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みぃ
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『誰も覚えていない夜』
「最初の投票」
【01:00:00】
中央ホール。
残り時間は、あと一時間。
モニターには、35人の名前が並んでいる。
誰もがその画面を見つめていた。
そして――
一人を選ばなければならない。
ななもり。「……みんな。」
ななもり。「そろそろ、投票について考え始めよう。」
けちゃ「……もうそんな時間ですか?」
だいきり「はい。」
だいきり「時間は止まりませんからね。」
けちゃ「うぅ……。」
ぷりっつ「まあ、いつかは決めなあかんからな。」
あっきぃ「……。」
あっきぃは腕を組んだまま、モニターを見ていた。
ぷりっつ「あっきぃ?」
あっきぃ「……ん?」
ぷりっつ「さっき言ってた、気になる人。」
あっきぃ「……。」
ぷりっつ「まだ言わないん?」
あっきぃ「……言ったほうがいいのかな。」
ぷりっつ「理由があるなら、聞きたい。」
あっきぃ「……。」
少し考えてから、あっきぃが口を開く。
あっきぃ「発言そのものじゃない。」
ぷりっつ「え?」
あっきぃ「誰かが話してるときの反応。」
ぷりっつ「反応?」
あっきぃ「誰かの名前が出たとき。」
あっきぃ「誰かを庇ったとき。」
あっきぃ「その瞬間だけ、表情が変わる人がいる。」
ぷりっつ「……。」
あっきぃ「俺は、そこが気になってる。」
ぷりっつ「なるほど……。」
あっきぃ「でも。」
あっきぃ「それだけなんだよ。」
あっきぃ「だから、今は名前を出せない。」
ぷりっつ「分かった。」
少し離れた場所。
ロゼとばぁうも話していた。
ばぁう「ロゼ。」
ロゼ「何ですか?」
ばぁう「さっきの話、どう思う?」
ロゼ「どの話ですか?」
ばぁう「ころん、みかさ、てると。」
ロゼ「……。」
ロゼ「正直に言えば。」
ロゼ「まだ、誰か一人を怪しいとは決められません。」
ばぁう「俺も同じ。」
ロゼ「ただ。」
ばぁう「?」
ロゼ「気になることはあります。」
ばぁう「何?」
ロゼ「三人とも、誰かに庇われています。」
ばぁう「……確かに。」
ロゼ「もちろん、それだけで怪しいわけではありません。」
ばぁう「庇った側が人狼って可能性もある。」
ロゼ「はい。」
ばぁう「逆もある。」
ロゼ「そうです。」
ばぁう「……難しいな。」
ロゼ「だからこそ、慎重にいきましょう。」
その頃。
ころんは、ゆたと話していた。
ころん「……ゆた。」
ゆた「はい。」
ころん「僕、どうしたらいいと思う?」
ゆた「どうしたら……?」
ころん「名前が出ちゃったから。」
ゆた「……。」
ころん「このまま何も言わないのも怪しい気がするし。」
ゆた「でも、無理に喋る必要もないと思います。」
ころん「……。」
ゆた「ころんさんが人狼じゃないなら。」
ころん「……うん。」
ゆた「普通に話していればいいと思います。」
ころん「……ありがとう。」
ゆた「はい。」
ころん「……僕。」
ころん「ゆたのこと、信じてるから。」
ゆた「……。」
ゆた「僕も、ころんさんを信じたいです。」
少し離れた場所。
るぅととてるととメルト。
るぅと「てるとくん。」
てると「はい。」
るぅと「さっきから、ずっと静かですけど。」
てると「……。」
てると「ちょっと考えてます。」
メルト「何を?」
てると「誰に投票するか。」
るぅと「……決まったんですか?」
てると「まだです。」
メルト「僕も。」
るぅと「僕もです。」
てると「……。」
てるとは少し俯く。
るぅと「てるとくん?」
てると「……もし。」
るぅと「はい。」
てると「もし、自分が疑われたら……。」
メルト「うん。」
てると「ちゃんと、みんなに話せるかな。」
るぅと「話せますよ。」
てると「……。」
るぅと「大丈夫です。」
メルト「一人じゃないから。」
てると「……ありがとうございます。」
その頃。
さとみとみかさ。
さとみ「みかさ。」
みかさ「……はい。」
さとみ「まだ気にしてる?」
みかさ「……少し。」
さとみ「理由が分からないから?」
みかさ「はい。」
さとみ「まあ、そうだよな。」
みかさ「俺……。」
みかさ「何もしてないのに疑われるの、怖いです。」
さとみ「……。」
さとみ「みかさ。」
みかさ「はい。」
さとみ「今のところ、俺はお前を疑ってない。」
みかさ「……。」
さとみ「だから、そんなに思い詰めるな。」
みかさ「……ありがとうございます。」
さとみ「ただ。」
みかさ「?」
さとみ「俺のことも、盲目的には信じるなよ。」
みかさ「……え?」
さとみ「このゲームでは、それくらい警戒してたほうがいい。」
みかさ「……。」
みかさ「はい。」
その会話を、少し離れたところから見ている人物。
にしき「……。」
はりま「にしき?」
にしき「何?」
はりま「また見てる?」
にしき「うん。」
はりま「何が気になるんだ?」
にしき「人間関係。」
はりま「……。」
にしき「誰が誰を信じているのか。」
にしき「誰が誰を疑っているのか。」
はりま「それ見て何になる?」
にしき「知らない。」
