テラーノベル
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「主様、俺はもう一度傭兵をやろうかと思っている」
『・・・へ?』
夕食の最中、バスティンがそういい出したので主はフォークを取り落とした。
『な、なんで?私なにかした?何が嫌だったの?
・・・まさか誰かになにか言われた?』
主が若干狂気に飲まれかけたのを見て、場の雰囲気が凍っていく。
バスティンは慌てて否定をした。
「ち、違う!ただ、主様に養ってもらうばかりで申し訳なくて・・・」
『ああ、なんだ、そういうことか・・・』
翌日、他の執事たちも仕事をしたいと言い出したので、皆で街の仕事を紹介しているギルドにやってきた。
[魔法使い様、いらっしゃいませ]
『皆、まずは自分の得意なこととかをこの紙に書いて、ここに登録してもらってきて。
そしたら仕事が紹介してもらえるから』
[おやおや、大人数のご紹介ですか!
ありがとうございます!最近何かと人手不足でしてねぇ・・・ありがたいです]
受付のオジサンは嬉しそうに登録用紙を渡してくれた。
『私は登録してあるのかな?何分昔のことだから記憶が曖昧でね』
主は執事たちが記入用紙に頭を悩ませている間に自分の登録内容を確認していた。
幸い登録は生きていたらしく、仕事の紹介も可能だという。
『じゃあ、魔物討伐に行こうかな。
・・・この辺全部受けていいのかい?』
[魔法使い様、残念ですが依頼は一度に3件までとなっておりまして・・・]
『そうなのか・・・』
主はノアールと2人で6件の依頼を一気に請け負い、今夜中に倒しに行こうとコソコソ話し合った。
[はい、ご登録完了でございます。
では・・・このあたりのお仕事はいかがでしょうか?]
「え、こんな仕事もあるんですか!?」
フルーレは古着のお直しをする仕事に興味を示し、近くの仕立て屋の隅で仕事をすることにしたらしい。折角なら新品の服を仕立てたら良いのに、と皆に言われていたが、残念ながらそちらの仕事は出ていなかったそうだ。
「俺はやはり力仕事だな」
「俺もです!」
「俺も本の関係の仕事がなければ・・・」
「俺も家具関係なら」
ハウレス、テディ、フェネス、ボスキは荷物運びや木工関係の仕事を紹介してもらったらしい。
「やはり子供に囲まれるのが好きだからね」
「俺も〜、子供好きだしな」
ミヤジとハナマルは託児所の仕事にしたらしい。
他の執事たちも自分の仕事を決めていく中、ラトは掲示板の前にぽつんと立っているままだ。
『ラト?お前は何がしたい?』
「主様・・・私は戦うことしか出来ません・・・
やりたいことも、主様の近くにいたいだけですし」
『そうか、なら私のパーティの前衛になるか?』
「パーティーは好きではありません」
『いや、そのパーティーじゃないんだよ・・・』
【つまり、主様のお供をしろということですよ】
「なるほど、それなら楽しそうです」
ということで仕事を決めかねていたユーハンと戦いたがっていたバスティンを加えた5人で討伐依頼を受けることになった。
『さて・・・話しておかないといけないんだが、私はちょっと戦闘時はおかしくなってしまうから魔法に巻き込まれないように注意してくれ』
主はできるだけ巻き込まないようにするが、注意だけはして欲しいと3人に頼んだ。
ノアールはいつものことなので慣れているので心配ないが、遠距離から馬鹿みたいに飛んでくる魔法を避けることになったら嫌だな、とため息を吐いていた。
「・・・主様、これは・・・」
「主様!刃が立ちませんが!?」
早速イノシシみたいな魔物の討伐に向かったが、バスティンとユーハンの攻撃を尽く弾いては突進してくる巨体に苦戦していた。
ラトが空を舞い、イノシシの目を潰すべくナイフを投げつけている。
ノアールは下からラトの足場用の魔法を放ちながら防御膜を剥がそうと奮闘している。
そんな様子を見ながら主は弱点を割り出してドカンと一撃魔法を叩き込む。
