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コメント失礼します! 主様としては初めてのノベル小説でしょうか……。前回の連載とはまた違いとても仲睦まじい🇫🇷さんと🇬🇧さんの会話が聞こえてこちらもはにかんでしまいました…!笑 序盤の方にお茶の種類名 がスッ…と入っている所がとても記憶に残りやすかったです…!(種類に意味があったり…?ワクワク) またコメントさせて下さい! 長文失礼いたしましたm(_ _)m
お久しぶりですor初めまして作者です。
自分が他の小説にも度々使う、イギリスさんとフランスさんがお茶会をする仲という設定。
実際どんなものだろうと掘り返してみた内容のノベルとなっています。
ATTENTION
・会話文のやり取りが主
→ストーリー性×
・強めのcp表現×
・全体的に平坦
久しぶりだよという方(神)は前作との温度差で風邪超えて急性気管支炎とかにならないようお気をつけ下さい。
以下本編↓
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トン、トン、トン…
一歩一歩、浮つく足取りで階段を踏む
明るい雲の多い休日の午後3時。
小窓の外には、ちょうどランチを終えた人々が市街のそこらを歩いている。
そんな変わり映えのない景色を横目に、階段を登り切ったところにあるノブに手をかけた。
キィ…
軋む音を立ててゆっくりとドアが開く。
どこか薄暗い。しかし統一感があり居心地の良い空間に、いつものことながら安心してしまう。
「Bonjour.イギリス。ちょっと遅れたかな」
「Hello.フランス。貴方が時間通りに来ることなんて無いに等しいですから、気にしてませんよ。」
「そちらも相変わらずそうで、なによりだね」
今日は数ヶ月に一度あるイギリスとの茶会の日。
といっても、別にお互い有意義な話をするわけでも探り合いをするわけでもなく、ただ話したいことを話すだけ。
ろくに話もしなかった時代に比べれば、随分といい時間なのかもしれないけれど。
「何がいいですか?」
「ディンブラにしようかな、スイーツ揃えやすいでしょ?どうせアールグレイだろうし」
「いえ、今日は甘めのスイーツが少なくて。ルフナでも淹れますかね」
「珍しいね。じゃあ僕はカモミールでお願いできる?」
「わかりました」
ガタ
窓際に置かれた向かい合う椅子に腰をかける。
すっかり習慣化した景色がこれほどにも愛おしく感じるのは、なにが理由なんだろうか。
なんて、
答えはもう自分の中でわかっているのだけど。
少し奥で、慣れた手つきで紅茶を淹れるイギリスを眺めた。
コト…コト、
「どうぞ」
「ありがとう。」
「もう少々待ってくださいね」
「わかってるよ。待ってる」
この茶会にはいくつかきまりがある。
それは準備を全てイギリスがすること。
彼なりのおもてなしなのか矜持なのかはわからないけど、自然と定着した習慣だ。
それと、必ず茶会はお互いが席に着いたタイミングで始まる。
最初は先に飲んでも何も言われなかったけど、一度待ってみた日にイギリスの機嫌が良かったから続けている。
カチャン
「お待たせしました」
「はいよ。お疲れ様」
「…どうですか?」
「ハーブティー、久々に飲んだけどやっぱ美味しいね」
「それは良かったです」
「ふむ、今日のは上手くいきましたね」
「よく一気に飲めるよね、いつも思うけど熱くないの?」
「慣れですかね…そういう貴方が猫舌なのでは?」
「ええ?ワインに慣れてるだけだよ」
何気ない茶会がスタートした。
僕が先に飲んでからイギリスが飲む。
僕の感想はほとんど変わらないのに、いつも少し緊張したような顔で聞いてくるのだから、どこか面白く思ってしまう。
「にしても今日はいい天気だね。ここで曇り空を見ると、ちょっと不気味だけど安心する」
「なんだか皮肉に聞こえるんですが…まあそうですね。明るい曇りでなによりです」
「懐かしいなあ…もうあの時を知ってるのは、僕たちみたいな存在だけになっちゃったんでしょ?」
「…そうですね。いいのか悪いのか」
曇り。
ロンドンの中心から少し離れた市街地で、ふと思い出すここの景色。
18世紀半ばから19世紀にかけての産業革命の影響により、イギリスの空は常に雲で翳っていた。
18世紀という時代は、そんなイギリスを皮切りに、ヨーロッパから世界にかけて、一番世界が変動した時代だと思う。
この時代には僕も、心から良い思い出と言えるようなものがない。
人間達、もちろん僕達も、得たものと失ったものが大きかった。
「…いいことなんじゃない?僕達だけが知ってる時代。」
「そうですか…まあ確かに私よりも貴方の方が黒歴史でしょうし、貴方にとっては嬉しいしょうね」
「ちょっとそれ禁句。」
「フフッ、すみません」
「…変動することも大事だし、それが僕達の生き方なんだろうけどさ、なんか、淋しいよね」
「そうですね。どうしても昔を夢見てしまう」
「本当にね」
