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「『少数派』は世間からの爪弾き者たちを束ねて、ふざけた世の中に反逆をするための組織だと言ったけどね。 実のところ、明確な活動目標が私たち構成員に表明されているわけではないんだよ。 昼休みにも話した通り、テロと呼ばれる活動の数々は組織拡大のための手段だ。 全体の目的ではない。 じゃあわざわざ、大仰な方法を用いてまで組織を拡大させ、権能を行使することの出来る者たちを集める理由とは何なのか、という点だけど……、それは『少数派』の指導者しか知らない。 組織のメンバーは、目的もわからぬまま、ただ願いが叶うという報酬のためだけに、彼に付き従っている。 そんな関係性でも納得出来てしまうほど、彼の持つ『願いを叶える』という報酬は絶対的なんだ。 それと、彼は絶対に仮面を外さない。 契約を利用して組織員と損得関係を構築し、一定の距離を取り続けるつもりなのさ。 それも、理由は知らないけどね」
野崎は放課後の校舎裏で、野球部のサボり用ベンチに思いきり背を預けて、昼休みに余らせていた焼きそばパンに包帯ごと噛みつきながらそう話した。
「……あんたたちの組織のことはわかった。 でもな、どんな理由があっても、『少数派』がやっていることは犯罪だ。 間違ってる。 そんな危ねえことに、オレの友人たちを危険に晒したことをまだ許せねえ」
「フン、薄っぺらい正義感だ。 では謝罪しろと? 仁君たちに正面から堂々と? 私も謝りたい気持ちがない訳ではないけどね、それは不可能だ。 これも昼に話したはずだよ、私の正体が君以外に知られるようなことがあれば、相応の対応をしなければならなくなる、とね。 なんてったって私は、国家権力が血眼になって追っている、現在逃亡中のテロリストだ。 本当に友人の安全を考えているなら、君も口を塞いで我慢しなくちゃな」
野崎はこう言いたいんだ、告発なんてするな、黙って私に監視されていろと。
「まあ、安心しなよ。 煌が仲の良い友達を演じてくれている間は、君の周囲に一切の危害を加えないと約束する。 なに、簡単だよ。 私と君は今朝のホームルームで初めて出会った、ということにするだけさ」
こいつの脅迫には、反発の仕様がない。
実際、既にこうして懐に潜り込まれて、一方的に人質を取られてしまっている。
こちらから正体を公表するぞとか言って脅そうにも、奴は権能とかいう不可解な手品を持っている。 下手なことをすれば、クラスメイトどころか、オレの命すらも危うい。
「……それにね、君はまだ知らないんだ。 この世の中が、どれだけ間違っているのか。 あの一件がまとめられた記事に、ネットの奴らがどんなコメントを寄せているか知っている?」
ネットのコメント?
