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sm.side
最近、きりやんの仕事が忙しくてあまり会う時間が取れていない。
会って思いっきりイチャイチャして甘えたいが、仕事の邪魔にはなりたくないのでぐっと我慢する。
俺は仕事終わりにくれる1本の電話だけを楽しみに1日を過ごしていた。
大学に行ってサークル活動があれば少し顔を出したり、その後は深夜までアルバイトをした。
会えない寂しさを埋めるように予定を詰めていた。
今日も朝から授業を受けてサークルに顔を出して、バイトまでカフェでレポートをまとめて休憩する間もなくアルバイトに出勤して終電近くまで働き帰路に就いた。
アパートに帰ってスマホを確認したがきりやんからの着信はまだない。
でも大体このくらいの時間にかかってくるから
と悩んだがシャワーを浴びてしまいたくてスマホを気にしながら急いで入ることにした。
体を流し終えてもうすぐ上がろうかな、という所で着信を知らせる音が鳴った。
全身びしょびしょのまま慌ててバスルームから出て電話に出た。
sm
「お疲れ様、今日も遅かったね」
片手でタオルを取って適当に頭と体を拭きながら会話する。
kr
「うん、すまいる丁度風呂あがったとこ?なんか音反響してる。」
sm
「あ、バレた?丁度出たところで着信あったから急いで出てきたんだよね。」
kr
「ちゃんと頭拭きなよ。春とはいえまだ夜は冷えるし風邪ひくぞ。」
頭を拭く音がうるさくてきりやんの声が良く聞こえなかったので拭くのをやめたのをどこかで見られているかのようだった。
sm
「エスパーかよ。」
kr
「当たってんだ、笑。すまいる、すぐ風邪ひくんだから体冷すなよ。」
はいはい、と電話をしながら片手で何とかパンツだけは着用した。
髪からはまだぽたぽたと滴が垂れている。
sm
「人を病弱みたいに言わないでよね。きりやん、こそ仕事忙しいみたいだけど大丈夫なのか?」
kr
「あー。まぁ忙しい時期だからね。後1週間くらいは死ぬほど忙しいと思うけどそれ過ぎたらゆっくり時間取れるからどこか行きたいところ考えておけよ。」
sm
(死ぬほど忙しいのか…
早く会いたいけど言うと無理してでも時間を作ってくれそうだからあえてこっちも忙しいから
大丈夫だよ、とアピールして、無理矢理毎日を予定で埋めている。
半裸で他愛もない話を続ける。
そして、話終わるころにはさすがに眠気が襲ってきて電話を切った後Tシャツだけ着て半乾きのままの髪の毛で眠ってしまった。____________________________________________
【翌朝
sm
「…っくしゅ!」
起き上がった瞬間にぶるっと身震いしてくしゃみがでる。
何だかいつもより体が重くて嫌な予感がした。
sm
「やば…風邪ひいたか…?」
昨日同様今日も朝から予定をみっちり入れていたので起きないわけにはいかない。
だるい体を引きずってシャキッとするために顔を洗い身支度を整える。
出かける準備の進行とは裏腹に体は重さを増して脈打つたびに頭が痛んだ。
sm
「…っあたまいった。」
口に出すことでちょっとでもこの気分が解消されないかなー、なんて淡い期待を抱いていたが、実際は体調が悪い事の確認にしかならなかった。
ピロン
ラインの通知音が鳴る。
きりやんからだ。
kr
<おはよ>
<早朝会議行ってくる。すまいるも大学行ってらっしゃい。>
きりやんからだ。
昨日もあんなに遅くまで仕事したのに、まだ7時にもならないうちに出かけていくのかと思うと頭が下がる。
本当は少し甘えたい気分だったが自分でどうにかするしかない。
行ってきます、のスタンプを押す。
これ以上きりやんからの返信がくると甘えたくなるし、会いたくて我慢できなくなる。
こちらの思惑通り、これ以上の返信は無かった。
ふぅ、とため息をつくと重い足取りで家を出た。
nk
「すまいるこっち!席取ってるぞ。」
同じクラスのなかむが講義室に俺が入ってくるのを見つけて声をかけてくれた。
sm
「おー…ありがと。」
今日はやたらと講義室の空気が悪いような気がして気圧されて席を探すのも面倒だったので助かった。
nk
「…すまいるなんか顔色悪いよ。徹夜でもしたの?」
ほぼ同じ講義を取っているなかむとは毎日顔を合わせている。
面倒見のいいやつで、一緒にいると居心地が良い。
sm
「えー?あーいや、まぁそんなとこ?」
そんななかむに心配されてしまって曖昧な返事をする。
何とか授業は頑張って、受けたが体が怠くて板書し終わるたびに机に伏せた。
nk
「すまいる、すまいる、講義終わったよ。すまいる、サークルいかないの?」
うっかり寝入ってしまってたところをかかむに起こされる。
sm
「あー、ごめん、ねちゃった…あとでノート…、った…。」
のそっと顔を上げると殴られたみたいに頭に衝撃が走った。
nk
「どした?やっぱ体調悪いの?」
心配そうになかむが声をかけてくる。
体調が急降下しているのが自分でも分かった。
