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人類は祈る事でしか生活を営めない。
崇める対象は何でも良かった。
自分たちの望みを叶えてくれる存在なら。
それらに総じて神と名称を当てはめた。
邪神…女神…原神…龍神…魔神…荒神…
神を冠する存在は人類の繁栄に比例して無数に増えていった。
「次…7-4074…前へ」
成人であろう者の声で読み上げられる番号。これが私達の呼称だった。人間と言うよりも無機質なものに感じさせる。
冷たく硬い白い床。美しく繊細なステンドグラスが日に照らされたのだろう。無機質な室内を彩っている。
冷たい床に片膝を着きしゃがみこみ、顔を上げることは決して許されない。
自分を識別する番号が呼ばれるまでこの姿勢で待機を強いられる。
1人……また1人と呼ばれていく。
断末魔と生臭い匂いが充満していく。
当たり前のように消費されていく。それが普通なのか、はたまた異常なのか。それを判別するほど私たちは世間を知らない。
「次…13-8610…前へ」
ついに自分の番だ。
ゆっくりと顔を上げ立ち上がる。共に歩いきた私たちは半分ほどに減っているようだった。
体が震えている者も少なくない。しかし声は漏らさないようだ。
この状況を好ましく思っていないのは自分だけでは無いのだと、少し安堵した。
真っ白な装束に身を包んだ大人。フードを目深に被っておりその表情は読めない。
横には青白く美しい結晶が、光を不規則に放ちながら浮いている。しかしその足元に目を向けると、周囲には赤黒いシミがこびりついていた。
冷たい床を踏みしめ、結晶へと向かっていく。
ぬるり。
まだ少し熱が残っていた。滑らないようにより慎重な足取りで向かう。
結晶の前にたどり着いた。微細な光を放っていた。
「瞳を閉じ、両手で触れなさい。」
大人に指示されるまま結晶に触れる。そしてそっと瞳を閉じた。
次の瞬間、先程まで居た場所とは異なる空間にいた。
そこは、色々と上手く認識できず、踏みしめるべき大地も、見上げるべき天空もない。ふわふわと頼りなく体は浮遊感を憶えた。
「やぁ…青少年。久しぶりすぎて驚いたよ」
突然、目の前に恐らく人型の何かが現れ、話しかけてくる。
この状況下で思い当たる存在はひとつしかない。
「あなたは…神様?」
揺らめく人型(仮)に目線を真っ直ぐに向ける。
うーんと少し悩んだような反応をした。
「んーまぁそうかな。そんな感じだよ。」
「そう…ですか…うっ…ぁ…」 突然全身が違和感としか言いようのない感覚に襲われた。
「あー…今の青少年にはちとここはキツいか…」 そう言いながらこちらに近づいてくる神様。すると、額に手のようなものを押し付けられた。
熱も何も感じないが何かに触られているような不思議な感覚……
「さぁ…青少年。ここに来たからには、これを聞いておかないとね」
「君は対価に何を支払う?」
今までで最も落ち着き払った声音。
「そして……何を望む……?君の形を示しておくれ」
「私は…………」
足底から伝わる硬さと冷たさ。うっすらと瞼に明かりを感じ目を開ける。
そこは先程居た結晶の前だった。
結晶に触れている両手は無事のようだ。どうやら私は人の形を保てているようだ。
両手を結晶から離すと、先程までこちらを見下ろしていた大人が深く頭を垂れていた。
「おめでとうございます。あなたは神に愛されていました。」
反応を見るにどうやら成功したようだった。あれで良かったよか……答えを教えてくれるモノも居ない。
「さぁ、こちらへ…」 と導かれるまま足を進める。乾いた血液が足の裏にくっついているようだった。少し気持ちが悪い。
結晶から離れ、私たちの横を通り過ぎる。まだ半分ほど残されていた。
「次……8-1329……前へ」
似ているが別の大人の声だった。儀式はまだまだ続くのだろう。