テラーノベル
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〈藍side〉
昼頃、某トークバラエティ番組を観ていたら祐希さんが帰ってきた
ガチャ
「あ、祐希さんおか「ねぇ藍、この写真は何?」
「へ…?」
「へ?じゃないよ、浮気?」
「なにその写真…」
「こっちが聞きたいんだけど」
「っ…」
祐希さんが見せてきた写真は一昨日ばったり会った杏里を送って帰った時のものだった
「てか、否定しないの?」
「ちがっ!浮気なんてしないっ!」
「でもこの写真見るとそう見えちゃう」
祐希さんが信じてくれないことがショックで泣いてしまう
「何泣いてんの、泣きたいのこっちなんだけど」
「ッごめんなさっ」
「いや別に謝ってほしいわけじゃないし
そもそも事実じゃなくても撮られてる時点で意識が足りてないんじゃない?今回は偶々俺だったけど、もしこれが文春の記者とかだったら?今頃世間に熱愛記事として出てるだろうね。そしたら数多くのファンが悲しむだろうね
取り敢えず今は顔見たくないから一旦距離置こう」
バタン
そう言い残して祐希さんは家を出て行ってしまった
さっきまでうるさいほどだったテレビの音は全く
聞こえなかった
一旦距離を置こう、という祐希さんの言葉が何度も頭のなかで反芻する
一旦ってどのくらいだろう
1日で戻ってきてくれるのかな
それとも1ヶ月とかなのかな
もし一生このままだったら?
祐希さん的にはもう別れようって意味だったのかな
もう呆れられちゃったかなそれゃそうだよね、彼氏いるのに他の女といるのを撮られちゃったんだもんね
全部俺が悪いから泣く資格なんてない
そんな意志とは反対に涙の勢いは止まるどころかどんどん溢れてくる
自分はこんなに泣き虫だったのだろうか
気づいた時にはとある人に電話をかけていた
〈有志side〉
プルルルップルルルッ
誰やろ、こんな夕方に
って、藍?
なんかあったんかな
『有志さっ、グスッおれ、ヒュッ振られちゃった…グスッ』
「え?」
振られた?藍が?そんなことあるんか?今をときめく高身長イケメンを振るやつがいるのか?
『ハァ俺が悪いグスッけどっハァどうしハァよ、嫌われちゃったハァハァハァ』
ん?呼吸怪しくね?これって過呼吸じゃ
「藍?藍!ちゃんと呼吸して!」
『ハァハァハァくるしっハァハァハァハァたすけ…』
ツーツーツー
切れちゃった、これヤバない?
取り敢えず藍ちゃんらの家行くか
てか祐希さん家におらんのかな
いやいたらあかんか
彼氏が振られたって泣いてるんやもんな
ん?あ、祐希さんとなんかあったんか
そういうことか、漸く理解した
————
〔祐藍家 到着〕
コンコン
310
221
200
201
「藍ー?開けてくれないか?」
応答なし、か
ワンチャンこれ既に開いてる…?
「藍、入るぞー…?」
ガチャ
あ、開いた
防犯意識低すぎんか?仮にも著名人だぞ
ま、俺もたまに忘れるけど
「お邪魔しまーす…」
何気に家来るのは初めてだな、こんな形は嫌やったけど
てか肝心の家主(祐希さんか?)はどこにおるん
「藍?どこに、って」
「ハァハァハァゲホッハァゲホッゲホッゲホッ」
「っ!」
え、これマジで大丈夫なん?病院とか行かなくて
目の焦点あってへんし、多分俺のこと理解しとらんよな…?
咳もしとるし熱あるんちゃう?
「藍…?ちょっと触るで、
って熱っ?!」
藍別に平熱高いわけちゃうよな?