かつて皆が恋焦がれた[近代]という言葉には、当時以上のものが詰まっているのだろうか。
姿も見えないものを追いかけた先で、なんだか目標を追い越して、通り過ぎてしまったような気がしてならない。
昔は象徴のように軍や皇室に置かれた僕達のような存在も、今となってはお飾り、付属品だ。
時代に振り落とされた、美術品のように。
人間達は、人間達の世界を、時代を。
停滞しながら進んでいっている。
「でも、なんでしょうね。私はどの時代にも、価値があるような気がしてならないんですよ」
「へぇ…面白いね」
「人間達に忘れられた、私達の時代も。それを懐かしいと話す、今の時代…この瞬間も」
「私達は少し休んでもいいんですよ」
「こんなにも頑張ったんですから!」
「ふはっ…!なにそれ…」
まあそうか、確かにその通り
時代を象徴した美術品が、息を落ち着かせるように飾られているのも。僕達のような存在が今こうして、市街地にあるとある部屋の一角で茶会をしているのも。
今という時代を楽しんでいることなのかもしれない。
それに、こうしてイギリスと話しているだけでも、僕の満足度的には余るくらいだ。
「イギリス的にも今を気に入ってるの?」
「そうですね…気に食わないこともありますけど、貴方との茶会は存外悪くないです」
「え、急に褒めてくるじゃん。どうしたの」
「…いえ、なんとなく」
「ふーん…まあ、僕も嫌いじゃないよ。」
「昔と随分変わったところとか、ね」
「それは時代に対してですか?それともこの茶会について?」
「さあ、どうだかね」
どちらかと言われると難しいが、まあダブルミーニングといったところだろう。
今こうして平和な時代も、昔と随分変わった茶会も。なにより、イギリスと今こうして話ができることも。
…まあ、あんまり伝える気はないけれど。
答えのつかない感情は、今感じる愛おしさに変換されている大元。とでも題しておこう。
おっと、そういえば忘れかけていたものがあった…
「イギリス、これ見て見て」
カタッ
「…また貴方は、私を描くの好きなんですか?」
「これが一番いいって分かったからね」
「なんですそれ…まぁ、ありがとうございます」
…
「あはっ、やっぱりこれがいいや」
「……よかったですね」
「ちょっと、怒んないでよ?」
「いえ別に怒ってはいませんがね…」
茶会で一番楽しみにしている、絵を見せる瞬間。
この時にイギリスが見せる、絵にできない顔が一番気に入っている。なんというか、複雑な意味を持たない意味で。
…やめだ。先刻の淋しいという発言は、取り消しにしておこう。少なくとも、こうしてイギリスと茶会をしているうちは。
淋しいなんて、感じることがない。
「あ、そうそう。この絵は君にあげるよ」
「…貴方のせいで私、自画像を飾りまくってる変な奴になりかけているんですが」
「全部飾ってくれてるの?嬉しいね〜ありがとう変な奴」
「まったく…」
「たまには貴方の絵でも描いてみたらどうなんです?」
「僕の?」
「ええ、どんなに下手でも貰ってあげますよ」
「やっぱり変なパトロンだなあ…考えとく」
「…そういえば、貴方仕事は終わったんです?」
イギリスがそう言いながら五時を指している時計を指差したところで、いつのまにやら すっかり空になったカップとケーキスタンドに気づく。
先日にサミットがあり、この茶会はその息抜きのようなものというわけだ。
そういえば、そこで話し合った議題についての仕事を、まだまとめきっていなかったような…
そんなこともイギリスはお見通しなんだろう。
「ごめん、思い出した…そろそろ帰るよ」
帰るのは少し惜しいけれど、長居しても迷惑だろう。
そう思い、僕が少しずつ帰る支度をしていると、イギリスもティーセットを片付け始めた。
「いつも悪いね」
「いえ、私が誘っているものなので」
「ふーん」
…茶会が終わった後に、いつもイギリスは少し上機嫌になる。
あの紳士サマでも、ニコニコしてると一見人畜無害なもんだな。
見ているこっちまで顔が綻んでしまう。
帰る準備はすっかり整ったが、片付けをしているイギリスをしばらく眺めていた。
片付ける時に鳴る、食器のカチャカチャという音と足音が心地良くて、終わるまで待ってしまうのが最近の悪い癖になってきている。
「よし、と。」
「ん、片付け終わった?じゃあ帰ろうかな」
「わかりました。お気をつけて」
「今日も楽しかったよ」
「それは良かった」
「あ、それとさ」
「はい?」
「僕、今の時代っていうか、世界?やっぱ案外好きかも」
「フフッ、そうですか」
「うん。淋しくなくて」
「じゃあまたね」
「ええ、また」
キィ…パタン
トン、トン、トン…
一歩一歩、落ち着いた足取りで階段を踏む。
雲が赤く染まり始めた、休日の午後5時半。
外に出てみると、ちょうど仕事を終えた人々が市街をまばらに歩いてた。
そんな、日々の変わり映えのない景色は、どの時代でも美しいものだ。
少し心惜しいような、満足したような。
清々しい気持ちで、今日の御茶会は何事もなく幕を閉じた。