テラーノベル
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「はい、じゃあそのまま……ガニ股で、最高の変顔をお願いしまーす」
藤澤が、まるでカメラマンのような口調で言う。
その手にはスマホ。
レンズがじわじわと、ガニ股+変顔ポーズの二人を捉えていた。
大森の口は半開き、眉は不自然に吊り上がり、目もどこか焦点が合っていない。
しゃべれない。
(な、なんだよこれ……なんで俺、こんな……!)
(やめろ……写真なんか撮るな……っ!)
若井はというと、さらに重症だった。
舌は少し出ていて、片方のまゆだけ上がり、なぜか鼻の穴が強調されている。
(ちょ……ふざけんな……俺、今、顔やばいぞ!?)
(おい藤澤、それズームすんな!!)
パシャッ、パシャッ。
「うん、いいね〜、今の若井くんすごくいい顔。
……あ、ちょっと大森くんもうちょっとアゴ上げて」
(やめろぉおぉぉぉぉ!!)
(これマジでヤバいって……!!)
動けない。
表情も戻らない。
ただただ心の中で叫び続ける二人。
そんな二人を前に、藤澤はにやりと笑い、
「じゃあ次は、ちょっと横からのアングルもいこうか」とスマホを構える。
催眠はまだ、解けない――。