ヤバい
いやヤバいのは藍やけど、なんもこういうこと分からへん
誰か呼ぶか…
祐希さんは、いや論外か
んー、あの人以外で藍がそれなりに懐いてて頼りになりそうなのは…
〈太志side〉
「いや、流石にびっくりしたよ」
「すんません…w」
「だっていきなり有志から電話かかってきて『太志さん!助けてください!藍が、藍が死にそうなんです!!』ってきたんだから」
「いやでも俺もですよ、藍から電話かかってきて助けてって」
「だから有志がいるのか
で、その藍は…」
「今は寝てるというよりは、気絶してるというか…」
「どういう状況?祐希は?色々理解できてない」
「ですよね、俺も良く分かってないっす。でも電話の感じだと、振られた、嫌われたかもみたいなこと言ってたんで多分祐希さんと喧嘩して、色々悩んでるうちに過呼吸起こしてパニックになっちゃった感じだと思います」
「成程ね、それで喧嘩して祐希は出てちゃった感じか」
「多分」
「見た感じ熱も高そうだね、測った?」
「あ」
「測ってない感じね」
「すんません」
「じゃあ今測ろうか」
「はい、体温計探してきます」
「よろしく」
さっき触った温度的にめっちゃ熱高くない?
しかもまだ体震えてるってことはまだ上がるってことだよなぁ
昨日の練習のときは元気そうだったことを考えると心因性のやつか
原因は、まぁ祐希とのいざこざでほとんど間違いはないだろうけど、日頃の疲労も祟ったかな
「太志さん!ありました、体温計!」
「あ、ありがとう。藍ってさ、昨日の練習んとき元気だった?」
「え、昨日?んー、特段くっついたときに熱いとかはなかったっすね、まぁ俺もプレーしてて体温上がってるから気づかなかった可能性はあるっすけど」
「そっか、じゃあやっぱ喧嘩が決定打か」
「?どういうことっすか?」
「いや、なんでもない、ただの憶測の話。そんなことより、体温測ろ」
「あ、はい!」
ピピピッピピピッピピピッ
[38.7]
「え、あとちょっとで9度台って相当ヤバくないですか…?」
「これは…でもストレスが一番の要因だと思うから、あんま薬とかは意味ないかも。勿論一時的に解熱することはできるけど」
「そんな…じゃあそのストレスを緩和しない限り、熱は下がらないってことっすか?」
「多分ね、ちゃんと寝て栄養あるもの食べるのもだいじだけど」
「そんな…」
「ん…」
「「あ、藍/ちゃん起きた?!」」
「有志さんと、…太志さん?なんで…?」
「あー、俺が呼んだ!一人じゃどうしようもなかったから。ごめんな、勝手に。嫌だった?」
「おい」
「いや、そういうわけじゃないっすけど…ちょっと驚いただけっす。別に太志さんのことが嫌やったとかじゃないから」
「分かってるよw、嫌だった?ってお前、一応俺の方が先輩な」
「すんませんw」
〈藍side〉
「ふふっ」
2人の頼もしい先輩が来てくれて少し心が和らいだ気がする
でも、まだ祐希さんとのことは何も解決してへんし、この様子やと帰ってもない
やっぱ本当に捨てられちゃったのかな…
「藍?」
「なんすか?」
「祐希と何があったか、話せる?」
「っ、なんでそれを…」
「藍がそんなに弱るなんて祐希以外ないかなっていう先輩の感」
「せやで、藍は振られた、嫌われた言うて電話かけてくるし、家来てみたら祐希さんおらんし」
「ゔ」
「あんま言いたくないかもしれないけど、教えてくれれば多少仲裁できるかもよ?それに2人のこと近いとこで長く見てきたんだから」
「多分あれや、二人のあいだですれ違っとるんよ。その様子やと、禄に話し合ってへんのやろ」
「まぁ、」
