「いやいや!ちょっと待ってよ!!手伝うって、何!?」
 
 「決まってるじゃん!!スプラウトがコスモと結ばれるのを!!!」
 
 「いや、俺は結ばれたいなんて、言ってないから!!」
 
 俺は苦しまぐれにそう叫ぶとシェリーはむっとはにかんだような表情になる。
 
 「じゃあ、好きなのに一生友達のつもりなのね。ベリーボーイがそれでいいなら、いいと思うけれど。」
 
 ヴィーがそう言ってこっちを蔑んだ顔で見た。
まるで、告白もできない俺を見下すように。
 
 「…………そんなわけない…」
 
 ぽつ、と息を吐くように外に出された本音はとなりのアストロにしか聞こえなかったようで、アストロはふっとこっちをみる。
アストロは一瞬迷ったような素振りを見せて、でも真っ直ぐ俺を見据えた。
 
 「……スプラウトには、諦めてほしくないな…」
 
 アストロの声は透き通っていて、それは本当に心から思ってくれているような気がして、落ち着いた。
 大丈夫だ、みんなは敵じゃない。
 
 「……ごめん、嘘ついた。やっぱり俺、コスモと結ばれた」
 
 「やっぱり!!!!だから、私たちに助けを求めてきたんだよね!?!?大丈夫!!!絶対結ばれるよ!!!」
 
 さっきのしんみりしたムードをシェリーが食い気味にぶち壊す。
俺の手を掴んでは上下にぶんぶん振った。
 
 「い、いや…助けを求めたわけではないんだけど…」
 
 「よ〜〜〜〜〜し!!!みんなしゅうご〜〜〜う!!作戦会議だよ〜!!!」
 
 「ま、待ってよ、シェリー以外は同意してないんだからさ…!」
 
 そう言ってヴィーとアストロに目配せをする。
 
 「…確かに、同意はしていない。だけど、反対しているわけでもない。シェリーがこんなにやる気なのだから、協力してあげるわ。」
 
 「僕も、スプラウトの恋応援したいからさ…スプラウトがいいなら…だけど…」
 
 ヴィーもアストロもなぜか同意するらしい。
人のどうでもいい恋にこんなに全力になれるのは、多分才能で、こいつらの長所。
俺も正直になって、もっと色々話したいな…。
 
 「……うん、ありがとう…みんなに手伝ってほしいことがあるんだけど… 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 どうしたら、好きになってくれると思う?
 
 
 
 
 
 
 
 恋愛の一番最初で、一番難しいこと。
やり方はたくさんあるけど、その中から相手が喜んでくれるようなやり方を慎重に選ばなくてはいけない。
相手によって喜ぶものは違うし、相手のことをよくわかっていないといけないのは大前提。
返答に迷う今でも、異常なほどにわくわくしている私がいる。
 
 「え〜〜!!どうだろう、コスモはどんなものが好きなのかなあ?」
 
 「…どんなもの?」
 
 スプラウトが首を傾げる。
 
 「ものって、プレゼントのこと!なにか思い出に残るようなものをあげれば、きっと振り向いてくれるはずだよ!」
 
 私がこんなに張り切って話しているのには理由がある。
私は乙女で、なおかつ恋バナ好きで、恋愛相談するにはうっけつけなのになぜか誰にも相談されないからだ!!!!
まあ、私じゃなくてもブライトニーとか、もっと冷静にいい案をくれそうな人はいる。
もっとも、私にプライベートの話をする人は少ない!!
だからこそ、同じメインのスプラウトに頼られて(ほとんど強引に)嬉しいし、すっっごく楽しいのだ!!
 
 張り切って私が拳を振り上げると後ろからふっと微笑する声が聞こえる。
 
 「…なに。ヴィー」
 
 私が後ろを振り向いてヴィーに突っかかる。
 
 「ものをあげるなんて、好きになる訳がない。」
 
 がつんと頭が殴られて、なおかつそこにカミナリが降ったかのような衝撃に襲われる。
腕を組んで、こっちを嘲笑っている…。
 
 「…なんでよ」
 
 私も負けじと腕を組んで威嚇する。
 
 「ものをあげることは形として残るけれど、思い出としては残らない。ワタシの案は一緒にどこか遊びに行くということ。まあスプラウトからしたらデートみたいなものかしら。」
 
 「…デート…」
 
 スプラウトの頬が少し紅色に染まる。
 
 「いやいや!!プレゼントって言っても、手作りのとか!お菓子でも、なんでも!!手作りなら、思いだってこもってるし、思い出としてのこるもん!!!」
 
 負けじとそう叫ぶ。
 
 「コスモだって、お菓子作りとかよくしてるし、手作りへの想いとか、よくわかるはず!!コスモに合ってるのはこっちだよ!!」
 
 「本当に?それが手作りだろうと、ものを貰って好きとなることはないと思うのだけど。一緒にいた時間が長いほど、互いを知れて、好きになれると思うわ。」
 
 ヴィーの言うことも一理ある。
でもこっちも意地になってきて、譲れない。
 
 「まあまあ二人、一旦整理しよう。」
 
 いつのまにかアイスを頬張っていたアストロが私たちをまとめる。
 
 「…でも結局やるのはベリーボーイなのだから、ベリーボーイが決めるべき。」
 
 そう言ったヴィーは視線をスプラウトに向ける。
 
 「……え〜…」
 
 スプラウトの目が泳ぐ。
 
 「二人が言っているのはとてもいい案だと思うよ。だけど、どっちが良いかで揉めるよりさ…」
 
 アストロはキラキラした星を取り上げて、スプラウトの方に向けた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「せっかくだし、どっちもやればいいじゃん!」
 
 そう言ったアストロは星を俺の方に向けてにこ、笑ってキャップを揺らす。
それを聞いたシェリーとヴィーはその手があったかと言わんばかりに目を見開いた。
 
 「…確かにそうだね!!やっぱり、アストロの言う通りだね!!」
 
 「ワタシ、少し冷静になれなかったみたい。時間はあるものね。」
 
 シェリーもヴィーもその意見で賛成らしい。
一番の俺はずっと黙っているだけだけど…。
だけど、二人の意見はそう悪いものではないし、アイデアを出してくれたことに感謝すべきだ。
 
 「…いい案をありがとう、三人とも。」
 
 俺が何気なく呟いて、三人は笑って答えた。
 
 「なんだか、ベリーボーイらしくないね。悪い意味ではないけど。」
 
 「あったりまえじゃん!!恋バナとか、大好きだし!」
 
 「…うん。大丈夫だよ。それより、もっと具体的に案を練らなくちゃ。」
 
 具体的に、か…。
俺が腕を組んで少し考えるとシェリーがはいはいと手を挙げた。
 
 「プレゼントに関しては私に任せてよ!!いい案があるんだけど…… 」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
コメント
2件