TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

「ファ、ミ、ソ、ド・・・」

待ち合わせの駅前に着くと、宮本先輩は植え込みの脇に座って空を指差し、そんな風にドレミの音階を呟いていた。

「宮本先輩・・・?」

待ち合わせの時間の5分前。早目に来て私の事を待っていてくれたのではあろうが・・・。

「あ、透子ちゃん」

宮本先輩は、私を見て手を戻し、立ち上がった。

「お待たせしました。あの、何してたんですか?」

「ああ、あのね、あそこの電線なんだけどさ、5本あるでしょ?そこにカラスの群が止まってて音符みたいだなぁって」

再び指差したその先を見てみると、確かに電線にカラスが止まっている。全部で5羽。うち真ん中ら辺に止まっている2羽が、こちらを見ている様な気がした。

「本当ですね・・・」

何故か、ミヤマさんを思い出した。

「透子ちゃん、来てくれてありがとう。お洒落して来てくれて嬉しいよ」

そう言って宮本先輩は、自然に私の手を取り繋いだ。当然の様に恋人繋ぎだ。宮本先輩の体と私の体が密着する。

「あの、宮本先輩・・・」

恥ずかしいです。そう言おうとして宮本先輩の方に顔を向けると、すぐ側に先輩の顔があって何も言えなくなってしまった。

身長が同じくらいで恋人繋ぎをすると、こうなっちゃうんだ・・・。

いつもの制服姿と違う私服姿の先輩は、少し大人っぽく見えた。ヴィンテージ風のダメージジーンズにブランドロゴがさり気なく入ったパーカー、足元のスニーカーはNIKEの白グリーン。正直『カッコいい』以外の褒め言葉が見つからない。

特にそのスニーカーは、私も欲しいと思うくらい可愛いくて、先輩にとても似合っていた。

「スニーカー好き?」

私の視線に気付いてそう声を掛けてくる先輩。

「宮本先輩の履いているそのスニーカーが可愛いな、と思って」

「これ良いよね。透子ちゃんにも似合いそう。今度一緒に見に行こ」

思わず頷いてしまった。これじゃ、次のデート確定・・・。

「そう言えば、昨日LINEを叔父さんに見られたって言ってたけど、父母よりも叔父さんが厳しい感じ?」

「厳しいと言うか、過保護ですね」

「そうなんだ。透子ちゃん可愛いから、過保護になるのも分かるな。一緒に住んでるの?」

「いえ、別々ですけど、時々会いに行きます。叔父は絵を描いているんですけど、その絵のモデルをしているので」

「(そういやあの2人叔父さんがヤバいとか言ってたな。昼間のLINE電話が何たらって)」

「?、何か言いました?」

「あっと、ううん。モデル!そうなんだ。絵描きさんなんだ。透子ちゃんの絵、俺も欲しい」

「・・・高いと思いますよ」

「あらま。まぁ、それは諦める。ならさ、電話やLINEするなら昨日位の時間がいいのかな」

また、電話してくれるんだ。そう思って私の胸がトクンと鳴った。

「はい・・・」

「じゃ、そうする」

先輩の笑顔が嬉しい。

あれ・・・?、私・・・。


「チケット代、俺出して良い?それとも割り勘が良い?」

駅の券売機前でそう聞かれた。

「私、払います」

「了解。ならICにここで入れてっちゃお。IC支払いokだから、その方がスムーズだよ」

「はい」

ちゃんと細かい所迄調べてくれている事に感動を覚えた。それと、最初のデートでありがちな『どっちが払うか』問題をサクッとクリアしてくれた事にも。

先輩のおかげでスムーズに園内に入り、まず最初にメリーゴーランドに乗った。

「絶叫系は苦手なんですよ」

という私の意見を聞いてくれて、穏やか系を回って貰う事になったのだ。

「二階建てなんだね」

そう言う先輩に手を引かれて登った二階部分は、遠くまで見通せて予想以上に楽しかった。

「園内が見渡せちゃいますね」

そう言って笑った私を、先輩がスマホでパシャっと激写した。

「あ、勝手に撮った」

「ゴメンゴメン、でも自然な笑顔撮れたよ」

そう言って笑う先輩の笑顔が眩しい・・・。

後でその写真を私のスマホにも送って貰った。

次に『占の館』なるアトラクションに入る事にした。入口で、外人男性の2人組が、係員と何か揉めているのを見つけた。近づいてみると、タブレットを持って内部を回るのだが、その説明が日本語で読めない、と訴えている様だった。係員さんは片言の英語で説明しているのだが、上手く伝える事が出来ていないみたいだ。

「Excuse me,」

突然、先輩が会話に割って入った。流暢な英語で外人男性達に英語表示への変更方を教え、中の進み方までレクチャーしてあげる。

「thank you!」

外人男性達は、そう言って機嫌良く中に入って行った。

「宮本先輩って、英語喋れるんですか?凄い」

私は驚いてそう言った。

「うん、そうなの実は。見えないでしょ?」

「・・・ここで『はい』って言ったら失礼ですよね」

「ハハハッ、みんなに言われてるから別に気にしないけど。こう見えて、何度もホームステイとかしてるんだよ?だから英語は完璧。他の教科もね、以外と出来るの」

「凄い・・・」

感嘆の声が漏れてしまった。

「俺らも入ろう?」

「あ、はい」

そして、私達も『占の館』へと入った。

中では色々な占いの中から好きな占いを選び、それぞれのルートに分かれて進めて行くというものだった。

「金運、健康運、仕事運、学業運、恋愛運・・・と、ペア占い」

「ペア占いって何でしょう?」

「2人でやるみたいだね。2人居るからこれにしてみる?」

私達は、その謎のペア占いという物をやってみる事にした。

各々が一つずつタブレットを持ち、中に進んで行くと、別れ道になる。

「え!ここからバラバラなの!?」

先輩のびっくりした声。二手に分かれての作業になるようだ。

「じゃあ、私は左に行きますね」

そう言って手を離して進もうとすると、ぎゅっと握られ引き寄せられた。

「離れるのやだなー。コッソリ一緒に行かない?」

近距離でそう囁かれる。少しドキッとしてしまった。

「コッソリしても、上手く出来ないと思いますよ?」

私がそう言うと、

「だよねー」

先輩は、そう言って残念そうに手を離した。

「後でね」

頭を撫でながらそう言う先輩。

やだなー、いちいちドキドキしてしまう。

そして、私達は別々のルートを進み始めた。

loading

この作品はいかがでしたか?

12

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