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文字の勉強は今後の課題として、魔道具についても学びます。
魔道銃とかあったらかっこいいやん?
……銃の構造知らんけど。
(いや、魔力弾あるから別にもういらないんだけどさ)
そういえば名前も考えないとな、師匠にも一応相談はしたけど……
「あんたのオリジナルなんだから、自分で考えなさいよ」
って言われたからね、ごもっともです。
「マジック弾……? ……ないな」
まぁ別に、口に出して使うわけじゃないから、何でもいいんだろうけどさ。
誰かに聞かれて答える場面があったとして「マジック弾? 名前ウケる~」なんて言われたら恥ずかしいからね。
「……マナバレット、……そうだ、<魔弾>-マナバレット-にしよう」
……違う意味で恥ずかしい気がする。
「さて、魔道具といっても色々あるからどこから説明したもんかねぇ」
「魔法を扱う魔法陣と、魔道具に刻まれてる魔法陣って何か違うんですか?」
「魔法陣の原理そのものは同じよ。ただ脳内…思考で術式を組む魔法と違って、魔道具の魔法陣は術式を組み上げた上で定着してあるの」
「つまり……?」
「魔力さえ流せば誰にでも使えるってわけ、魔力がなくても魔石で代用することもできるわ」
「魔石というのは?」
「純度の高い宝石に魔力を込めて、漏れないようにコーティングすることで魔石になるわ。魔物の体からもたまに取れるわね、どちらにしても粗悪品も出回ってるから性能はピンキリかしら」
「ここでいう性能って? 魔力の量とかですか?」
「そうねぇ、魔力の貯蓄量であったり、出力の強弱であったり、耐久性にも違いはあるわねぇ」
まるで電池のような扱いだ。
魔物から出るのはさながら野生の電池、いや天然の電池? みたいなものか。
「純度の高い宝石かぁ……お高いですよね?」
「そりゃね、でもホントに高いのは魔物から出る天然物さ。上位の悪魔の体に埋め込まれた魔石なんて、下手したら貴族を買えるね」
貴族が買えるんじゃなくて、貴族を買えるのか。
どんな例えだよ。
ていうか悪魔とかいんの? 絶対関わらんとこ。
「ま、現物見たほうが早いわね」
そういって師匠が見せてくれたのは、革製のショルダーバッグだった。
「これが魔道具なんですか?」
「そうよ、ドラゴンから採れた魔石と革で、私が自分用に作ったマジックバッグよ」
ohドラゴン……ファンタジーだね。
「ひょっとして、見た目よりずっとたくさん物が入るとかそういうのですか?」
「あら、察しが良いわね」
逆にそれ以外思いつかない。
「どれぐらい入るんです?」
「そうねぇ、この森の木なら全部収納できるかしら」
な、なんて便利なアイテムなんだ。
まるで未来からきた青狸が持ってそうだ。
「ということは、バッグの中の空間が広くなるような魔法陣が刻まれてるんですかね?」
「……それも悪くないわね、でも残念ながら組み込んであるのは【縮小】と【時間遅延】の魔法陣。中に入れた物が小さくなる上に、バッグの中は時間の流れが極端に遅いのよ」
入れた物のほうを小さくして、バッグの容量を確保してるのか。
「おぉ~便利だ……、でも取り出すときに手を入れますよね? 自分の手も縮小されちゃうんじゃ?」
「残念ながら生き物には無効なのよねぇ、それができたら私は魔女から神に昇格かしら」
(おっぱいだけ見たら神の領域だと思いますよ)
脳裏に創造神の姿が浮かぶ。
しかし師匠でも生き物に反映まではできないのか……人間縮小とかされたらひとたまりもないし、できなくて良かったよ。
あとはすごく気になるのはやはりお値段。
「すごく便利なのはわかるんですけど……お高いんでしょう?」
「まぁこれは自分用に作った特別性だからね。普通は時間遅延まで組み込んでないし、値段なんてつけられないわよ。魔道具店で売ってるようなものだと、見た目の数倍程度の容量でも金貨数十枚はするかしら。家1件分ぐらいの容量だったら屋敷が買えるわね」
金貨の価値はよくわかんないけど、とりあえず高級品ってことか。
屋敷レベルのマジックバッグなんて持ってるだけで命狙われそう。
「あっ、でも魔石の魔力が尽きたらどうなるんです? 中身は元の大きさに戻ったりとか?」
「そうね、辺りにぶちまけることになるわね」
なんてはた迷惑な。
「だから定期的に魔力を補充するなり、魔石を交換するなりしないといけないわ」
維持費までバカ高い高級車みたいなもんか。
でも便利だよなぁ、欲しいなぁ。
「あげないわよ?」
「まだ何も言ってないっす」
軽自動車レベルでいいから欲しいと思った。
◇ ◇ ◇ ◇
「無理っす! 死ぬっす!」
森の中をがむしゃらに逃走する僕。
「そうだよ、死ぬ気で無理しな!」
姿は見えないのに、どこからか森中に響き渡る師匠の声。
どうしてこんな状況になったのか。
それは30分ほど前に遡る。
◇ ◇ ◇ ◇
魔法と文字の勉強の合間に筋トレをするのが僕の日課だ。
(細マッチョってやっぱかっこいいし、男の憧れだし)
でも師匠の家に住み始めてお腹いっぱい食べているはずなのに、なかなか筋トレも成果が出ていない。
しかし、それでもあきらめるわけにはいかないんだ。
努力は裏切らない、裏切るとしたらそれはいつも自分自身だ……って誰かが言ってたよ、多分。
「あんた筋トレしても無駄だって、海に砂糖撒いてるようなもんだよ」
「そ、そこまで絶望的じゃないですぅ!」
いつまにか、酒瓶片手につまみを持ってきた師匠が、悲しい現実を叩きつけてくる。
えっ? 精神的じゃなくて、肉体にもう裏切られてるの?