最近睡眠時間を削って無理なスケジュールで生活していたし、もともと食が細いのに何かに夢中になると食べるのを忘れてしまう。
ちゃんと食べないと駄目だと言ってくれる人も側にいなかったので食生活も乱れていた。
sm
「…っ頭いたい、やっぱ寝不足かも…悪いけど、サークル休む。バイトまで漫喫で寝るわ。」
そう言って後2時間ほど時間があったのでそこで仮眠をとることにした。
途中でドラックストアに寄り頭痛薬と水を買ってすきっ腹にそれを流し込み気絶するように眠った。
バイトの時間を知らせるアラームが鳴って起きる。
薬が効いたのかさっきよりは頭痛も少しましになっていた。
このまま良くなってくれればなぁと思いながらバイトに向かい昨日と同じように終電間近まで働いてから帰宅した。____________________________________________
sm
「…う゛~寒い…あたまいてー…。」
何とか帰宅したが薬の効果が切れたのか悪寒と頭痛が増していた。
風呂に入る気力も無く、上着だけ脱ぎ捨ててそのままソファに沈み込んだ。
手だけ伸ばして棚から何とか体温計を探り当てて脇に挟んだ。
可視化したら余計辛くなりそうで今朝は測らずにいたがそうもいってられない体調になってきてしまった。
ピピっと体温計が鳴る。
sm
「あー…やっぱり…。」
騙し騙し過ごした1日の疲れがどっと出てきたような気がした。
体温計には38.6℃と表示されていた。
まだ寒気がするしこれからもう少し上がるかもしれないと思うと少し不安になった。
特別に体が弱いと言うわけではないが、小さい頃から風邪を引くと結構な確率で高熱を出してしまう体質だ。
sm
(薬…飲みたいけど…朝から何も食ってないしさすがにまずいかな…。
幸いなことに明日は土曜日で授業は無いし、バイトも夕方からだ。
今から休めば大丈夫。
そう言い聞かせてパンをひと齧りして薬を流し込んだ。
すぐにでも横になりたかったが、飲み込んだ胃部の不快感でそうすることも出来なかった。
ちらっと時計を見るといつもならそろそろきりやんから電話がかかってくる頃だ。
寝ていて出られない日もたまにはあるが、今日は特別にきりやんの声が恋しくて今にも落ちそうな意識を何とか保っていた。
少ししてスマホが鳴った。
きりやんからだ。
ふぅ、と軽く息を整えてから電話に出た。
sm
「…もしもーし。おつかれ。」
kr
「ただいま。すまいるまだ起きてたんだ。」
sm
「んー…、うん。寝るとこだけど…声聞きたかったから…。」
酔っぱらっているみたに舌足らずに話す俺に少し違和感があったが、寝る前と言っているので多分そのせいかな?、と特にきりやんは気に留めなかった。
kr
「すまいる、眠そうだね。待っててくれてありがと。また明日電話するよ。お休み。」
多分熱が出てきて頭がぼんやりしてうまく話せないのを、眠いと取られてしまって、早々にきりやんが電話を切ろうとするので俺は焦って
sm
「あ!待って…眠くない…眠くない!!」
ソファに沈み込んでいた状態からいきなり立ち上がって引き留めた。
kr
「あ、そうなの?そんなに焦るの珍しい。びっくりしたじゃん」
きりやんの優しい話し方と声がだんだん遠くなっていく。
無理矢理立ち上がったせいで血の気が引いて世界が回って立っていられなくなった。
足に力が入らなくなって膝から崩れそうになったが何とか両手を床について耐えた。
それと同時に手に持っていたスマホは投げ出された。
頭がすうっと冷える嫌な感じが続いて、スマホを拾いに行くことも出来なかった。
sm
(やばい、きりやんが怪しむから早く拾わないと
四つん這いのまま何とか視界の端にスマホを見つけて手に取る。
sm
「…ぁ…ごめ……スマホ落とした…。」
眩暈が酷くて目を開けていられない。
目をぎゅっとつぶってぐったりとしたまま何とか答える。
kr
「すまいる?体調悪いの?なんか変だけど…」
流石に鋭い。
いや、余裕が無くて全然隠しきれてないだけかもしれない。
甘えたいけど今もし無理をして仕事で忙しい、きりやんに来てもらったら罪悪感で自分の事が嫌いになりそうだ。
そう思うのに、きりやんに心配して優しくしてもらいたい気持ちも顔を出す。
sm
「ちょっと風邪気味なだけ~。会えるまでには完璧に治しておくから大丈夫。今日はもう寝るから。俺、良い子だし…笑」
なるべく明るく、結構しんどいことを悟られないように言った。
kr
「風邪気味?大丈夫?しんどかったら言ってね。行くから。」
その言葉が聞きたかったのかもしれない。
別に超多忙なきりやんに本気で来てほしいとは思っていないが、弱った体と心に沁みて危うく泣きそうになった。
sm
「はは。おーげさ…。大丈夫だから。きりやんこそ体気を付けてね。おやすみ。」
少し強がって強引に電話を切った。
あー…しんどい…目ぇまわるし気持ち悪い…。
頭も痛いし寒気が止まらない。
熱が上がってるのだろう。
きりやんの作った料理が食べたい。
コンビニ袋いっぱいに俺の好きなもの買ってきて甘やかして欲しい。
きりやん
会いたい。
そして、
寂しい気持ちを紛らわすようにベットにもそもそと入り枕を抱き締めて目を閉じた。