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少女戦姫

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少女戦姫

30 - 弐章 準備期間

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2024年09月27日

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「それで?あんたはどの大会に出るのよ?」

「うーん。わかんないから直近の大会に出ようかと」

「はぁ…。あきれたほんと。いくら戦姫大戦に興味なくとも何の大会がいつあるのかくらいは把握してなさいよ。」

「ンなこと言っても、もとより興味ないんだぞ?調べる気もあるわけが…。」

「その天使創造計画プロジェクトエンジェルが気になるんなら大会も調べなさいよ。黒幕みたいな奴が大会で待つとか言ってたんでしょ?」

「もうおっしゃる通り過ぎてぐうの音も出ないっす。」

「とりあえず私が協力してあげるから。」

「助かるぅ。やっぱり持つべきは友だよな」

「都合いいことぬかすなアホ。」

「そんじゃ直近の大会を教えてくださいまし?」

「…。直近は『新人応援大会』ていう定期的に開催される大会があるわね。」

「参加条件は?」

「フリーマッチでの戦績勝利数「20勝」以上、アリーナランクE帯以下。この二点が出場条件になるね。」

「一応条件は満たしてはいるか。」

「この辺のレベルなら楽に行けるだろうけど、大会に出るとき私から一つ縛りを設けるわ。」

「はぁ!?なして!?」

「これはあんたのためでもあるんだから受け入れなさいな。」

「なら内容を聞かせてくれや。」

「あんたの戦姫のスキル『覚醒』の使用禁止。」

「あー…。それは、僕も縛ろうと思ってたから大丈夫。」

「彼女がそんなスキルで暴れたらまぁ目を付けられるし、何より大会運営から呼び出しがかかる。」

「これ以上の面倒事はごめんだね。」

「でしょ?だから覚醒の使用は今大会では禁止してほしい。もちろん非常事態なら使っていいわよ?」

「非常事態になるようなことが起きてほしくないんですが…。」

「使わないことに越したことはないからね。」

「その大会はいつ頃あるんだ?」

「明後日よ。」

「時間全然ないやん。」

「今日は私の戦姫がこってり絞ってくれるから安心なさい。」

「それはあいつの問題だから僕は関係ないよ。」

「で、明日は座学を行います。」

「勉強は嫌です。」

「ダメです。行います。そうしないと大会楽に勝てないから。」

「えぇ…。」

「リナぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

戦姫フィールドから出て来るや否や情けない声とともに一直線にリナの元に駆け寄る一人の戦姫。そしてその後ろから頭を掻きながらゆったりと飛んでいる別の戦姫。どうやら一通り楽しんだみたいだが、泣きついてきた戦姫…カナはこってり絞られたのかほんとに涙ぐんで帰ってきた。そして、やれやれ顔で帰ってくるフウカだが泣かせたのを悪く思ってるのか少しばつが悪そうな雰囲気を感じた。

「騒いで帰ってくるなって、僕も恥ずかしいから」

「だってだって!フウカが私のこといじめるんだもん!!」

「いじめてねぇわ。誤解を生む発言を控えなさい」

「どうせあれだろ?戦闘中デカい態度とって返り討ちにあったって話だろ?」

「まぁ、その通りなんだけど。あたしは近接攻撃を得意としててこの子も近接が好きみたいだからさそこを重点的に鍛えようと思って、武器禁止の拳のみで戦闘して読み合いがうまくなってほしかったんだけど…。」

「何が読み合い強化だ!?一方的にぶん殴ってきて読み合いもクソもなかったじゃん!」

「いや、ほら?覚醒使っていいって話しただろ?」

「したよ?確かにそういわれたけど、覚醒使ってもなお攻撃がかすりもしないしパワー特化みたいな話しといてスピードも高いし覚醒使った拳と同格の出力を平然と出してくるし、ここまでボコボコにしなくてもよくない?」

「それは…。ほら、あれだ。楽しくなってしまい…。」

「結局私の強化は二の次で戦闘を楽しんでるだけじゃん!フウカの娯楽のために私は利用されたんだぁ!!」

「…。一応聞いくが何戦したんだ?」

「確か15戦位したか?」

「戦績は?」

「あたしが14勝カナが1勝だ。」

「ボコボコにしすぎだろうに…。」

「こればっかりはあたしが悪いよ。そこは反省してる。けど、叩けば伸びる人材なのは確かよ。」

「そんなスパルタ方式は結構でございます。」


例の事件により信頼が落ちたミライソフト、規模も縮小し衰退していく可能性が大きくなり不安を抱える社内。平社員も役職者も慌てふためき何とか信頼回復を試み会議を何度も重ねる。会社の存続がかかってるそんな状況下で何一つ焦ることなく廊下を歩く一人の男。