でも腕立て伏せだって、それなりに数こなしてんだからね!
「98……99……100!」
「うそつけ、10でしょ」
チッ、バレたか。
「ま、あんた防御魔法は使えないだろうし、体を鍛えたい気持ちもわからんでもないけどね」
「防御魔法……そういうのもあるのか」
「雷属性にシールド魔法はないからね、無属性で盾作るのは魔力が大量にいるし」
オリジナルで作るにしても、雷で防御するイメージはたしかにない。
「つまりこのままだと、僕は非常に打たれ弱いわけですね」
やはり筋肉がいる。
力こそパワーだ。
筋肉があればなんでも解決できる。
目指すは細マッチョ!
「……軽い身体強化ぐらいなら、魔力があれば誰でもできるけど、どうする?」
「是非教えてください!」
力ですべてを解決しようなんておこがましいよね。
「んじゃ、外に出ようかね」
師匠とともに外へ出る。
今日は良い天気だ、木々の隙間から木漏れ日が差し込んで気持ちがいい。
「準備運動はしといたほうがいいわよ」
「はぁ……そうなんですか?」
軽く体をほぐしていく。
こんな天気が良い日は外でお昼寝でもしていたい。
パチッと師匠が指を鳴らすと、魔法陣とともに光の球体が現れる。
「こいつは人工精霊、当たると死ぬほど痛いよ」
「ちょっと何言ってるかわかんないです」
◇ ◇ ◇ ◇
「ほらほらどうしたの、体中に魔力巡らせないと間に合わないよ」
「無理っす! 死ぬっす!」
森の中をがむしゃらに逃走する。
「そうだよ、死ぬ気で無理しな!」
姿は見えないのに、どこからか森中に響き渡る師匠の声。
野球ボールサイズの光の球体、人工精霊が追いかけてくる。
「あっ……」
木の根に躓き、バランスを崩す。
その瞬間、人工精霊が足を掠めていった。
「あっつぅぅぅぅぅぅぅッ!」
あまりの痛みに、足を抑えながら地面を転がりまわる。
ふくらはぎにまるで熱した鉄の棒で叩かれたような、熱さと痛みを感じる。
しかし抑えた足には不思議と傷はなかった。
「えっ? あれ? たしかにすごい痛かったはずなのに……」
「死ぬほど痛いだけだからね、私ってば優しいでしょ?」
「できれば難易度も易しくしていただけると……」
「多少無理してでも、身体強化は感覚で覚えないと、実践で咄嗟に使うの難しいからねぇ」
だからってこれはちょっと荒療治すぎないですかね。
体に魔力を巡らせる、たしかにこれで身体強化はされてるようだ。
ただし、あくまで軽く強化されるだけだ。
劇的に強化されるわけではない。
「も、もう走るのしんどいです、一旦休憩しません?」
「休憩しませ~ん」
姿は見えないけど、笑顔の師匠が目に浮かぶ。
絶対楽しんでるよ……。
そして無慈悲にも人工精霊は追撃を再開してくる。
「アぉッ!」
「ヒャッ!」
「みょッ!」
必死に避けていると変な声が出た。
不格好ながらも、なんとか必死に回避していく。
だって痛いのは嫌だからね! 逃げてダメなら避けるまでだ!
こうして、ひたすら身体強化と回避に全神経を集中させるのだった。
「意外と粘るわねぇ」
一旦追撃が止む。
「はぁ…はぁ……当たらなければ…どうということは……」
「そうねぇ、防御魔法が使えない以上、回避も上手くなるのはいいことよ」
たしかに、身体強化に慣れて、回避も上手くなれば一石二鳥だ。
でももうちょっと段階を踏んでほしいよ。
「んじゃ、もうちょっとがんばってね~」
パチッと、どこからか指を鳴らす音が聞こえた。
人工精霊が分裂して二つに増える。
「嘘だと言ってよ、師匠……」
「当たらなければどうということはないんでしょ?」
木漏れ日が天界からのお迎えに見えてきた。