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あの日、屋上で君と出会わなかったら僕は居なかった。
出会えてよかった。
ぼくは、死ぬはずだった。楽になるはずだった。でも、会ってしまったんだ。あの日、屋上で儚く笑う、美しい君に。死のうとしたことなど忘れ、話しかけてしまったんだ。
「何してるんですか。こんなところで。」
急な問いかけに、彼女は驚きもせず笑って答えた。
「ここから見る景色が好きなの。綺麗だと思わない?」
あまりにも綺麗な瞳に、つい見惚れてしまう。これが一目惚れだろうか。触れたいという気持ちを抑え、話を続ける。
「そうなんですか。確かに綺麗ですね。」
「そうでしょ。私この景色が本当に好きなの。」
彼女は、とても嬉しそうに微笑んだ。ぼくは死にたかったことも忘れて彼女と話す。
「あ、そういえば名前きいてなかったね。私は香菜。君は?」
「零です。」
「そっか。じゃあ零ってよんでいい?あと、敬語もやめよう。」
「…うん。わかったよ香菜。」
「ふふっ。嬉しい。生まれて初めての友達だ。」
友達か。絶対出来ることはないと思っていたのに。でも、香菜なら嬉しいな。そう思っているとチャイムが鳴った。
「もうこんなじかんか。戻らなきゃ。じゃあね零。」
「じゃあ。」
教室に向かう香奈の背中を見送りながら、ふと気づいた。香奈といたるときは死にたかった気持ちが嘘だったように消えていたということに。