確かに2人に話せばちょっとはスッキリするかも
「じゃあ聞いてくれますか…?」
「勿論」
「当たり前や!話によっちゃ、祐希さんしばき倒すわ」
「や、本当に祐希さんは悪ない!今回は俺が全面的に悪いから」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜説明中〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「グスッで、ゆきゲホッさでハァハァていハァちゃグスッたハァ」
「うん、まずは話してくれてありがとう。あー、熱上がってきちゃったね」
「はハァハァいグスッゲホッゲホッゲホッ」
「辛いね…」
背中を擦ってくれる太志さんの手がなんでか分からないけど祐希さんの手と似てて思い出してはまた涙が出てくる
あぁ、やっぱり俺は祐希さんがいつまでも残ってるんだ
祐希さんの中に俺はもういないのに
「色々すみません…グスッゲホッ」
「謝らんといて、藍ちゃんは悪くないんやから」
「ん、ゲホッゲホッ」
「冷えピタ貼ろっか」
「は、いハァゲホッ」
「ちょっとヒヤッとするよー」
ペタッ
「んっ、冷たっゲホッ」
冷えピタの冷たさが今の体には丁度良くて眠くなってくる
「眠そうだね、寝ちゃってもいいよ。ほら、横になって」
「ぁりがと、ござぃます…」
起きたら、祐希さんといつも通りになれてるといいな、なんて
〈太志side〉
あ、藍寝た
熱は高いけどちゃんと寝れてるなら回復は早いかな
いや、心因性ってことは要因である祐希と仲直りしなきゃ完全には直らないかも
藍は終始、自分が全面的に悪いと言っていた。
けど話聞く限り、祐希に非がないとは思えないんだよな
祐希も祐希で色々疲れてて、不安だったのかな
最近お互いプレーしてる国とか諸々が合わなくてあんま会えてなかったって言ってたし
藍は多分自分がそんな写真撮られちゃったが故にだから意識が足りてなかった自分の所為だと思ってるんだろうし、それも一理あるんだけど話聞かずに出て行った挙句高熱に苦しんでる恋人放置してるのは良くないよね
どうにかならないかな
この2人が仲良くないとチーム内の雰囲気悪くなるし普通に藍がいないと代表だけじゃなくてサントリーサンバーズ困るんですけど
「…太志さん、俺納得出来ないっす」
有志も流石に思うところがあったか
マジで祐希何してくれてんだよ、可愛い後輩2人にこんな思いさせて
〈有志side〉
スースースー
藍ちゃんがまぁ規則正しい寝息を立てて寝始めた
顔赤くて辛そうやなぁ
なんで、藍ちゃんがこんな思いせなあかんのやろ
祐希さんから事情聞いてへんから分からんけど
でも酔ったらすぐ祐希さんとの惚気しか出てこおへん藍が浮気するなんて信じられへん
絶っっ対祐希さんの勘違いや
でも俺にできることなんてあるんかな
あ、太志さんって祐希さんと同い年やなかったっけ
言ってみよかな
「太志さん、俺納得出来ないっす」
「さっきの藍の話のこと?」
「はい、いくら何でも祐希さん酷くないっすか」
「確かに話聞かずに出ていったのは良くなかったね」
「それもそうっすけど、他の人が普段の藍見てても祐希さんにめっちゃ一途じゃないっすか」
「甘々だよね、あの2人」
「藍の想いがちゃんと伝わってなかったんすかね」
「どうだろう、祐希にも思うところがあったのかな」
「じゃあ太志さんは藍が浮気すると思いますか」
「いや、全く思わない」
「悔しいっすよ、このままあの2人が破局するなんて」
「だよね、
じゃあ祐希呼ぼうか」
「え?」
「ん?」
「呼ぶって、」
「そう、電話でここに」
