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中めさん、第12話読んだよ〜!😭💕 美紗ちゃんの「勇太くん見ないようにしなきゃ」って努力してるのに、気になっちゃう気持ち、すごく伝わってきた…!「すみません」で会話ぶった切るの、切なすぎる…! 日下さんとの温泉旅行、めっちゃ楽しそうでこっちまで笑顔になったのに、最後の「…え」で一気に引き込まれた!ロビーにいるの誰!? 続きが気になりすぎるよ〜!🔥
勇太くんのことは、見ない様に。気にしない様に。
こんなにも気を遣っているのに、どうして私の黒目は勇太くんの姿を探したがってしまうのだろう。
困っている勇太くんのお手伝いをしたいと思った。
小田ちゃんは、入社した頃からパソコン嫌いだった。タイピングは問題なかった為、フォーマットさえあれば仕事に支障がなかった小田ちゃん。ただ、全部の仕事にフォームがあるわけではないので、出来る限りはフォーム作成するけれど、『これだけは覚えて』と無理矢理四則演算だけは出来る様にしつこく教えた。
が、勇太くんが必要としているプレゼン資料は、SUM関数だけでは到底作れないものだった。
前回私が作った資料のEXCELが、使えないわけではないが、加工しなければいけない。
私の仕事はSEではない。営業事務だ。
だから、自分よりパソコンに詳しくない小田ちゃんを見下したことなどないし、自分のパソコンスキルを見せびらかしたいと思ったこともない。そもそも、仕事に不便なくパソコンを使えると言った程度で、専門的なことは分からないし。
勇太くんも、基本的なことは出来るが、応用したり加工したりするのが苦手だった。
小田ちゃんが『自分がやる』と申し出た時、『じゃあ、お願い』と言いながらも、小田ちゃんと勇太くんとで資料を作るのは、正直無理があると思っていた。
それでも、『私の仕事ではない。余計な手出しをして小田ちゃんの気を悪くしてはいけない』と自分の仕事に集中しようとした。
でもやっぱり、気になって気になって仕方がない。
仕事の進捗もそうだけど、勇太くんが小田ちゃんに慰められたという話を聞いたから、2人の様子を気にしてしまう。
どうして勇太くんの隣にいるのが、私じゃなくて小田ちゃんなのだろう。などと、【自分が勇太くんを避けているから】という分かり切った答えがありながら考えてしまう。
差し出がましいと思いながらも、作ったEXCELを勇太くんに送ったのは、早くプレゼン資料作りを終えさせて、小田ちゃんに勇太くんの隣からいなくなって欲しかったから。勇太くんに『やっぱり美紗は頼りになるな』と思われたかったから。これ以上勇太くんの気持ちを、小田ちゃんの方に傾けさせたくなったからだ。
そんな浅ましさを岡本さんに見抜かれてしまった。勇太くんは庇ってくれたけど、岡本さんの読みが正しい。
結婚出来ないくせに、どうして勇太くんの気を惹きたがってしまうのだろう。こんなに好きなのに、なんで結婚出来ないのだろう。どうして勇太くんは真琴ちゃんのお兄さんなのだろう。
どうにもならないことも、明白な答えも分かっているのに、受け入れがたい解答に、いつまで経っても『どうして』と疑問を巡らせてしまう。
自分を納得させられる答えがないことも、諦めるしかない事実も、全部分かっているのに。
だから今度こそ、勇太くんのことには首を突っ込まない。余計な揉め事も起こさない。
勇太くんを視界に入れない様に、パーテーションから自分の頭がスッポリ隠れるくらいまで椅子を低く下げた。
ちょっと仕事し辛いけれど仕方がない。
こんなに努力しているのに、勇太くんは毎日LINEを送ってくる。
同じ職場にいる限り、ギスギスしたくはない為、スルーはせずに当たり障りのない返事をする。
挨拶は普通に返す。でも『?』で終わる文章には『すみません』で返していた。
『今何してる?』の返信に『すみません』。全く会話になっていない。でも、どう返して良いのか分からない。だって、楽しい会話をしてしまったら、どんどん諦められなくなるに決まっているから。
