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〈kiriyan side〉
厚い雲が唸り声を上げている。
土砂降りの雨でも学校は授業をする。いったいこんな時に誰が学校に来るのかと思うけれど、休むのはごく数人しかいなかった。
それはきっとこの雨がこの学校内だけに見えてる人たちだから。
以前、なかむからスマイルについて言及された時があった。自分でもよく分からなかったのが本音だ。
それでも、きっと覚悟が足りていなかったのだと思う。彼を助けたいと言う覚悟と、その時が来た時は見送らなくてはいけないと言う覚悟。
kr 「ふぅ、、、」
漏らす息はかすかに空気を揺らす。
雨が波紋を描くキャンバスは俺を反射している。それが俺の裏の顔を映しているようで気味が悪かった。
風が雨を拭って、優しく光を運ぶ。
俺はこんなにも歪んでいるのに、俺の力はこんなにも儚くて綺麗に見える。
みんな騙されているんだ。
kr 「七不思議さーん」
扉に手をかける。
錆びに手が触れると、愛しい声が聞こえた。
sm 「え、誰かいる?」
kr 「スマイル!?ここにいたの?」
sm 「暗くて何も見えないんだけど、」
sm 「これどうなってんだ、、、。 」
kr 「待って今開け、」
kr 「、、、、、お前ほんとにスマイルか?」
sm 「何言ってんだよ。早く助けて」
kr 「本当に?」
sm 「逆になんで嘘つく必要あんだよ」
kr 「、、、俺のこと好きでしょ」
sm 「そりゃあもちろん、好きだよ」
sm 「大好きだよ」
はは、彼か否かを確かめるための罠がこんなにも俺を苦しめるなんて。
でも、もし中にいるのが本物だったら?
そんな都合のいいことばかりが頭に浮かんで、結局また傷を抉った。
kr 「残念だけど、スマイルはそんなこと言わないんだよね」
扉を開けて、光を差す。
この時の霧雨は針のようになぜか痛かった。
開いた隙間からは俺の雨と瘴気がせめぎ合う。
、、、あれ、今までこんな互角なことあったっけ?
クハッ、ケホッ、、、
ーーーきりやんっ!!
あ、ダメだよ。なかむ。
こっちに来たらなかむたちにも被害が、、
トスッ
nk 「、、え?」
まるで蝶が水面に着地した時のように静かに、ナイフが刺さる音がした。
それと同時に瘴気は浄化され、カラスが空へと帰っていった。ふわりと風を操っているように靡く、目にかかるほどの長さの髪から美しい瞳が姿を表す。
sm 「大丈夫か、きりやん」
kr 「スマ、、イル」ケホッ
nk 「どうして、、?何処にしたんだよ今まで」
sm 「いろいろあったんだよ。」
そう言いながら優しく俺の手を引き、腰を支えられる。全く情けなくなったものだ。
sm 「きりやん。時間がないから手短に答えて」
sm 「この学園の怪異が全員なくなったらどうなるか知ってるか?」
kr 「え、そりゃあ、この世界が」
ーーースマイルー??おわったぁ??
sm 「あ、ごめんもう行かなきゃ」
kr 「え、スマイル大丈夫なの?」
長 「あ、いたいたぁ!流石スマイルだね。ほら帰るよ」
あれは、やっぱり七不思議の長だ。
そいつがなぜスマイルに?
なんて考えているうちに引き留めようとしていた手はするりと解けてしまった。
sm 「絶対戻るから。」
…………………………………………………*
〈kintoki side〉
遠くから聞こえたきりやんとスマイルの会話。
怪異がいなくなったら、この世界はどうなるのか。
スマイルがそれを聞くってことは、俺が思っているような単純な答えを求めていたわけじゃないってことだろう。
kn 「きりやん、」
kr 「ごめん!ちょっとダメだったみたい。」
ケホッ
kn 「ねぇ、しばらく噂を解決するのやめない?」
kr 「は?」
nk 「俺もそう思う。今のやんには休息が必要だよ」
kn 「それに行動に移す前にもう一回みんなで話し合った方がいい気がする 」
kn 「俺たち、共有すべきことが山ほどあるよ。きっと」
kr 「、、でもスマイルは」
sh 「あの感じ、今のスマイルは安全じゃない?あの怪異から信用を得てるっぽいし」
br 「やんさん、教室戻ろう?」
kr 「、、、、、そうだね」
俺たちが背を向けた倉庫は寂しげに開いたままで、そこには新しくぽつぽつと水玉模様が描き始めていた。
みんな、思っていたよりも冷静だった。
いなくなったはずの友の姿をみても、混乱の渦には足を取られなかった。それには彼への信頼と、彼が進むであろう未来と、ちょっとの反抗心が含んだ。ただそれだけ
…………………………………………………*
kn 「ごめん、さっきスマイルとの会話聞こえちゃって、、、」
kr 「怪異全滅の話でしょ」
br 「あれって、実現できるの?」
kr 「正直、噂を改変して怪異をなくす俺たちの方法は全滅にはできないと思う」
kr 「だから、、スマイルが殺戮魔的なことになってるのかもしれない」
nk 「けど、七不思議の長がスマイルに指示してる感じだよね?それだと奴自身も消えなきゃならないってことになるとすると、、」
sh 「長にメリットはないから、スマイルを騙している可能性があるってことか。」
kn 「じゃあ、今スマイルがやってる怪異の抹消が叶ったらどうなるんだ?」
kr 「ぇ、、まさか」
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