「…。随分と社内は慌ただしいですね。」

歩く男のスーツの胸ポケットから顔を出しそうつぶやく戦姫。

「まぁ、あのモールの件がこけたからね。それが警察沙汰になったのは予想外だけど。」

「それにしては落ち着いてますね?まるで想定内かのようですが。」

「そうかい?これでも僕はかなり焦ってるよ?」

「でしたらもう少し他の社員同様慌ててみましょうよ。」

「うーん。それはそれで難しいかな?」

「……。まぁ、詮索はしないでおきます。それで?今はどちらに向かってるんです?」

「開発部門に友人がいてね。彼にちょっと相談したいことがあるんだよね。」

「このタイミングじゃないとだめでしたね?」

「ん~。もともとモールの件が終わったら話に行こうと思ってたからさ。

それがたまたまこういった結果になったってだけよ。」

「あくまで狙ってこのタイミングというわけではないんですね?」

「そりゃもちろん。」

「けど、ミカゲ様がこのタイミングで開発部門に顔を出すのは違和感しかないです。ほかの役職者は大忙しだというのに、あなただけ自由に行動しているには……。」

「僕に限らずほかの人間も思いのほか自由に行動してるけどなぁ」

自身の戦姫とのんきな会話をしながら慌ただしい廊下を歩いていく。


エレベータに乗り地下施設にたどり着く。その後受付に顔を出すとそのまま通してもらい目的の人物のいる部屋にと足を踏み入れる。中は戦姫の装備に関する資料が散乱しており、いたるところにエナジードリンクの空き缶が転がっている。また、機械関連の本や歴史の本など戦姫にあまり関係なさそうな本も床に積まれており、誰が見ても汚部屋と判断できるひどい状況の部屋。そんな部屋の奥の方に設置してあるデスクに突っ伏して寝ている人物がいる。彼が目的の人物だ。何とか彼の元まで近づき軽く肩を揺さぶり起こしてみる。

「おはよう博士?」

「……。起きませんね?」

「うーん。起きてくれないと困るんだよなぁ。」

「お仕事忙しかったんでしょう。ここは出直しましょう。」

「いいや?ここの人間は自由に休めるんだ。一日のノルマが課せられいてそれが達成できたなら余った時間は自由に使ってもいいというルールのもと働いてるはず。」

「その一日のノルマが私達が来る少し前にようやく終わってその休憩時間に私たちが来た可能性は考えないんですね?」

「そりゃな?こいつ優秀だからそんなノルマ出勤して午前に達成してるはずだもん。少なくとも僕が知り合ってから前回まではそうだったからね。」

「私は今回初めて来たんでこれ以上は何も言いませんよ。」

「……。なんだぁ?うるさいなぁ。」

「お?起きた起きた。」

「人が気持ちよく寝てるのに起こすような奴は誰だぁ?」

「そんなの僕しかいないでしょ?」

「……。まぁ、確かにお前さんしか俺は知らんな…。ふぁぁ…。」

ぐしゃっとした髪をポリポリと搔きながら大きなあくびを一つする。長らく剃ってないのか中途半端に生えたあごひげに変に傾いた眼鏡。ダルダルのYシャツがズボンから出てきている。身なりからして自分に明らかに無頓着なのがわかるこの男こそがミカゲが会いたがっていた人物である。現在の言動行動からは到底想像つかないが、この男がミライソフト製の戦姫装備の設計開発の指導を行っていた第一人者なのだ。

