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タイトル通りのモノを見たけど、実際には何だったのかよく判らない。
中学生のとき近所の学習塾に通わされていたけど、勉強嫌いな僕はもっぱらサボり倒してた。
塾の時間はたしか、毎週土曜の夜5時から8時までの3時間。クラスメイトの親父さんが個人でやってたから月謝は安かったけど、そのアットホームすぎる雰囲気がかえって嫌だった。
なので塾の時間はひたすら自転車を転がして時間潰しをする訳だけど、当時はまだスマホも無いし、コンビニもそれほど普及してなかったから、ど田舎では時間の潰しようもない。
スーパーや書店もあった気がするけど、長時間居座るとさすがに怪しまれるだろうから長居はできない。
とにかく暇で暇で仕方なかった。
…その夜は初夏の頃だっただろうか?
すでに近所中あらゆる場所を巡り尽くした僕は、普段滅多に行かない街外れの空き地にまで足を延ばした。
そこにはかつて温泉旅館が建っていたけど、温泉が涸れて閉館し取り壊されてからしばらく経っていた。
現在でも周囲に建物は少ない地域な上に、宿泊客が湯船で溺死したなんて噂もあったせいで怪しげな雰囲気抜群。
さらにはすぐ近くに小規模な墓地もあった。
けれども僕は暗いところや夜中の墓地は一向に平気な質(たち)だから、さっさと通り過ぎるつもりで現場に差し掛かった。
墓場に近づいた時…いつも感じたことのない嫌〜な気配を感じた。
何気なく墓石のほうに視線を送ると…ソレがいたんだ。
電柱の薄暗い外灯に照らされて、青白く光る半透明の人影が二体。それが空中浮遊でもするようにフワフワした足取りでこっちに近づいてくる。
いや待て、そんなワケわからんモノがこんな近所にいてたまるか。あれは透明な雨ガッパを着た人が墓参りを済ませてきたところだ…そう思い込もうとした。
けど…今夜は晴れてるから雨ガッパを着る理由がない。
時刻も夜8時近く。こんな時間に墓参りだって?
さらには…外灯の仄暗い明かりに照らされてるだけなのに、妙に光り輝いてるし…明らかに地面から浮いてる。
それらの矛盾点に気づいてしまったら、もう居ても立ってもいられなくなった。
何度もペダルを踏み外しながら懸命に自転車を漕いで、命からがら現場からズラかった。
あれほど生きた心地がしなかったことは、未だかつてなかったね。
…翌週の塾には久々にちゃんと参加した。
でも翌々週にはまたサボり、しばらくして結局辞めた。
その後、近所の工業高校に推薦入学で受かったから、元々塾なんて必要なかった…というお話。
…え、クラゲ人間の正体は結局何だったのかって?
それをノコノコ確かめてたら、今頃こんなの書いてないと思うよ。