テラーノベル
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前任の主が戦士してからおよそ1年が経った。
戦闘で負傷した執事たちもほぼほぼ回復し、今までのように依頼もこなせるようになっていた。
どうかこのまま穏やかな日常が続いてほしいと願っていた時、主が現れた気配を感じてベリアンは軽パニック発作を起こしてしまった。
(違う・・・あの主様はもう・・・でも、またあんな主様がいらっしゃったらっ・・・)
目眩と息苦しさで壁に手をついてしゃがみ込んでしまった。
冷や汗が止まらず、新しい主に挨拶をしなくてはいけないのに体が動かない。
グラグラする視界に、扉が開いてこちらに小さな足が向かってくるのが見えた。
『大丈夫ですか!?』
よく通る高い声がベリアンの耳に届いた。
ゆっくりと顔を上げると、童顔の少女がハンカチで冷や汗を拭いてくれた。
『ひどい汗ですね、どこか苦しいですか?』
「はぁ、はぁ・・・すみません、大丈夫、です・・・」
ベリアンは段々と落ち着いてきて少女からハンカチを受け取った。
「ありがとうございます、大分楽になりました・・・
こちらは洗濯してお返しいたしますので・・・」
『あ、そんな、お気になさらず・・・』
少女は顔の前でブンブンと手を振った。
その手には金の指輪が光っている。
この少女がどうやら新しい主のようだ。
ベリアンは心優しい少女が主になったことに安堵し、立ち上がった。
ベリアンの身長よりもうんと小さい主はつむじがはっきり見えた。
ツヤツヤの髪がとても美しい・・・
そこでベリアンは気付いた。
頭に耳がない。
「あ、主様・・・み、耳がっ・・・!?」
『みみ?耳って・・・?これ?』
主は髪を掻き上げて側頭部についている耳を見せた。
ベリアンは本物の人間を見たことが無いわけではない。
しかし、その人間はどの個体も施設で厳重に守られていて、一般の獣人達は滅多に見ることが出来ないものであった。
勿論、貴族たちが珍しいペットとして飼っているという話を聞かないでもないが、ほんの数体しか居ないだろう。
そのくらい、人間というのは珍しく、弱く、守るべき生き物であるのだ。
「に、人間!?」
『・・・人間って、なにそれ・・・?
貴方だって耳付いてるけど人間じゃないの?』
「私達は獣人です!貴方は純血の人間でしょうか!?それなら、ああ、どうしましょう・・・!?どうしたら良いのでしょうか!?」
『獣人・・・。じゃあ、その耳と尻尾は本物・・・?』
主がベリアンが足の間に入れてしまった尻尾に触れようと手を伸ばすと、ベリアンは飛び上がって距離を取った。
「だ、ダメです!人間は脆いんですよ!?
私達が不用意に触れたら傷つけてしまいます!!」
『え・・・?どういうこと・・・?』
騒ぎを聞きつけて執事たちが集まってきたことで、主もこれはあまり良くない状況なのかも知れないと感じ始め、軽いパニックに陥るのだった。
コメント
1件
ベリアンが「人間は脆い!」って本気で怯えてるところが可愛かったです(笑) 前の主のトラウマがあるのに、耳のない少女に優しくされて戸惑う姿がじんわりきました。種族の常識がひっくり返る瞬間、これからどうなるのか気になります!
MAKO
MAKO
MAKO