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デザート作りでちょっと汚してしまったこともあって、一旦自分の部屋ヘ帰りシャワーを浴びた。
ゆっくりとお風呂に浸かって、洗った髪を丁寧に乾かすと、ラフなルームウェアにガウンを羽織り彼の部屋を訪れた。
ドアをノックしてみるも中から応答はなくて、「貴仁さん、入りますよー」と声をかけながら、中へ足を踏み入れた。
いつものソファーにも窓辺の書机にも彼の姿はなくて、(どこにいるんだろう?)と思っていると、浴室の方から水音が聴こえてきた。
お風呂に入っていて……。じゃあちょっと待っていようかなと、ソファーへ腰を下ろした。
──しばらくして彼がバスルームから出てくる気配がして、隠れてびっくりさせちゃおうかななんていう、子供っぽいいたずら心がふいに湧き上がった。
ソファーの隅にしゃがみ込んで身を潜めていると、彼が部屋に入って来た足音がして、
「わっ……!」と、飛び出した。
ところが、そこで出食わしたのは、腰にバスタオルを巻いただけの半裸の貴仁さんで、
「きゃっ……」と小さく声を上げ、顔を両手で覆い隠して、またソファーの陰にしゃがむ羽目になった。
「……驚いた、来ていたのか」
言いながら近づいて来た彼が、中腰で私の頭にぽんと手を乗せる。
「あっ、はい……き、急に来て、驚かせるようなこと、を……」
座り込んだまま、テンパってどもりがちにもなる私に、「どうした?」と、彼がますます顔を近づける。
「そそ、そのかっこう……」
真っ赤になりながら、ようやくそれだけを口に出すも、
「うん? 私のかっこうがどうかしたのか?」
当の貴仁さんは全く気づいていない風で、自分の身体に何かおかしなことでもあるのかと視線を落とした。
「……だ、って……ハダカで」
一方の私は、全く目を合わせることもできないでいると、
「ああ、もう見慣れていると思っていた……悪いな」
察した彼が口にして、ふいに照れくささが襲った様子で、とっさに私に背を向けた。
その戸惑うような後ろ姿に、ひたぶる愛おしさを禁じ得なくて、
「ううん、少し、ドキドキしちゃっただけなので……」
湯上がりのわずかに上気した広い背中へ、ぴとっと頬をくっ付けた。