「珍しく昼寝なんてして、なんか行き詰まることでも?」

「そりゃ上の人間が失態を犯したせいで社会からのイメージはがた落ち。その信頼をもう一度勝ち取るために無理難題を吹っ掛けられてんだわ。」

「それにしては気持ちよさそうに寝てたけどな?」

「ある程度は片づけたがそれにしても八つ当たりみたいにこっちに仕事をふっかけてな?そりゃふて寝もしたくなるもんさ。」

「怠惰な博士がそんな勤勉になるなんて、明日は槍が降るか?」

「バカ言え?槍は槍でも『スピア』が落ちてくるわ。」

「それは困るなぁ?そしたら国は崩壊して戦争が始まるぞ?」

「そのくらい珍しいことなんだろ?俺がしっかり働いてると?」

「そうだね。だから、明日にはまたぐーたらしてくれよ。」

「ハイハイ…。それで?そんなことを言いに来たんじゃないんだろ?」

「そそ。いくつか聞きたいことがあって今日は来たんだ。」

「俺が解答できる範囲のものにしてくれよ?」

「大丈夫!すぐに食いつく話さ。

天使創造計画プロジェクトエンジェル』に関係する戦姫と接触した。」

「なんだと!?その戦姫はどこにいる!!」

「待った待った。落ち着けって博士。話は最後まで聞くもんさ。」

「…。あぁ、済まない。『覚醒』を持つ戦姫などいつ振りか覚えてなくてね。」

「この戦姫なんだが僕の見立てだとあくまで『関係ある』だけで天使創造計画で生まれた戦姫とは別物だと思うんだ。」

「…根拠は?」

「博士が話してくれた天使はみんな残虐性を持ち得ているのに対して彼女は残虐性のかけらもない。むしろ彼女はアニメや漫画の主人公のようにピンチになって初めて限界以上の力を出す戦姫だった。」

「堕天使の線は考えないのか?」

「考えたけど、それだと彼女の今回の活躍は『覚醒』の二文字じゃ説明がつかない。堕天使は覚醒が使える代わりに戦姫としては使えないとされてるんだろ?」

「そうだな。堕天使はいわゆる『覚醒の祖』のようなものだ。そのスキルを獲得するために生まれたため戦闘においては良いとこでもアリーナランクEが限界だろう。」

「でしょ?でも彼女は違う。僕の戦姫、ヒマリが使う[五月雨]さみだれを聞いただけで再現し、その上それを使い相手の戦姫を倒していた。」

「馬鹿な!?そんな戦姫がこの世に存在しているわけが…。」

「でも実際僕はその攻撃も確認してる。天使ではないにしろ関係はある戦姫だ。これについての意見を聞きに来たんだ。」

「……。天使以外に覚醒が使える戦姫なんてこの世に存在するはずが……。いや、まさか?あの話は噂ではなかったのか?」

「何か心当たりがあるんですか?」

「俺も当時信じてはいなかったが、ある噂があるんだ。」

「それは?」

「天使が暴れていた暗黒時代。その天使を止めるために生まれた戦姫がいると聞いたことがある。この話はネット掲示板に書かれたことで有名になった噂話の一つで、書き込みをした人物曰く天使と対戦した戦姫も『覚醒』を使用していたと。」

天使以外の覚醒を使う戦姫ですか……。」

「この戦姫たちは天使が現れたときのみ確認され、そのすべてに勝利を収めているほどの実力がある。そして、更に奇怪なのが天使が消えたと同時にその戦姫も姿を消したんだ。」

「天使を狩るために生まれた戦姫、ということですか?」

「確証はないが恐らくそうだろう。」

「では、その戦姫のうちの一人ではないかと?」

「かもしれないが、それにしては不可解な点がいくつかある。」

「?」

「まず、その天使を倒していた戦姫は天使以外には勝負を挑まれても応じないという話がある。」

「本当に天使を撲滅するために生まれた戦姫なんですね。」

「つぎに、あの天使を倒せる戦姫がなぜ今になり一体だけ現れたのか。仮定の話ではあるがその戦姫が天使を倒したものなら彼女のほかにも現れたっておかしくない、いやむしろ現れないとおかしいのだ。天使が出現したときは必ず天使の人数に合わせた全員が出るのが通例になっていたと掲示板に書かれていたんだからな。」

「では、彼女はその天使を倒した戦姫とはまたべつもの?」

「だろうな。間近で見たわけではないから何とも言えないが、天使でも堕天使でもなければその天使を倒した戦姫でもない。『第三の覚醒使い』と呼んでもいいだろう。」

「……。ますます彼の戦姫に興味が湧いてきた。」

「ちなみに、その戦姫を所持している人物は知っているのか?」

「もちろん知ってるよ。所持者の名前は『リナ』名前は女の子みたいだけど男の子だよ。そして彼の戦姫の名前は『カナ』この子が覚醒を使う第三者ってやつだよ。」

「リナ……。そしてカナ。それが第三の覚醒者か。俺も興味が湧いた、二人について調べておいてやろう。代わりにミカゲには彼女の戦闘データを定期的に俺によこしな。」

「了解。博士なら了承してくれると思ってたよ。」

「ふん…。それと、博士っていうのをやめろと何度言えばわかる。」

「いいじゃん博士。なんか格好良くない?」

「格好良くない。お前のセンスは中学生と何ら変わらんぞ?」

「若々しいってことね。」

「あのなぁ……。」

「ごめんごめん。それじゃ、明日早速彼と会って話してくるよ『オダマキ博士

「だから博士をやめろっての……。」」

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