テラーノベル
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何度か家に泊まって気がついたことがある。
紙タバコを吸う度に、りぃちょが静かになる。
どれだけ酒に酔っていようが、眠かろうが、言い合いをしていようが、シードが紙タバコを手に持って火をつけるだけで、静かになる。
そのままチラチラと様子を伺いながら、そっぽを向く。
「…なんでそんなに見るん?」
タバコを吸いながら、聞いてみる。
「べつに、なんとなく………」
いつもなら「見てないけど?シードちゃん自意識過剰じゃない?w恥ずかしいやつwww」などと煽りを入れてきそうな場面なのに、
やっばり、タバコを吸っている時だけ静かになる。
吸っていない時に聞いてみることにした。
翌日、タバコを吸っていない時に聞いてみる。
「りぃちょくん、なんでタバコ吸ったら静かになるん?」
「いや、なってないけどwたまたま喋んないだけじゃない?」
ヘラヘラと愛想笑いを浮かべながら交わすりぃちょに少し腹が立ったシードは、徹底的にやってやることにした。
タバコに火をつけて、肺に煙を入れてから一気に喋り出す。
「…じゃあ、これから撮影しよ。」
「企画は………クライナー100本、二人で50本ずつ飲んでみた、とかどう?」
「…………おれこれから女研の撮影――」
「ニキから今日休みって聞いとるけど。」
(アホなんかな。)
(女研の名前だしたらメンバーに聞かれることくらいわかるじゃろ。)
「…じゃあ、クライナーと”灰皿”そこに並べるけぇ、ソファ座って撮ろうや。」
「俺色々買ってくるわ。」
そう言って、シードが財布を持って立ち上がると、りぃちょに腕を掴まれる。
「…なんで、」
「なんで、そんなにおれのこといじめるの」
顔を見ると、泣いていた。
「は!?いや、え、ごめ…え!?」
(いやこいつなんで泣いとん!?意味わからんのんじゃけど!?)
「おれが空気読めないから?タバコ吸わないから?バカだから?」
「いや、何言って――」
「謝るから、吸えないけど、謝るから…もうやめて…ください…………」
初めてりぃちょくんに敬語を使われた。
初めて頭を下げられた。
初めて、泣かれた。
「…吸わんでええって………なんで泣いとんよ…」
しゃがんで、目線を合わせて話しかける。
それだけでりぃちょの身体はびくりと跳ねた。
(あ、タバコ持っとるけぇか…)
火のついている部分を灰皿に押し付けると、音を立てて消えた。
少しもったいないという気持ちもあったが、ここは一旦りぃちょとの会話が先決だと判断した。
「…はい、火消して灰皿入れたで。」
「………」
りぃちょは、俯いたまま動かない。
「…一旦出てったほうがええ感じ?」
「んーん……………」
りぃちょは、シードの裾を掴んで離さなかった。
30分ほど経つと、ぽつぽつと話し始めた。
「むかし……………仲良くしてた先輩たちに、タバコ吸えって、言われて」
「断ったら殴られて…………タバコで、背中焼かれて」
「!」
シードに、後悔の波が押し寄せる。
なんてことをしてしまったんだろう。
知られたくなかったのだ、きっと。
事情も知らずに少しムカついたからって追い詰めて、傷をえぐって。
とんでもないことをしてしまったことに、気づく。
「ごめん、りぃちょくん、もうええけん」
思わず抱きしめて、少し後悔した
シードには紙タバコのクサい臭いが、りぃちょのトラウマの臭いがこびりついているから。
「…んー………へへ、ちょっと好きだな、このにおい笑」
シードの考えとは正反対に、りぃちょはヘラりと笑った。
「は?」
「タバコくせーけど、シードちゃんの匂いって感じ…へへ笑」
真っ赤に腫らした目で、シードを見上げた。
腕に力が入って、シードはいっそう強く、りぃちょを抱きしめた。
「…クライナー、いいの?w」
「もうええよ…………」
そのまま、その日はなんとなくくっついて眠りについた。
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