テラーノベル
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私は、夏目くんと名取さんに私がいつもいる場所を紹介した。
「私はここでよく過ごしていました」
ここで過ごした思い出が私の脳裏に思い出される。涙目になりながら痕跡を探す。
「随分と脆くないか?これ。」「…前はこんなことはなくて、多分祓い屋さんにやられて、木の養分をも吸われてしまったんだと思うの」
私は剥けてしまっている木の幹に頭を寄せて歌を歌った。みんなが褒めてくれた歌。この木は後に枯れていくことになるだろう、この木に感謝の気持ちを込めて。
夕方には優しさの光。夜には守りの光。朝日には感謝の光。光よ我らを守れ。
母がよく歌ってくれた歌。
「何だか、ポカポカとする歌だな。心地がいい」とニャンコ先生が言う。
「守りの呪い」名取さんがボソリと言った
「え?」「それは守りの呪言の一つだ。なぜ君が?」
祓い屋などの呪術師の家系に伝わる赤ん坊に歌う子守唄の一つらしい。名取さんの乳母もその唄をよく歌っていたらしい
「幼い頃母が歌ってくれて。母は物心がつく頃になくなりましたが、この曲は私の宝物なんです。だから…あの子達にもよく歌っていて」目に力を入れて涙を引っ込めさせる。泣かないと決めたのだ。次会うときは再会した時だと。
名取さんが術者が誰なのか調べている間に私は夏目くんと座れそうな石の上に座って、私の過去について話をした。
「私の両親は幼い頃から妖が見えていたらしくて。母親はすごく短命だったけど。私のことを大切にしてくれていたみたい。私の父は優しいのだけど、私を見ていると辛くなってしまうんですって。だから父は東京の方で暮らしてて、私はここで一人暮らしをしてるの。たまに戻ってくるけど。ほとんどいないの。アキナさんが居るから寂しくはないけど。やっぱり夏目くんを見ていると羨ましい気もするの。藤原ご夫妻はいい人だね。」
「あぁ。いい人なんだ。だからこそ心配をかけたくないんだ。喋らない分余計に心配かけてばっかりだけど。」矛盾していることにわらってしまう 。
「たしかに。でも、私もあなたと同じ行動をしたと思う。それにしても夏目くんは思ったよりも優しいのね。」 どういう意味だと彼は少し目を怪訝にするが、 私はお構い無しに夏目くんの膝の上に座っているニャンコ先生を撫でながら私は言う。んふーん、と変な声を出す先生。気持ちいいのだろうか、ずっとなでなでしていたくなる。
…藤原さんに嘘をつくのが辛くなったら私の家に来ていいわよと言おうとしたが。なんだか、かえってお節介な気がしてきた。今まで嘘をつきなれていた彼にこの言葉は失礼だと。そんな気がしたから。
「…もし妖に襲われたりしたら私の家に来るといいよ。わたしには襲うような妖が見えないし。優しい妖たちが私の家に沢山住み着いているの。」せめてもの励ましだ。
手を貸して、そう言うと夏目は素直に手を出してくれた。
「ごめんくすぐったいと思うけど。我慢してね。」と、夏目くんの手を揉みながら私は言う。
「『之を授かりし者、災厄の起きし時悪を滅して力を発揮したまえ』…うん。これで、もしやばい時にはあなたの力がより発揮されるようになると思う。あなたに不幸なことがないのが1番だけど。」
「これは…?」「私の独学で、おまじないみたいなものなの。意外と効くらしいのよ。」と笑って見せた。
ニャンコ先生は夏目の手をじーっと見て言った「ふむこれは…強力なまじないだぞ。樂、こんな強力なやつ外に放っておいたら、食べられるぞ。」
「だから私がついているんだろうが。豚猫が」
ニャンコ先生とアキナさんは相も変わらずな感じで喧嘩をするもんだからその様子がおかしくて、私はげらげらと笑ってしまう
「ちゃんと笑ったのは初めて見たな」と夏目が言った。「○○は笑うけど、素で笑うようには見えないからさ。」
えっと…そうかな、ありがとう。と少し恥ずかしがりながら感謝を伝え、夏目くんと笑いあってると。
「イチャイチャしてるところ悪いけどちょっといいかい?」
「「いちゃいちゃしてません!!」」と夏目くんと息ぴったりにあってしまった。はずかしい。
はは、ごめんねと鼻で笑われ名取さんは続けた。
「わかったよ。使ったやつがどの家か。」と教えてくれた。
「これは的場一門の仕業だ。的場の気配がする。使った術者も強力なやつだ。」
…的場一門。幼い頃にどこかで聞いたことがあるようなするも思い出すことが出来ない。
私はそれよりも嫌な顔をしてしまったのが名取さんにバレてしまった。
体調でも悪いのか、と心配されてしまった。「…いえ、あやかし達が的場一門が動き出した と噂しているのを聞いたことがあったのと、やっぱり、祓い屋って聞くと、私の記憶じゃないんですけど少し嫌な印象がありまして…」
この後の予定は決まっているのかと名取さんに聞かれたのでこの後は夏目くんとニャンコ先生、そしてアキナさんと一旦、相談してどうやって的場一門の家からあやかしを取り返すかということを決めようとしていること、もし名取さんがお手伝いしてくれるのなら今すぐにでも私の家で作戦会議をしたい旨を話す。
「それと、私の家の友達は人間には寛容ですが、祓い屋さんとして名取さんに敵意をむき出すかもしれない…です。でも、あの子達も好きで祓い屋さんを憎んでいる訳ではなくてですね…」
自分なりに言葉を選んで言っているが名取さんは傷つくだろうか…でも。彼らの現状を伝えるためには…
「私の家にいる妖は祓い屋さんに家族を殺された子達なんです」
そう言うと私と的場さんの間に、不穏な空気が流れていった。
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