テラーノベル
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#ご本人様に関係なし
#カプ要素なし
無償の友愛のおはなし。
元貴は、繊細で、大胆で、強くて、弱い。
俺には元貴の気持ちを完全に理解してやることはできないけど、彼が放った言葉の裏にある真意を汲み取って、彼が望むように動くことはできる。
盲信的だと俺も思う。
でももう、元貴に人生託しちゃったからさ。
深夜2時。
元貴から端的なメッセージが来た。
『家来て』
たった3文字だけど、元貴が何を言いたいのかわかった気になった。
最低限の支度をしてドアを開ける。
コンビニに寄り、酒や食べ物を少し買って、タクシーに乗り込んだ。
おんなじ都内に住んでいるのだから住んでいる場所はそう遠くないはずだけど、元貴の家までの道のりがこの世で一番長く感じる。
だって怖いんだ。
いつ壊れてしまうかわからないほどに繊細で、
俺に助けを求めるほどにボロボロなのに、俺が元貴にとどめを刺してしまったら。
元貴という愛しい生物をこの手で殺してしまったら。
と思うと震えが止まらなくなる。
震える体に鞭打って、ようやく辿り着いたマンション。
慣れたもので、オートロックの番号も覚えてしまった。
元貴の部屋がある階まで行って、扉の前に立つ。
ドアノブに手をかけてみるけど、、
まさか、な。
驚くほどにドアノブは滑らかに回り、俺を部屋に招き入れてしまった。
嬉しい。
警戒心が強い元貴が鍵をかけ忘れるなんてことは滅多にない。
俺が来るから。
家の中はすごく静かだった。
雑然としているけど、まるで生気がない。
俺の足音だけがやけに響いて、虚空に消えていく。
リビングには、居ない。
寝室にいる訳がない。
となると制作部屋にいるんだけど、
入るのは聖域に土足で踏み入るようで躊躇してしまうのでドアの前から声をかける。
「元貴、来たよ。どうしたの」
慎重に言葉選びをする。
元貴がこれ以上傷つくことがないように。
傷つけたくないっていうエゴもあるんだけどね。
暫しの沈黙。
いつもこうだからもう慌てないけど、10代の頃はすっごく焦ったなぁ。
「おれ、リビングにいるからね」
もはや恒例の言葉を告げてリビングに戻る。
キッチンにある冷蔵庫が目に入って、申し訳ないけど開けた。
ほぼ何も入っていない。
随分前にcm撮影でたんまりともらったビールが数本あるだけだった。
もう何日も制作しているから、きっと何も食べてないのだろう。
さっきコンビニで買った豆腐やら納豆やらを入れて、何もなかったようにそっと扉を閉じておいた。
元貴の部屋に来てから1時間が経った。
ギターも家に置いてきてしまったので、することがなくて、スマホをいじっていたら部屋に元貴が入ってきた。
あーもう、ひどい顔。
テレビでネタにしている寝不足も、笑い事じゃないほどの隈で。
休めって。
言えない俺も悪いけど。
「どうしたの、おわっ」
ふらふらと近づいてソファーにいる俺に抱きついてきた。
いや、のしかかってきた。
俺の胸に顔をうずめ、ぐりぐりと押し付けて、
「ゔゔぅぅ」
とうなっている。
相当疲れてるな。
されるがままに胸板をぐりぐりされ、ようやくやめたかと思ったら次は動かなくなってしまった。
国民的バンドのフロントマンの素。
PMGAのスタッフたちも知らない、涼ちゃんと俺しか知らない元貴の本性。
「俺たちだけ」
という言葉に優越感を感じる。
俺たちにだけ甘えてくる。
しかも、いまこの部屋にいるのは俺と元貴だけ。
俺が元貴を独り占め。
裏を返せば、今元貴を護れるのはおれだけ。
人にガウガウと噛みつき、天にすら中指を立てられる男だけど、本当は繊細で、一番気にしいで。
そんな幼馴染が孤独じゃなくなるように。
「もとき、おれもりょうちゃんもずーっと側にいるよ」
「もときのこと、だいすきだからね」
若干震える手を元貴の頭に置いて言う。
鼻水を啜る音が聞こえた。
あけましておめでとうございます。
今年も細々と楽しんで参りたいと思っております。
今年も拙作をどうぞよろしくお願いいたします。
バイバイ👋
コメント
2件
言葉にできないくらい好きすぎて、もうどうしよう…この距離感、信頼、友愛を超えた深い愛に心打たれたます。何より自然すぎて…何回も読み返します。ありがとうございます。