「出来るんすか?」
「だって藍置いて俺たちが無謀に探すほうが無理じゃない?」
「まぁ」
「じゃあ本人呼べば早いし、2人で話せるから藍にとっても良いんじゃないかな。今日みんなオフでしょ?」
「確かに!でも太志さんがかけてくださいよ」
「有志だって祐希の連絡先持ってるでしょ」
「でも先輩やし…何より気まずいじゃないっすか!」
「それもそうか、じゃあかけるよ」
〈祐希side〉
正直、凄いショックだった
夜散歩してたら最近あまり会えてなかった恋人と女性が同じ車に乗っていた。
女性のほうは暗くてよく見えなかったが、粗方女優か誰かだろう
暗くてよく見えなかったけどどこか既視感のある、端正な顔立ちだった
確かに藍はテレビ番組とか雑誌撮影の仕事とかも多くて出逢いの機会は沢山ある
でも今まで何回も大好きだと言ってくれていたのにその裏で浮気をしていたと考えると悲しいよりも怒りが湧いてきた
流石に本人に話も聞かないのはダメだよな
生憎明日はお互い予定がすれ違っていて会うことは難しそうだな…
明後日なら午後から空いてるな
藍もその日なら1日オフか
どれだけ決めつけるのは良くないと理解していても夜になって寝ようと思うとどうしてもさっきのことが思い出される
大事だと思ってたのは自分だけだったのか
自分の一方的な想いだったのか
いつからだろう
もしかしたら最初から向こうは俺のこと好きなんかじゃなかったのかな
だとしたらこの2年半何だったんだろう
付き合えて宙に舞い上がるような思いになったのは今でも鮮明に覚えている
藍も嬉しそうに見えたのは幻覚だったのかな
そんなことを考えながら眠りについた
——
[2日後]
あれだけ心の中では憤ってたのにいざ本人に伝えると思うと意外とドキドキするんだな
こんなの一生知りたくなかったけど
一回口を開けば案外すらすらと言葉が出てきた
やっぱり浮気をしていた相手だと思うと前までは愛しくて堪らなかったはずの恋人の顔も憎く見えた
可愛さ余って憎さ百倍というやつかもしれない
なんせ自分をずっと騙していたのだ
許せるはずがない
そう、思ってたんだけどな
どうしても泣き顔を見ると心が痛んだ
それでも心に反して口からは自分でも驚く位の低く、冷たい声が出た
何となくこれ以上同じ空間にいたらもっと酷い言葉を投げつけてしまいそうでそれっぽい理由をつけて出てきたは良いけど行く当てもないな
取り敢えず公園かどっかで時間潰して夜になったら戻ればいっか
結局藍は何も言わなかったな
やっぱ図星だったのかな
俺たち、これで終わりなのかな
なんでこうなっちゃったんだろう
今まで彼は大好きって言いながら何を思ってたんだろう
ブーブー
誰だろう
藍かな
ん、太志?
なんで
「もしもし?」
『あ、祐希?お前今どこにいる?』
「家の近くの公園だけど」
『分かった、じゃあ今すぐ家戻ってきて』
「家って、」
『お前らの家だよ』
「なんで、それに今は『いいから、とにかく早く帰ってこい』
ツーツーツー
長い間一緒にいてここまで圧のかかった声を太志から聞いたことはない
行かなきゃだよな
でも家ってことは…
藍…
〈太志side〉
ふー、取り敢えず戻ってきてくれそうで良かった
「太志さん!」
「どうした?」
「藍が!」
「ハァハァごめハァゲホッゲホッなさっハァハァゆハァきハァハァさ」
「めっちゃ魘されてて、過呼吸になってます!」
「これ藍起きてる?」
「いや、多分寝てます、目開いてないんで」
過呼吸治すことが最優先だから起こすしかないよね
「マジか…藍、藍!起きて!」
「藍!」
夢、で魘されてるんだよな