新国立博物館で起きた事件が、どう世間に報道されているのかを知るためにニュースのまとめ記事を読むことはあったが、コメントまではあまり目を通していない。
「中には義憤に駆られた偽善者もいて、テロリストグループ達には然るべき報いを与えるべきだ、なんてことを長々と書き込んでいた人もいたけど、大多数の怒りのコメントは私たち『少数派』ではなく、博物館側と国の対応に向けられているんだ。 破損した複数の美術品の修復費の一部を、国の税金を以て補填しようとしていることが着火剤になってしまっているらしいよ。 これまで『少数派』が起こしてきた事件がネットで話題になることは多々あったが、今回の税金運用に関する一般人の反応量は飛び抜けている。 エスエヌエス、とか言ったか? そこでも、人気の話題ランキングの上位に登りつめているらしいじゃあないか。 自分たちの金が使われるとなるやいなや、この反応だ。 私は、こんな世の中が心底嫌いだ。 どいつもこいつも現金で、好き勝手に私欲で動いている。 本当に嫌だった。 だから、私も好き勝手にしてみたんだ。 君たちがそのつもりなら、私も好き勝手にするぞ、とね」
「……お前が何をきっかけにそこまで歪んだのか、どんな夢を叶えるために『少数派』にいるのか、それはわからねえ。 でもよ、もっと上手くやれなかったのかよ」
フン、と野崎は鼻で笑って
「もっと上手くやる、ねえ。 具体例も挙げずに身勝手なことばかり言いやがる。 煌の説法には、いつも浪漫が付きまとっている。 浪漫は虚実をより曖昧にする即効の毒だ。勿論、理想が実現したらどれだけ良いかなんてのは私も分かっている。 しかしね、理想なんてものは、手が届かないから理想なんだ。 君が宣う浪漫ってやつはな、見た目や聞き心地こそ良いが、その実、誇張と矮小化を悪用して物事を勝手に編集し、偽物ばかりを生み出し、希望を持たせるだけ持たせて現実を突きつける、美人局の如き悪の情熱なんだよ。 『少数派』はそういった悪心に抑圧されすぎた者たちの最後の居場所なんだよ。 私の前でつまらないことを言うな、折角の焼きそばパンが不味くなる」
こいつの自論の硬度は、相当なものだ。
きっと、オレなんかには想像もつかない苦悩に見舞われ、その度に頭を抱えて、その末に今の考えに辿り着いたのだろう。
野崎は『少数派』の任務を全うすれば、願いをひとつ叶えてもらえるのだと言っていた。混色なき現実を至上と信じ、気休めの理想から距離を置く彼は、一体どんな願いを叶えてもらうつもりなのか。
「なあ野崎、聞いてもいいか? お前が『少数派』で叶えてもらいたい願いってのは……」
「待て、人が来る」
オレを制止した野崎の視線は、校庭の人影に向けられている。
高身長でがっしりとした体躯に、薄く桃色がかったシャツの裾を肘までまくるその男は、オレの顔見知りだった。
「……やあ、神無月煌くん。 やあっーと見つけたよお。 この学校さあ、やけに広いね。 何度も迷っちゃってねえー、参ったよ」
「有様さん、どうして学校に?」
有様真司さん。
新国立博物館の一件の前からテロリストグループを追っている、三十路の刑事だ。
事件直後、聞き込みの為に多くの人がオレの病室を訪れた。 有様さんはその中でも、『少数派』や異能の力についての話を妄想だなんだと呆れず、真摯に聴いてくれた唯一の人だった。
「先日のテロの件で、教師陣に聞き込みをね。 そのついでだから、君に挨拶をしようかなあっーと思ってね。 ところで、隣の子はお友達かい」
その問いで、オレの立たされている今の状況が如何に非常事態なのか、やっと気がついた。
この場には、テロリストグループを追う刑事と、それに追われている犯人、そして脅迫され救いを求めることが出来ない被害者であるオレの三者が顔を合わせているのだ。
まるでドラマのワンシーンのような関係性が三人の間に繋がってしまった。
有様さんにこいつが犯人だと突き出してしまうのは簡単だが、さきほど釘を刺された通り、野崎に権能とやらがある限りは強硬手段を取られる可能性があるため、告発どころか怪しい動きひとつすら取ることは出来ない。
「どうもこんちわ、初めまして。 俺、有様真司。 実は例のテロリストグループについて捜査している刑事でね。神無月君とは少し前に知り合って、事件のことについて話を聞いたりとか、たまに協力してもらっているんだ」
「……刑事さん、ですか」
「そんな怖がる必要はないよおー。 俺は上のお堅い奴らみたいな、兎角事件解決至上主義なんかじゃない。 被害者や世間がどー考えてるのか、どんな形の事件収束を求めているのか、適切な事件解決後のサポート体制は、なんて風に、真の平和的解決の追求をすることがモットーなんだ。 つまり、今回の事件の被害者である君たちが、これまで通りの日常を送るために俺は捜査をしているんだよー。 だからさ、君たちにはクラスの友達感覚で、俺に接してもらいたいんだ。 雑談感覚で、事件のことを話してくれればいい。 それが、君たちのためにもなるんだよ」
その台詞を背中で聴きながら、野崎はこちらに睨みを利かせてきた。
そんな目をされても、有様さんと知り合ったのは事件直後の病室で、お前が転入してくるより前の話だった!