頭に直撃したのと防御膜を敗れたことで攻撃が入りやすくなった。
後は執事たちがポコスカ攻撃して倒した。
続いて、野犬のような魔物の群れを魔法で一掃してから残党狩りを執事たちがすることになった。
・・・
「あの、私達必要でしょうか?」
「それは俺も思った」
昼食を食べながらユーハンとバスティンは物足りなくてに主にそう言い出した。
『う〜ん・・・魔法が有効な魔物ばかりだったからね、そう思ってもしょうがないよ。
でも、これからは魔法が通用しない魔物退治だから活躍してもらうよ?』
主は楽しそうに笑う。
「つまり、主様の苦手な部類の魔物、ということですか」
『ああ。昔はノアールとか勇者とかに狩ってもらってたんだけど、ノアールは今回は後方支援に徹してもらう』
「ああ、任せてくれ」
【主様、僕も戦いたいです・・・】
やる気満々のバスティンと不満げなノアール。
ノアールにハムを分けてやってご機嫌を取りつつ、次の依頼先に向かった。
【身体強化、俊敏性向上、ダメージカット、物理攻撃強化・・・】
「すごい量ですねぇ」
「これは・・・ここまで準備しなくてはいけないのでしょうか?」
「すごいな、剣が軽い」
3人に強化魔法を掛けまくっているノアールを見ながら主は退屈そうに欠伸をしていた。
『じゃ、頑張ってきてね』
「投げやりだな・・・」
『やれること無いんだもん』
「そうでしょうか・・・?」
「主様がそうおっしゃるならそうなんでしょうね」
三者三様な感想をこぼしつつ、剣を構えた執事たちは熊のような魔物と対峙した。
まずラトが切り込んで、俊敏な動きで敵を翻弄する。
そしてバスティンとユーハンが死角から攻撃を仕掛けてジリジリと追い詰めていく。
『頑張れ〜!!』
【バリア!・・・主様、本当に何もしませんよね】
『だって行ったって意味ないもん』
【はぁ・・・】
ノアールは執事達のサポートをしつつ、やる気のない主の面倒を見ていた。
ようやく熊を倒した3人は誇らしげに主に駆け寄ってきた。
『お疲れ様〜!頑張ったね』
「ああ、ありがとう主様」
「ありがたき御言葉、感謝いたします」
「ありがとうございます、主様」
【意外と見どころがあるな】
(まるで嘗ての君主・・・)
尊大な褒め言葉からフブキのことをちょっと思い出してしまったユーハンは、少々嫌な気持ちになってしまった。
その夜
ズドーーーーン・・・・
ドドドドド・・・ドカーーーーン
ズシン、ズシン・・・
ものすごい騒音が寝静まった街中に響く。
[魔法使い様じゃねぇ]
[相変わらず豪快じゃな・・・]
老人たちは慣れたような諦めたような表情で眠れない夜を明かし、魔法使いが暴れていることを知らない住人たちは魔物の襲撃かと思って怯えて過ごしていたらしい。
『あーーー、すっきり!
やっぱ1人が楽だわ、金も貯まるし』
明け方寝不足ながらスッキリした様子で帰ってきた主は満足気にそう言って眠りについた。
そんなこんなでラトはミヤジの手伝い、ユーハンは自警団の手伝いをするようになったらしい。
コメント
1件
ああ、この話、めちゃくちゃ好きでした!笑っちゃいましたね、主様の「私なんかした?」からの狂気じみた食い下がり(笑)。あの温度差がもう…バスティンかわいそうだけど面白い。 で、ギルドで執事たちがそれぞれ自分の仕事を見つけるところも好きです。フルーレが古着直しとか、みんな個性が出ててほっこりしますね。で、肝心の主様はというと…夜中にド派手に魔物ぶっ飛ばして「1人が楽だわ」って、その清々しさよ!もう主様らしさ全開で、読んでて「そうくるか!」って声出ました。 ノアールの呆れ顔が目に浮かぶし、ユーハンがふとフブキを思い出して複雑な顔をするところも、なんかじんわりきました。戦闘に巻き込まれないようにって忠告してたのに、結局主様が大暴れで執事たち置いてけぼりなのも笑った。 あー、楽しかった。続き、気になりますね…!お仕事始めた執事たちがどうなっていくのか、そして主様の「苦手な魔物」って何なのか。めっちゃ読みたいです!🌷