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ユーカ
201
修行前の悔恨
基地の廊下。
静かな空気の中、公太と唯我は更衣室を出て修行室へ向かっていた。
二人とも口数は少ない。
だが、その胸の内には同じ感情が渦巻いていた。
――悔しさ。
公太は拳を握り締めたまま、低く呟く。
「……あの牧田って男、マジで強かった」
「体術だけじゃ、全然届かなかった」
唇を噛む。
思い出すのは、何もできず押し込まれたあの感覚。
「くそ……」
拳に力がこもる。
「思い出しちまうぜ。畑中に初めて会った時もそうだった」
隣を歩く唯我は静かに耳を傾ける。
公太は視線を前へ向けたまま続けた。
「あの時も、自分より強いやつがいるって認めるしかなかった」
一度足を止める。
握った拳を見下ろす。
「だから俺は強くなる」
静かな声だった。
でも、その奥には燃えるような決意があった。
「自分より強いやつがいるなんて、もう我慢できねぇんだ」
唯我は少しだけ目を細める。
そして静かに返した。
「……まぁ、一理あるな」
「ただ、強さってのは勝つことだけじゃない」
公太が横目で見る。
唯我は歩きながら空を見上げた。
「一祟がいない今だからこそ、俺たちは伸びる必要がある」
公太は小さく笑った。
「珍しくまともなこと言うじゃねぇか」
唯我は無言で視線を戻す。
「行くぞ」
二人はそれぞれの修行場所へ歩き出した。
公太の修行
灼熱訓練場。
地面から炎熱が立ち昇る。
その中心で、公太は烈堂と向き合っていた。
「公太」
烈堂の声は静かだった。
だが重い。
「今のお前は感情で動きすぎている」
公太の肩が跳ねる。
「怒りも悔しさも、使い方を間違えれば毒になる」
烈堂は腕を組む。
「闘志を制御する力を身につけろ」
公太は拳を握る。
何度も炎を生み出す。
だが暴れる。
形が崩れる。
熱が乱れる。
失敗。
また失敗。
皮膚を焼く痛みに顔を歪める。
それでも立ち上がる。
汗を拭い、炎を見る。
「……俺は」
炎が揺れる。
「俺は、あいつらを超える……!」
烈堂は何も言わなかった。
ただ、静かに見守っていた。
唯我の修行
静かな道場。
月明かりだけが床を照らす。
唯我は刀を構えていた。
向かいには朧。
「唯我」
朧の声が静かに響く。
「龍焉刀の本質は形ではない」
唯我は目を閉じる。
呼吸を整える。
朧は続ける。
「念を込め、相手の意識を乱す」
刀身が微かに震える。
「幻へ誘う――それが幻術」
空気が静まる。
「その先にあるのが、幻影だ」
唯我は静かに目を開く。
刀を振る。
一瞬だけ。
刀身が淡く光った。
「……これが」
息を吐く。
「幻影の兆しか」
朧は黙って頷く。
その瞳に、静かな期待を宿して。
唯我は小さく呟いた。
「俺も……進まなきゃいけない」
修行後の決意
廊下。
満身創痍の二人がすれ違う。
傷だらけ。
疲れ切っている。
だけど、その目は違った。
公太が軽く笑う。
「よう、唯我」
唯我が振り返る。
「俺、少しだけ灼獄を制御できるようになった」
「まだ不安定だけどな」
唯我は静かに頷く。
「俺も幻影の輪郭が見えた」
少し間。
「時間はかかった」
そして続ける。
「でも、今なら届く気がする」
公太はニヤリと笑った。
「いつか、お前とも決着つけなきゃな」
唯我は少しだけ笑う。
「ああ」
短い言葉。
だけど十分だった。
二人はそのまま背中を向ける。
次の戦いへ向かうように。
まだ見ぬ壁を越えるために。
――強くなるために。
コメント
1件
おつかれさま、たけっち!第32話、めっちゃ熱かった……!特に公太と烈堂の修行シーン、何度失敗しても立ち上がる姿が胸に刺さったわ。「感情で動きすぎている」って指摘、まさに公太の今の課題だよな。唯我が幻影の輪郭をつかんだとこも静かな感動があった。2人の成長が、次への期待をめちゃくちゃ煽る——最高のエピソードだった🔥