オレにはどう仕様もないじゃないか!
「……私は、野崎です。 煌のクラスメイトです。 この学校には転入してきたばかりで、噂の事件の頃はまだ転入準備の期間でしたから、あまり協力できることも少ないかも知れません」
「へえー、転入生か。 よくあんな事件があったのにこの学校に入る気になったね」
「転入自体は事件の前から決まっていましたから。 正直私も怖かったですけど、わざわざ別の高校に変更する手間を考えたら、面倒さが勝ってしまっただけですよ」
刑事の質問は、一見は穏やかでただの雑談の話題程度にしか思えないものばかりだが、二人の真の関係性を知っているオレにとっては、その問いのひとつひとつが、まるで鋭い刃を突きつけた尋問のように見えてしまう。
それを、皮一枚でスルリと避ける野崎。
聞いているオレも、これじゃあ気が気じゃない。
「それもそうかー。 ところで、その頭の包帯はどーしたの? そんなグルグル巻きにするってことは、相当な大怪我でも?」
まずい、野崎は事件後に転入をしている。
それは彼女がそう目の前で語ったばかりだ。
だからこそ、まずい。
事件に巻き込まれた生徒には負傷者もいたんだ。休み時間に廊下を歩けば、脚に包帯を巻いた者や、大きな四角の絆創膏を頬に貼り付けている生徒たちとすれ違うこともしばしば。
野崎の包帯量は少し、いや、かなり異常ではあるが、負傷生徒たちに紛れればそこまで大目立ちするほどのものではないはずだった。
しかし彼女は、事件には巻き込まれていないと既に語ってしまった後だ。
つまりそれは、頭の包帯の異常性を増大させる時間軸のズレを意味する。これをどう言い訳する気なんだ、野崎は。
「ああ、これは階段で転んだんです」
「ええ、階段で?」
「ええ、階段で。 転校前の学校で一回、自宅で一回、転入手続きをするためにこの学校に足を運んだ日にも大通りの歩道橋で一回、いや二回、ああ、それと今朝の登校中に校内で一回。 おかげで頭はボコボコです。 そんな顔、流石に転校初日からクラスの皆には見せれないと思って、少し多めに包帯を巻いているんです」
……く、苦しすぎる。
転入前だったけどたまたま事件に巻き込まれていて〜とか、前の学校でイジメにあっていて〜とか、それらしい言い訳を並べるものとばかり思っていたが、こ、こいつ、適当ぶっこいていやがる!
お前が包帯を巻く理由は、手前の権能で顔面を自傷しちまうからだろうが!