ごめんなさい、祐希さん か
寝てるときでさえずっと考えてるんだ
本当どこまで追い詰めてんだよ
待てよ、この状況で祐希来たらどうするんだ
家から近いって言ってたよな
てことは
ガチャ
あ、帰ってきちゃった
「有志、藍のことお願い。祐希来た」
「え?!早くないっすか?!てか、どうしたら…」
「取り敢えず起こして、後は背中擦って呼吸落ち着かせて」
「分かりました!祐希さん、お願いします」
「うん、ちゃんと叱ってくる」
——
「あ、太志。藍は「お前さ、マジで何してんの」
「え…」
「藍は今有志が見てるよ。高熱出して今魘されて過呼吸起こしてるから、お前のせいで」
「…は?」
あー、祐希めっちゃ混乱してる
そりゃそうか、帰ってきて一番に喧嘩別れした恋人が自分のせいで苦しんでるって言われて直ぐには理解出来ないよね
しかも何故か同期と後輩が家にいるっていうね
「なんで…」
「まぁざっくり説明するとお前と喧嘩した後に最初過呼吸起こして、ストレスと日頃の疲れとか色々が重なって熱出したって感じ。その時に藍が有志呼んで、有志が訳分かんなくなって俺が呼ばれた
さっきまではちゃんと寝れてたんだけど、丁度俺たちが電話してる時くらいかな。悪夢に魘されて繰り返し謝りながら過呼吸になってる。それも
ごめんなさい、祐希さん って言いながらね」
俺性格悪いわ
祐希絶句してんじゃん
〈有志side〉
本当に怖かった
寝てる筈なのに段々呼吸が早く、浅くなってきて
目は開いてないからこのまま、という最悪の想像までしてしまった
「藍!起きて!」
「ん、ハァハァゲホッゲホッゲホッハァ」
「ゆっくり、吸わんで吐いて〜」
「ヒュッゲホッゲホッゲホッゲホッハァハァゲホッハァ」
「吐いて、焦らんで」
「ゲホッハァハァできなっハァハーハァゲホッゲホッハー」
「出来とる出来とる」
「ハーハァゲホッハァハーゆハァハァじハァゲホッくハァゲホッゲホッハー」
「喋らんで。はい、吸ってー、吐いてー」
「ハーハァゲホッゲホッスーハァハァハーハァゲホッスーハァハー」
「だいぶ落ち着いた?」
「はい、すみませんゲホッゲホッ」
「藍ちゃんは何も悪いことしてへんのやから謝らんで」
「でも、迷惑…」
「迷惑ちゃうから、こういうときはお互い支え合いや。やから、ごめんじゃなくて?」
「ありがとうございます、」
「そう!」
藍ちゃん落ち着いて良かったー
太志さんと、祐希さんのほうはどうなったんやろ
ガチャ
「え…」
「ん?」
扉のほうを見ると、そこにはめちゃくちゃ気まずそうな祐希さんが立っていた
「藍落ち着いた?」
「あ、はい」
「良かった、一旦2人で話し合ってみない?」
「「「え」」」
「2人が話さないことには何も解決しないから」
太志さんの思いがけない提案で3人の声が重なる
「だから、有志」
こっちに来いという合図なのか、あれは
「ぁ」
離れた瞬間に藍ちゃんから発せられた小さくて、細くて、今にも消え入りそうな声に胸がきつく締め付けられた
最後に見た藍ちゃんの顔は不安で目が揺れていた
ごめんな、仲直り出来るとええな、そう思いながらも後ろ髪を引かれる思いで部屋を後にした
〈祐希side〉
有志が出ていって、藍と二人きりになる
改めて見ると酷い顔色だな
高熱は本当だったんだ、疑ってたわけじゃないけど思ってたよりも酷そう
さっき過呼吸起こしたって言ってたし、本来真っ赤なのにちょっと白いのはそれが原因か
でも、なんで?
浮気したのはそっちじゃん
なんで熱が俺の所為なの?
ストレスが引き金となって体調崩したって言ってたけど、それがさっきのやり取りってこと?
なんで?