にしき「ですが、後で役に立つかもしれません。」
はりま「……なるほどな。」
【00:45:00】
モニターが点滅する。
全員「……!」
『投票開始まで、残り45分。』
けちゃ「うわ……。」
だいきり「本当に始まりますね。」
けちゃ「だいき……。」
だいきり「大丈夫ですよ。」
けちゃ「……うん。」
ななもり。「ここからは、今までの話を整理しよう。」
ななもり。「まず、現在名前が出ているのは――」
モニターに三人の名前が表示される。
【ころん】
【みかさ】
【てると】
ななもり。「この三人。」
心音「でも、それだけで投票するのは危険です。」
らいと「じゃあ、他に怪しい人を挙げる?」
心音「……。」
心音「まだ決められない。」
らいと「そっか。」
Lapis「俺もです。」
タケヤキ翔「俺も、まだ迷っとる。」
パルオ「俺もです。」
莉犬「俺も。」
るぅと「僕もです。」
ジェル「なあ。」
全員がジェルを見る。
ジェル「一つ聞いてええか?」
ななもり。「うん。」
ジェル「もし、誰も決められへんかったら?」
ものくろ「投票を棄権することもできます。」
ジェル「そうなんか。」
ジェル「でも、何もしないのも怖いな。」
しゆん「一人も脱落させないって選択も、十分ありです。」
まぜ太「俺もそう思います。」
あっきぃ「……。」
まぜ太「初日に無理して誰かを吊る必要はない。」
心音「ただ。」
心音「人狼は夜に動く。」
まぜ太「……。」
心音「何もしなければ、その分だけ人狼に時間を与える。」
静寂。
さとみ「それもそうだな。」
ロゼ「つまり。」
ロゼ「投票するのも危険。」
ロゼ「しないのも危険。」
ばぁう「……。」
ロゼ「どちらを選んでも、リスクがあります。」
そのとき。
モニターが再び切り替わった。
『投票前・最終質問』
『全員に一つだけ質問します。』
けちゃ「質問?」
画面に文字が表示される。
【あなたが今、一番信じたい人は誰ですか?】
全員「……。」
莉犬「……。」
るぅと「……。」
ころん「……。」
ちぐさ「……。」
みかさ「……。」
てると「……。」
それぞれが、黙って考える。
そして。
一人ずつ、答えていく。
莉犬「るぅとくん。」
るぅと「莉犬。」
ころん「ゆた。」
ゆた「ころんさん。」
さとみ「みかさ。」
みかさ「……さとみくん。」
ジェル「まぜ太。」
まぜ太「ジェルくん。」
あっきぃ「……。」
ぷりっつ「あっきぃ。」
あっきぃ「……ぷーのすけ。」
心音「……。」
心音「今は、誰もいない。」
その答えに、何人かが心音を見る。
心音「まだ信じるには早い。」
ロゼ「なるほど。」
てると「るぅとくん……。」
メルト「るぅとくん。」
ちぐさ「らお。」
らお「ちぐ。」
やなと「……。」
パルオ「やなと。」
やなと「……パルオ。」
恋人同士だけが、互いの名前を口にした。
けれど――
それを気に留める者はいなかった。
【00:20:00】
残り20分。
投票が近づいている。
ころん「……。」
みかさ「……。」
てると「……。」
三人は、それぞれ別の場所で黙っていた。
そして。
その三人を見ている人もいる。
ころんを庇った、まぜ太。
みかさを庇った、さとみ。
てるとを支えた、るぅととメルト
その関係まで疑い始める者も出てきた。
にしき「……。」
にしきは静かに周囲を見回す。
そして――
誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
にしき「……誰が、最初に動くのでしょうね。」
【00:10:00】
投票まで、あと10分。
ななもり。「みんな。」
ななもり。「最後にもう一度だけ言います。」
ななもり。「今から投票する相手は――」
ななもり。「必ずしも人狼とは限りません。」
ななもり。「だからこそ。」
ななもり。「自分で考えて、自分で選んでください。」
全員「……。」
ななもり。「それでは――」
モニターに大きく数字が表示される。
【10:00】
【09:59】
【09:58】
時間が減っていく。
35人は、それぞれの視線を交わす。
誰も、何を考えているのか分からない。
誰を選ぶのかも。
誰を疑っているのかも。
そして――
誰が人狼なのかも。
【05:00】
残り5分。
ころん「……。」
みかさ「……。」
てると「……。」
【03:00】
残り3分。
【01:00】
残り1分。
そして――
【00:10】
【00:09】
【00:08】
【00:07】
【00:06】
【00:05】
【00:04】
【00:03】
【00:02】
【00:01】
【投票を開始します。】
35人の前に、投票画面が表示された。
その瞬間。
誰もが――
自分の選択を迫られた。
――第5話「最初の投票」終わり。
コメント
2件
めっちゃ気になる 続き楽しみ!また待ってる
みぃさん、第5話「最初の投票」読ませていただきました! 投票直前の緊迫感がすごく伝わってきました…。「信じたい人は?」の質問で心音さんが「今は誰もいない」って答えたところ、グッときました。まだ信じるには早いって、すごくこのゲームの怖さを表してるなあって。 にしきさんの「誰が最初に動くのでしょうね」のつぶやき、めっちゃ気になるラストでした!続きが楽しみです🤍