「こ、転んだ?」
「はい、転びました。 昔から運動神経が悪くて、とにかく転びやすいんです」
「そ、そうなんだ。 お気をつけて……」
まったく、肝が据わってるのか、ただの馬鹿なのか……、本当にわからない奴だ。
「ところで煌君、少し事件のことで見てもらいたいものがあってねー、いいかな?」
刑事はポケットからスマホを取り出して、何かを見せたがっているようだった。
事件のことと聞いた野崎はこちらを向いて、
「……煌、私は先に教室に戻ってるよ。 ほら、捜査のこととか、部外者が聞いたらまずいだろう?」
野崎の包帯の隙間から覗く目には、私を引き止めろという意思を感じた。
それもそうだ、本当は今すぐにでも逃げ出したい状況だろうが、彼女が去ったあとにオレが解きほぐされて、刑事に犯人の正体を告発してしまうかもしれない。
それを封じるために、彼女はここに居座りたいのだ。
どう立ち回るべきか、と考えている最中に有様が口を挟んだ。
「いいよそんなの、君も一緒に見てってよおー。 意見は多ければ多いほどいいもんだ」
「えっ、有様さん……。 そういうのって好きに見せちゃっていいものなんですか?」
刑事は顎髭を指先で少しいじったあと、
「まあー、いいんじゃない? 捜査の情報をおいそれと話すのは普通は禁止されてるけどさ、情報収集するには、それやんないと集まってこないし。 ま、上にバレなきゃいいんだよ。 これが俺流のやり方だ」
そう語ってから、彼はこちらにスマホの画面を見せた。
液晶には動画が一時停止されており、それは刑事の画面タップで再生開始された。
「この動画は、博物館の事件当日の映像だよ。 あの日、博物館周辺の全ての監視カメラと、館内にいた全員の携帯電話が、テロリストの妨害電波みたいなのでショートを起こして破壊されたってのは、ネットニュースでも知ってるよね? これは、その生き残りの映像。 この学校のとある女学生が撮影したものだ」
映像には床タイルばかりが映されていて、遠くにぼんやりと壁と大理石らしい柱の輪郭が見えなくもない、非常に見応えのない録画が記録されていた。
「勇敢な生徒さんだよ。 咄嗟に録画を開始して、学生鞄からカメラレンズだけが頭を出すように隠し撮りしていたんだ。 妨害電波のせいか、音はうまく入ってないし、映像もぼやけているけど、気になるものが映り込んでいるんだ。 ほら、この9分10秒のところ、みてみてー」
刑事がシークバーを動かすと、先程まで定位置で床ばかりを映していたカメラが急に揺れ動いたあと、以降は真っ黒な暗闇だけが録画されていた。
「テロリストたちは人質たちから鞄や荷物を取り上げて一箇所にまとめていたんだ。 警察への連絡や、想定していない展開を潰すためにねえー。 今のは、鞄が取り上げられたことで隠し撮りしていた携帯電話が底の方へ転がってったシーンだ」
有様は再び9分10秒へとシークバーを戻し、
「さて、この持ち上げられた瞬間、カメラは一瞬だけ定位置から上を向いた。 これをゆっくり再生していくとだねえー」
指の動きに合わせ、映像がコマ送りされていく。
「これだ、これが、一瞬映り込むんだよおー」
停止した映像には、白い石像のようなマスクを被った人物が映り込んでいた。
画質も荒く、揺れ動く中の静止画のため、それがしっかりと見て取れるわけではないが、顎の下まで続くアイボリー色の覆面は、本来覆うべきではない眼球部分すらも隠しており、特殊メイクにも見えなくはない。
「この撮影者に話を聞いたんだけど、その子も病室で煌君が話してくれたことと、同じことを話してくれたよ。 テロリストの中には、派手な仮面を被っていた奴もいたってねえー。 まるで海外の銀行強盗モノの映画かよって思うけど、どうやらこの映像を見る限り、現実で間違いないらしい。 他にも、カラスみたいなマスクとか、バイカーヘルメットみたいなマスクつけてるやつもいた。 そうだったよね、煌君?」
「は、はい。 オレが監禁されていた部屋に、そいつらはいました」
「顔を隠すだけなら全員統一で目出し帽でも付けてればいいのに、こんなものをわざわざ被るなんて、相当な目立ちたがり屋だよねえ」
野崎はこの仮面のことを、『少数派』の証と語っていた。
仮面は一人にひとつ。
そして、仮面には十人十色の異能の力が宿っているのだと。
