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『双子の名探偵は今日も嗤う』〜謎あるところ闇は生まれる〜
特別編
第3話 真のボス
トワイライト船 スイートルーム
ドガッ!!
俺はドアを蹴破る。
『やれやれ、ドアを脚で開けるなんて。悪魔執事は礼儀がなってない。』
『主様を攫って洗脳させたあんたみたいな奴に礼儀なんてないっすよ。』
『おー怖い。攫った。か…そうだな。俺は彼女を攫ったよ。俺は自分の欲しいものは必ず手に入れるんだ。それが美しいものなら、尚更。』
『っ……。』
ギリっ。
俺は武器を握り締める。
『そうやって洗脳してるんすよね。主様もさっきの奴のことも。あんたは洗脳してでしか人を操れない。…俺は許せないんすよ。』
俺は鞭を振り上げる。
『俺は薔薇の花が大好きっすから。それを道具にして主様を洗脳してあんなこと……。』
バチィッ!
床に鞭を当て付ける。
『あんたを倒せば……主様は元に戻る。例え俺の命に替えても、あんたは俺が倒すっす。』
『アモン……。』
『フェネスさん、援護頼むっすよ。』
『うん…!任せて。』
一方その頃――。
トワイライト船 トップデッキ
『…百合菜。私を殺す為に来たのなら、躊躇せず殺せばいい。私だって躊躇しない。邪魔しないでよ。みんな。』
『主様…今…。』
(まさか、洗脳が弱まってる…?強い衝撃を与えればもしかしたら……。)
『今頃、ボスキとハウレスは私の仲間に殺されてるだろうし。』
私はゆっくりと百合菜に近付く。
『主様、暴れるのは構いませんが今は貴族のパーティが行われております。下手に騒ぎを起こしたら困るのは貴方ですよ。』
『ふふ、心配しなくても大丈夫。貴族は今頃地下のカジノでこっちには気付かないから。沢山楽しめるわ。』
『はぁ、はぁ…。』
『バスティン、無理しちゃだめ、傷が開くよ…っ。』
『こんなの、かすり傷だ。主様は、下がれ。』
『っ、でも……。』
ぎゅっとバスティンの腕を掴む。
(私、弱いな…。何してるんだろ。覚悟を決めてここに来たのに。守ってもらってばかりで…。)
『私、最低……。』
『主様…?』
ポタっと涙が頬に垂れる。
『こうなったの、全部私のせいなのに…っ。みんなのこと、傷付けて…っ。』
『主様……。』
『……。』
何なんだろう。この胸の痛み。悲しくもないのに、胸が痛む。針を刺されたような、心に穴が空くような、そんな痛み。貴方が泣いてると、どうも悲しい。
『…っ!』
私はその場に座り込む。
『痛い、痛い、苦しい…辛い…。』
『主様……っ?』
『はぁ、はぁ……っ!』
私はゆっくりと立ち上がる。
『この気持ちは…貴方を殺せば消えるのかしら。』
私は剣を収め、ピストルを百合菜に向ける。
『……っ?』
指が震えて動かせない。
『あ、っ……っなんで、どうして……っ。』
『……ベリアン、主様の洗脳が薄れてる。後は私達でどうにか出来そうだよ。』
『はい、ですが……。』
『百合菜様。ここからは貴方にしか頼めません。』
『私……?』
『危険な賭けだけど、主様を正気に戻すのはこれしかない。一か八かで…賭けてみる価値はある。主様。貴方の命を賭けるようなことをして申し訳ないのですが…。』
『ううん。大丈夫。姉妹喧嘩は今日で終わり。私がお姉ちゃんに歯向かうなんて、初めてだから。少し、緊張してる。』
怖くて、ドキドキしている。だけど、ワクワクもしている。お姉ちゃんに勝てる日なんて今までなかったから。
覚悟を決めて、私は自分の刃をさらけだす。
『私とベリアンが道を開きます。百合菜様は真っ直ぐ主様の所へ進んで下さい。』
『うん。分かった…っ。』
私は涙を拭う。
一方その頃――
『はぁ、はぁ……っ。強い…。』
『大したことないね。悪魔執事っていうのは。』
俺は悪魔執事の頭にピストルを当てる。
ゴリッ。
『リリィに怒られるかな。先に殺しちゃって。』
『っ、やめるっす…っ。…フェネスさん…!!』
『さよなら。』
と、ピストルに指を触れたその時――。
パリーンッ!!
『『アモン!フェネス!』』
ハウレスさんとボスキさんが客室の窓を破り、飛び込んで来た。
『ボスキ!?ハウレス!?なんでここに…』
『1階で幹部の奴は倒した。それで主様を探してたら外からお前らが見えたから窓ぶち破ってきた訳だ。』
『面倒だなぁ…。あ、でもいいか。時間稼ぎが出来れば。』
((((時間稼ぎ……?))))
『ハワイアンウッドローズ。食べるのはもちろんダメだけど、大量摂取すると、どうなると思う?精神が壊れちゃうんだよ。』
『『『『……っ!!』』』』
『あははっ。花は枯れる時が1番美しいよね…。リリィはどんな風に散ってくれるのかな…。』
『あんた、最初から、それが目的で……っ!!』
『リリィは後、持って1時間で枯れちゃうよ。その前に俺を止められるかな?』
『…本当に反吐が出るほど屑だな。お前は。』
『…!』
バキュンッ!
『っ!』
背後に気配を感じて弾が当たる前に避ける。
『避けたか。まぁ簡単に死んでもらったら困る。』
『クロウザー…。』
『早く行きなよ。麻里衣の所へ。こいつは俺が殺す。』
俺はピストルを抜く。
『楽しめそうだな。クロウザー。』
『ふん…っ。』
『あ、ありがとうっす。』
『死ぬなよ、クロウザー!』
『いいから早く行きなよ。全く…世話の焼ける。』
一方その頃――。
日が暮れて月が顔を出す。
今宵は、満月だ。
『……ふぅ。』
私は呼吸を整える。
トワイライト船 デッキ
『…月が私達を祝福してくれる。さぁ。
始めましょうか。この夜明けるまで。お互いの命、尽きるまで。』
私は剣を抜いた。
『お姉ちゃん……。』
(さっきのは気の所為よ。一瞬の揺らぎ、私の意思は変わらない。)
『主様。大丈夫です。私達が着いています。』
『ベリアン…。』
『必ずお守りしますよ。貴方も、麻里衣様も。』
『ルカス…。』
私はお姉ちゃんを真っ直ぐ見つめる。
ゆっくりと近付く。
コツコツ…。
ジャキッ…!ガキンッ!!
私は百合菜に向かって走る。
『私達が道を作りますから!主様は麻里衣様まで歩いてください!』
『うん…っ。』
『邪魔しないでよ…っ!!』
ガキンッ!!
『無駄ですよ。いくら貴方でも私達には勝てません。』
『く……っ。』
どうして、どうして私の邪魔ばかり…っ。
思い通りにならないの……っ?
ズキッ!!
『うぁ…っぁ!!』
私は胸を抑え、呼吸が出来なくなる。
苦しい。痛い。薔薇を、薔薇を食べないと…この痛みは…っ。
『ゲホッ…っ!!』
私は血を吐く。
『え……っ?』
白いドレスを染めるのは己の鮮血――。
次回
第4話 時間切れ
10
MAKO
#儚い恋