今日もいつもの君だった。今日もいつもの僕だった。会話も表情も仕草も、普段と変わらない一日。それが愛おしいと、それが何より大切だと誤魔化し続けてどれくらい経っただろう。一歩踏み出そうとすることがこんなに怖いことだとは思わなかった。
初めて出会った時は、ただの他人に過ぎなかった。偶然同じ大学に通って、同じ授業を受けているだけの人。だけど、運命の日は突然訪れた。学校ではおなじみのグループワークの時間。人とのコミュニケーションに消極的な僕にとって、こういう時間は何より億劫だった。早く終わらないかなんて後ろ向きなことばかり考えていたその時、「よろしくね」と後ろから声をかけられた。何の変哲もない普通の挨拶。そのはずなのに、振り返った途端に僕の心は奪われてしまった。栗色の長い髪、切れ長で凛とした目、くっきりとした鼻立ち……見たこともないような美人が、にこやかに微笑んでいた。それからというもの、君という存在が僕の意識から離れることは一度もない。授業で会う度に、食堂で会う度に、距離感が縮まっているのを実感しながら眠りにつく日々だ。その姿が網膜に焼き付いてすらいる。
そんな君が、近々誰かと付き合う。サークルで知り合ったどこの馬の骨とも知らない男。何の冗談だ。そんなぽっと出の男のものになるくらいなら、付き合いの長い僕の方がいい。あの日以来直接会話をしたことはないし、入ってくる情報も全部盗み聞きだけど、自分なりに一途に誠実に想ってきたつもりだ。この気持ちは本物だ。だからもう少しだけ待っていてくれ。
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