誰に語っても信用してもらうことが出来なかった仮面の存在が、ついに証拠のひとつとして有力視され始めたのだ。
「煌君の話してくれた仮面の話と合わせて考えると、こいつらのマスクには、どうやらただ顔を隠す以外にも意味がありそうじゃない? そう、例えば、儀式的な意味合いとか」
「儀式的……?」
「うーんと、ほら、カルト宗教みたいなのがやるさ、魔法陣の上で生贄を捧げて踊るーみたいな? テロリストグループには、美術品の窃盗以外に、自分たちの集団で取り決めた儀式みたいなものを達成させる目論みがあったんじゃないかって考えてるんだ。 実際の現場にいた被害者目線で、この考察どう思う?」
「ええと、少し飛躍した話に感じますけど……、どうして急にカルトなんかが話に出てくるんですか?」
有様は携帯の画面を指さして、
「これ、このマスク。 ウチのパソコンオタクたちに解析させて、できる限り映像を鮮明に見えるよう調整した上で、調べさせたんだ。 素材は粘土や石膏に近いもので、顔の皺なんかまで型を取って忠実に刻まれた、超薄の再現人皮みたいなものらしくてね。 石膏マスクって呼ばれるものがヒットした。 人間の顔を型取り保存することで完成する、あくまで鑑賞品や展示品の類のものだ。 しかしこれが、一部の思想集団において聖なる死者を偲ぶ遺物、聖なる死面なんて呼ばれて、たいそう大事にされることもあるらしくてね、もしかするとテロリストの正体はそっち側のやつらなのかもと思ったんだが……、煌君にはパッと来てなさそうだねえー」
「あっ、いや、まあ可能性としては、あるんじゃないですか……?」
「わかってるよおー、よく同僚にも言われるんだ、いい年していつまでふざけた推理立てしてるんだってね。 俺の悪い癖だ、つまんないのが嫌いだからって、すぐに有り得もしない推論ばかり妄想する。 仕事が捗らないわけさあ」
有様さんは携帯を後ろポケットにしまって、
「でも、マスクに着眼点を置くのは間違いじゃないと思っている。 これだけ派手なことをするんだ、何らかのこだわりや癖は必ずあるはずだからねえー。 もっとこのマスクについて調べてみるよ、聞き込みもしなおさなくちゃね。 また意見聞かせてよ。 君も何か気づいたら教えてくれよなあー」
「はい、その時は」
「うん、よろしく。 新しいお友達君もよろしく。 煌君、彼女がもう転んで新しい怪我を増やさないよう、ちゃんと見守ってあげるんだぞ。 それじゃあまたあー」
有様が背を向けて立ち去り、やっと空気が弛緩した。 大きくため息をついたあと、野崎の様子を見ると、俯きがちな目線で何か考え込んでいる様子だった。
「……どうしたよ、あんな大それたことをやるお前でも、刑事を目の前にすると流石にか? ビビるもんなんてねえんじゃねえかって思ってたが」
「…………」
野崎はグルグル巻きの包帯を二本指で少しゆるめて、
「私は顔を隠しているし、声も低い。 それに、自ら好んで学校側に出願し、男子制服を着用している。 胸もそれほど大きくないから、容姿だけ見れば男子学生だと思われることが殆どだ。 転入生紹介の時、煌も驚いただろう? 私が女だと分かって」
「あ、ああ。 まあな。 でも、それがどうしたよ」
「初見では男子生徒、それが普通だ。 ボディラインを凝視したり、女子トイレに入るところを見られたり、生徒手帳を見られてやっと女生徒である可能性が浮上し、そこで初めて性別を問われ、遂に真相が判明する、これも正規ルートだ。 理解もできる」
オレと野崎はまだ出会って間もないが、それでも濃密なエピソードばかりで、幾分かはその仕草の癖や雰囲気を知っているつもりでいる。
だから、わかる。 彼女は少し怯えている。
「あの有様とかいう刑事、初見で私のことを彼女と呼んだんだ。 彼でも、野崎くんでもなく、彼女と。 私の無意識の仕草なんかで気がついたのかもしれないが、それでも初見で私を女生徒として呼ぶのは違和感がある。 私が女であることを知り、日頃からその認知の上で監視でもしてない限り、初見で私が女というイメージは定着しない。 つまり、あの刑事、私のことを調査対象として調べあげてきた上で接触してきやがった。 しかも、仮面の動画なんていう、顔色伺い用の特大ジャブも周到に用意した上でね」