でも、思えば藍の話聞かなかったな
「………藍」
ビクッ
「っ祐希さん、ごめんなさっゲホッ」
「え…?」
「ほんまに、ごめんなさいゲホッゲホッ」
「藍、俺も—–」
「ごめんなさい、もっと気つけてればっゲホッ」
「藍、聞いて」
「俺がっ、俺がぜんぶ悪いからグスッ」
「違う、俺がちゃんと「嫌いにならないでっグスッ」
「っ」
ギュッ
「え、ゲホッゲホッゆゲホッグスッきさっゲホッ」
「ごめんね、勝手に決めつけて」
「っ、ちがっ、ゆうきさんはゲホッ悪ないっゲホッ」
「ううん、本当にごめんね。何も事情聞かずに出て行っちゃった。だからさ、
藍の話、聞かせて?」
ちゃんと、聞こう
今度こそは
「話って、」
「あの写真について」
「……一昨日、偶然会ったんです。杏里に」
「え、杏里って…」
杏里?
杏里って、あの杏里さん?
「はい、塁と俺の従姉妹の…ケホッ」
「成程…」
「ほんまに偶然やったんです。でも、祐希さんからしたらそう見えるのも当たり前やし、そもそも女性と2人で車内なんて祐希さんやって嫌ですよね…ごめんなさい」
「藍、謝らないで。どういう経緯で乗せたの?何か理由が合ったんでしょ?」
「…収録終わりに車乗ってたら杏里も丁度仕事終わりやったらしくて。もう夜も遅かったんで、女性一人が1人で歩くの危ないかなって思って送ったんです。ほんとにそれだけでっ」
「そっか…じゃあこれからは俺の話をするね」
「祐希さんの、話…?」
「そう、ここ2日間の話」
「ッ」
「率直に言うと、結構キツかった。
悲しかったし、悔しかった。でも、多分自分のなかで一番大きかったのは怒りだと思う。
今までどんな気持ちだったんだろう
本当に好きだったのは俺だったのかなって。
しかも、さっきの話聞くまではまだそんな気持ちが大半だった。」
「ッグスッ」
「でも、全然違った。」
「ぇ、?」
「そう、本当に全然違った。
俺しか好きじゃなかったどころか、その人は俺とのすれ違いが起因となって高熱出して苦しんでた。
しかも話をちゃんと聞かなかった俺が悪いのに、責めるどころか助けを求めた人に「自分に全面的に非がある」って説明したらしい」
「なんで、知って…」
「太志が教えてくれた。
だから、藍。」
「何ですか…?」
「本当にごめん」
「いやっ、ほんまに謝らんといて下さい、!祐希さんは悪ないから」
「ううん、話聞かずに、一方的に決めつけて、1人で苦しませてごめんね。」
「…もう、怒ってない?」
「うん、怒る資格もないしね」
「ぎゅってしてくれたらゆるす」
「え、いいの?」
「してくれないなら嫌い」
この可愛すぎる人
それだけていいの?
しかも熱の所以か何か知らないけど、ちょっとぽやぽやしてるのも相まってめっちゃ可愛いんだけど
ギュッ
もう、2度と離さないからね
〈藍side〉
ギュッ
一気に祐希さんの香りに包まれる
今日1日ずっと欲しくて堪らなかった温もりに思わず涙が出てくる
1日で何回泣くんだろう
「グスッ」
「え?!どこか辛い?それとも痛い?」
「違っグスッ、嬉しくて」
「嬉しい?え、どうしたら…」
「もっとギュッとしててください」
「それでいいの?」
「それ”が”いいグスッ」
でも、この涙の意味はきっと他に泣いた時のとは違う
苦しくて、悲しい涙じゃない
また祐希さんと一緒に歩んでいく為の、未来へ進む為の、きっとそんな涙だ
fin.
初めまして!初投稿いかがだったでしょうか?
好評だったら看病編や他の物語も書く予定です!
コメント
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ああ、もう、読んでて胸がぎゅーってなりました…藍くんが「自分が全部悪い」って繰り返しながら謝るところ、涙が止まらなかったです。祐希さんの「ちゃんと、聞こう」っていう決意の切り替えも、すごく好き。写真一枚でこんなにすれ違っちゃうんだなって怖くなったけど、最後にぎゅってして「それ"が"いい」って言える二人の関係性が、本当に尊いです。次が気になります。