「魔王と部屋」
魔王の小さな手に引かれるまま、魔王の部屋へ向かう。大きな中央階段を登った先にあり、扉は白を基調とした豪華な模様が刻まれている。
魔王「…男性を入れるのは、初めてだから…緊張するな///」
勇者「僕も、魔王の部屋に入れて嬉しいよ。」
魔王「んなっ!?///」
ライラ「…。」
魔王が顔を赤らめながら、扉に手を掛ける。ギィッと小さく軋みながら、扉が開いた。
魔王「と、とにかく入れ!見付かったらマズイ!」
焦る魔王に導かれるまま、部屋に入ると…
まるでお姫様の様な可愛らしい部屋だった。白い天蓋付きのピンクのベッドに、木で出来た机に白いランプ、魔王軍の資料らしき紙が散らばっている。黒のインクに羽根ペン、椅子も小さく可愛らしい白とピンクだ。何より先程から鼻腔をくすぐる、甘い綿あめの様な香り…魔王の匂いが部屋に充満していた。
魔王「あんまり見るな…恥ずかしい///」
勇者「部屋、綺麗ですね…。」
魔王「まあな、ライラが掃除してくれるから。」
勇者「それに、魔王の匂い…好きです。」
魔王「なっ!あまり嗅ぐな!全く…///」
ライラ「紅茶をお持ちしました。」
部屋の真ん中にある机に、ライラが二人分の紅茶とミルクと砂糖を置く。丁寧に紅茶ポットとミルクピッチャー、瓶に入れた砂糖まで用意してくれている。
ライラ「それでは私はいつも通り、魔王様の部屋を見張っていますので。何かあれば報告致します。」
魔王「ああ、頼んだぞ、ライラ。」
ライラ「はい、命にかえても魔王様をお守りします。」
そう言ってライラは部屋を出た。シーンと静寂が包み込む。この静寂が、部屋に二人きりである事を示唆している様だ。初めての魔王の部屋で、二人きりという事実に思わず緊張してしまう…。
魔王「お茶、淹れるね。」
勇者「うん、ありがとう。」
丁寧な所作で、魔王が紅茶を淹れている。慣れた手付きから、日頃から行っている事が分かる。
魔王「はい、どうぞ。」
勇者「うん、ありがとう。」
淹れたての熱々の紅茶を一口啜る。体温より少し高めの温度が丁度いい。せっかくなので、ミルクと砂糖を二粒入れ、スプーンでゆっくり混ぜる。口に入れるとミルクの優しい甘みが、口全体に広がってくる。紅茶の温もりが、冷えた心を溶かした様な、そんな気がした。
魔王「あっつ!」
勇者「大丈夫か?」
魔王は猫舌だった様で、ヒリヒリした舌を出しながら、冷ましている。喉が渇いていたのか、フーっフーっと息を吹きかけ、紅茶を冷ましながら飲んだ。
魔王「やっぱり、紅茶は落ち着くな…」
勇者「魔王が淹れてくれた紅茶、とても美味しいです。」
魔王「…。」
勇者「どうかしましたか?」
魔王「なぁ、そろそろ名前で呼んでもいいんじゃないか?」
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ついに名前!