心配で……。何かあったら、連絡してね」
声が少し震えていた。
4日目。
まだ来ない。
頭に悪い想像が浮かぶ。
事故?病気?それとも……私のせいで疲れちゃった?
高橋さんの事件の記憶が蘇って、胸が痛む。
もう一度電話。
今度は、繋がった。
『もしもし……先輩?』
佐野くんの声。
少し弱々しくて、鼻声っぽい。
「佐野くん!どうしたの?メール来ないし、電話も出ないし……心配したよ!」
『ごめん、先輩……風邪引いて、熱出てたんや。スマホ触れへんくて……』
ホッとして、涙がにじんだ。
「大丈夫?病院行った?」
『うん、薬飲んで寝てた。もう熱下がったよ。先輩の声聞けて、元気出たわ』
声の向こうで、くすっと笑う音。
でも、弱気な感じが伝わってきて、胸がキュンとする。
「無理しないでね。早く良くなって」
『先輩、ありがとう。俺、もっと頑張るから……待っててな』
電話を切った後、私はスマホを胸に抱いた。
このトラブルで、改めて気づいた。
佐野くんがいない日常が、どれだけ寂しいか。
メールの糸が、切れそうになっただけで、心が揺らぐ。
彼の成長を、もっと近くで見ていたい。
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