日下さんも頻繁にLINEをくれる。
何の心配も、気を遣うこともなく喋れる日下さんとは、最早仲良しの女子同士みたいになってしまった。
日下さんを、男として意識していないわけではない。
ふと、『もし日下さんが自分を好きでいてくれたなら』と考えたこともある。
真琴ちゃんの大好きな人と付き合う優越感に浸りたいと思ったことも、確かにあった。
だけど、かつて私を虐めていた真琴ちゃんを好きになり、付き合っていた日下さんに、信頼の全てを預けることに抵抗を感じた。
それ以上に、勇太くんへの気持ちが全然冷めてもくれなくて。
最終的に、日下さんから告られてもいないのに変な妄想を繰り広げる自分に呆れ返ったのだけど。
勇太くんへの想いの鎮静化を試み、日下さんと友情を育み、会社では相変わらずの周りからの冷たい視線に耐えながら毎日を過ごし、日下さんとの至れり尽くせり上げ膳据え膳豪華海鮮料理三昧の温泉旅行の日を迎えた。
日下さんが私のアパートの前まで車で迎えに来てくれ、日下さんの運転で温泉に向かう。
温泉まで車で2時間。
途中で運転を交代したい気持ちはあるのだが……、
「すみません。完全にペーパーなので、日下さんにばかり負担が掛かってしまいまして……」
教習所で運転して以来1度もハンドルを握っていない為、『免許証、返還した方が良いんじゃないの?』くらいの腕前に違いなく、頭を下げながらも、しっかりとちゃっかりと助手席のシートベルトを締めた。
「別にいいよ。俺、運転好きだし。温泉入る前に死にたくないし」
日下さんが笑いながら私の頭をポンポンと撫で、「では、行きますか」とエンジンをかけた。
「あ‼ 待って下さい。先に私の分の旅館代をお渡しします」
ハンドルを切ろうとする日下さんの手を止め、予め封筒に入れていたお金を鞄から取り出し、日下さんに渡そうするが、
「いいよ。いらないよ。美紗ちゃんは、俺の突然の思い付きに付き合ってくれたわけだから、美紗ちゃんに支払わせるわけにはいかない」
日下さんは受け取ろうとしない。
「そんなの困りますよ‼ 奢ってもらうわけにいかないですよ‼ 千円二千円じゃないんですから‼」
それでも日下さんに無理矢理封筒を突き出すと、
「もー‼ 美紗ちゃん、手、邪魔‼ 運転出来ないでしょうが‼ おとなしくしててよ。美紗ちゃん、運転出来ないんだから」
日下さんが嫌味を言いながら、私の手を押し戻した。
「イヤ、でも‼」
「うるさーい‼ 手、縛り付けるよ‼」
一向に引き下がらない私に、日下さんが駄々を捏ねる子どもを叱る母親のように大きな声を出すと、「本当にもう出発しないと、予定時刻に着かないから‼」と車を発進させた。
運転を出来もしない私が言うのもなんだが、事故でも起こされたら大変なので、『旅館に到着したら必ず渡そう』と押し返された封筒を鞄の中に片した。
旅館までの道中は、滅茶苦茶楽しかった。
旅館で豪華海鮮料理が待っているというのに、道の駅に立ち寄ってコロッケ食べてみたり、偶然目に入った神社にお参りに行ったり、車内で似ても似つかないモノマネをしながら歌を熱唱してみたり。
笑いに笑った。声を出して笑ったのはいつぶりだろう。
自分が企て実行していることとはいえ、会社での日々は結構辛く、精神的に参っていた為、ずっと今日の日を楽しみに過ごしていた。
だからだろうか。余計に楽しい。今日と明日だけは、現実から目を背け大いに満喫したい。旅行に来て良かった。
2時間はあっと言う間に過ぎ、寄り道しすぎた私たちは、予定到着時間を少し過ぎてから旅館に着いた。
「ようこそお越しくださいました」
そんな私たちを笑顔で迎えてくれる仲居さん。
「遅れてすみません」
日下さんと一緒に頭を下げると、
「いえいえ。そんなことは気になさらないでください。お荷物、お持ちいたします」
仲居さんは嫌な顔ひとつせず、私たちの荷物を持つと、予約した部屋に案内してくれた。
仲居さんの後ろを歩きながら、何気なくロビーの方に目を向けた時、
「……え」
ここにいるはずもない人物の姿が目に入った。その人もこっちを見ている。