テラーノベル
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「ねぇ葵。葵はさ………………」
「んあ?なに?」
「……………………………」
そう聞き返しても黒瀬は下を向いて言葉を発しなかった。
いや、言えなかったのかもな。
夏休み、黒瀬は俺の家で一緒に勉強をしていた。
だけど黒瀬の様子は少しおかしくて、勉強に集中できてない様だった。
「……………………黒瀬?」
「はっ……………、っごめん(笑)」
「なぁ、なんかあるんだったら言えよ?」
「………………………うん、あはは、何も無いんだけどね(笑)……………っ、」
「…………………………そう、か」
黒瀬が言いたくないなら模索するのは良くないと判断して、その後は静かに勉強をした。
「じゃあそろそろ帰るね」
「おう。また明日な」
「…………………うん。また、明日」
そう言い黒瀬は俺の家から出て行った。
「…………………っ、はぁっ………!ふーっ、ふーっ、明日も、何事もなく過ごさせてくれ………っ…」
そうやって僕、黒瀬は願うしか無かった。
「………………せ」
「黒瀬!!」
「っ!は、え、あ、えっと、どうしたの葵(笑)」
「やっぱ、なんか隠してる、よな。ごめん。聞かれたくなかったと思う。それは分かってた。でも、やっぱお前おかしいよ。いつも普通に過ごしてるだけなのに冷や汗、すごいし……………」
「っ、……………………ごめん、ね。言おうって何回も思ったけど、あはは、うん。ごめん。まだ言える勇気、ない」
「………………………そっか、言える時、しっかり言えよな」
そういい葵は教室を出ていった。
もう、放課後だったんだ。
もうだいぶ分からない。
時間感覚も無くなった。
あと僕は、何日「人」で居られるのだろうか。
それは誰にも分からないし分かりたくもないけどね。
「………………………黒瀬。お前最近、いや、失礼なのは承知してるけど、お風呂…………………入ってるか?」
「え?うん。入ってるよ?もしかして臭いかな?」
「いや、うん。でもお風呂入ってない匂いって言うか、獣の…………………」
そう言いかけると黒瀬は俺の声に被せて名前を呼んだ。
「葵!!」
「うおっ、なに、?急に大きい声出すなよ…………」
「っ、言いたい事、伝えていい、かな」
「…………!おう、いいけど…………黒瀬は、それを望んでるのか?」
「っ、それ、は……………」
「んは、俺が気になってるから言わなきゃって思ってたんだろうけど、黒瀬が言いたくないなら良いんだぞ?」
「ちがっ、……………………ごめん。もう、葵には伝えとかなきゃ行けないんだ」
「………………やっぱ、病気とかか?」
「………………………まあそんな感じ、かな」
「まあ、黒瀬が話したいなら俺はちゃんと聞くよ」
「………………ふーっ、あのね、僕、もう人間では居れないみたい」
「……………………………は?」
「僕、僕ね、っ、半年前、夜の時間に家に帰ってたんだ。そしたら、化け物のような”そいつ”に会ったんだ」
「そいつ……………?」
「………………うん。その化け物は、僕を見た途端、見つけたって言った。その瞬間に、僕の中に…………………っ、ごめん。詳しくは、言わない方が、葵の為に、なる。聞きたいならもちろん、話すよ」
「…………………そっか。辛かったな。なぁ、黒瀬の中に、何が入ったんだ?俺に、教えてくれないか?」
「………………!……………………うん。そいつは自分の事を「からぐんり」って言ったんだ」
「…………………っ!は、おま、それ…………………」
「…………………………ごめんね。葵。葵が聞かないって言うなら言わないって思ってたんだけど、葵はちゃーんと聞いてくれた。ありがとう、葵。ごめんね。苦しくなるね。…………………でも、葵のお陰で僕は辛くなくなるから…………………だから、葵の分まで……………………んふ、ちゃーんと、生きるからね」
「なん、で……………………………なんで、俺に教えた、の……………?黒瀬………………っ、!なんでっ……………!俺達、友達、じゃんか………………っ、」
「うん。そうだよ友達。友達だからさ、僕の為に”呪われてね”」
「ぁ……………………………………」
その小さい小さい言葉を発して葵は眠りについた。
……………………………あははぁ、ごめんね?葵♡
「…………………葵、君の体は腐るまで、」
ー僕が抱きしめてあげるからー
からぐんり、とは。
からぐんりは、「対象の人に特別な感情を持っている」人を狙い呪う。
呪われた相手は半年を過ぎると人では居られなくなる。
人で居られなくなった人が、からぐんりとなる。
だが唯一助かる方法はある。
特別な感情を持った相手に、からぐんり様の事を伝える。
そうすると、呪いは相手に渡り、呪われた人はすぐにこの世を去ってしまう。
呪いを渡された相手は、からぐんりになること無く生涯を終える。
だが、何故こんなにからぐんりが増えるのか…………………
それは______
「普通の人じゃ、僕みたいに”好きな人”に呪いなんて渡せないからねぇ♡でもね、葵、これからは、ずっと、ずぅーっと、一緒に居れるからね♡」
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
題名「彼岸花は枯れるのを待ってくれない。」
コメント
1件
その他の詳細。 黒瀬は本気で葵が好きなら何故呪いをすんなり渡せたのか。 それは、黒瀬はこう考えたから。 「葵に呪いを移せば葵は僕とずっと一緒に居てくれるし、葵の命は僕の中にある」と。 黒瀬は本気で愛していたからこそその決断をした。 でも葵が聞きたくないと言えばからぐんりの事を伝えず人ではなくなろうとしていた。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ これを見てからもう一度見ると見方が変わって面白いです