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「シオン!目が覚めたのか!!」
扉を勢いよく開け放ち部屋に入ってきたのは高貴な服装の見知らぬ男と女だった。
(誰?!)
「無事で良かった……。しかし、大事な娘の顔に傷ができてしまってはこの先嫁の貰い手が心配ね……」
(娘?ってか嫁!?アタシまだ17なんだけど!)
「こんな時まで結婚の心配か!?ふざけるな!!」
「?!……そうね。貴方の言う通りだわ。こんな時まで私ったら……ごめんなさいシオン」
「大丈夫です、わ。……。」
「どうしたシオン。まだ具合が悪いのか?」
(この人親のことなんて呼んでんだっけ!一か八か呼んでみっか……。合っててくれ!)
「いえ!大丈夫ですわ!お、お父様、お母様!」
「………。おお、そうかそうか!!なら良かった」
(よっしゃアタリ!!)
「しかし、まだ安静にした方がいいだろう。私達は戻るよ」
そう告げると両親は部屋から出て行った。
扉を閉める最後の最後までこちらを心配そうに見つめていた父親を見るとこの人はかなり溺愛されていた事がわかる。
「とりま整理してみっか」
ー転生前の記憶ー
「おい!聞いてるのか七瀬紫音!」
国語科教師の森水の怒号で目が覚める。
「フガッ…え?なんて?」
「授業中に寝るな!!」
ピシャリと言い放つと黒板に向き直りぐりぐりとチョークで書き綴る。
が、怒りで筆圧が強まりそれに耐えられないチョークがボロボロと折れていく。そして森水の不機嫌さが増していく。
終了のチャイムが鳴り森水はブツブツと不満を漏らしながら教室を出た。
「いやー、最悪の授業だったね〜。皆ヒヤヒヤしてたよ」
「寝るな馬鹿」
「だって森水の授業つまらんし、寝る以外する事ある?それに今日は一段と眠気が凄くて」
「ってか、トイレ行こ。うちリップ塗り直したい 」
「アタシもトイレ行く。眠気覚ましに動こうかな」
3人で上の階のトイレへと向かうため教室を出た。
「てかうちらの階にトイレ無いのマジで終わってる。毎回昇り降りすんのダルい」
「それな」
前を歩く2人が目に映るも何故かぼやける。
そして急に襲い来る凄まじい程の眠気。
(やっべ眠む過ぎて2人の会話がよく聞き取れねぇ)
「………ね!紫音もそう思うよね!」
「え?」
次の瞬間アタシは段差を踏み外し滑って下へ転がり落ちた。
遠くから聞こえて来るのは友人2人からの呼び掛けだった。
「そして、目が覚めるとここに居たと……やっぱ死んだのかなぁ、 アタシ」
コンコンッ
(今度は誰?!)
身構えていると扉の向こうからメイドが呼びかける。
「お嬢様お医者様をお連れしました。入りますね」
部屋に入ってきたのは先程出て行ったメイドと老いた医者だった。
「お嬢様こちらはこの国で最も腕のいいお医者様でございます」
「お初にお目にかかります、リゲラルド嬢。 私ハリウド・ライドと申します。
町医者をやっております。
どうぞお見知りおきを」
「こんちわー」
「やはり!頭を強く打ったことで喋り方までおかしく!」
(は!つい…!)
「落ち着いて下さい。今から診察を行います」
10分後、触診と軽い診察を終え医者は軽い記憶喪失だと告げた。メイドは顔面蒼白で口に手を当てていた。
「しかし、生活に支障はありません。顔の傷も恐らく地面に割れたティーカップの破片で出来たものです。恐らく完治するまで早くて数ヶ月、遅くて…数年掛かります」
「そー………っすか……」
(やべぇ…一生治る気がしねぇ)
医者が去った後見送りから帰ってきたメイドは寂しげな表情を浮かべながら目の前にひざまついた。
「ちょ、やめてよ〜なに急に〜どした…?」
メイドは目に涙を浮かべらながアタシの手をぎゅっと握る。その手の温もりに妙に安心感を覚えてしまう。
「お嬢様が記憶喪失と知り、今もまだ混乱しております。旦那様や奥様…私のこともお忘れに…なって……」
「落ち着いてー、あ!ティッシュって無い!あ、ハンカチいる?一旦シンコキューしよか、ね?はい!ヒッヒッフー𝐬𝐚𝐲!?」
「?ヒッヒッフー」
「そうそう、ヒッヒッフーヒッヒッフー」
「ヒッヒッフー…ありがとうございます。少しだけ落ち着けた気がします」
(良かった。ここでラマーズ法が役に立つとは)
「私はお嬢様が幼き頃からずっとお嬢様の専属メイドとして仕えてきました。」
メイドはアタシの知らないシオンとの思い出やこの家のことを語ってくれた。
「しかし、こうなってしまった以上また一から信頼を築けるよう尽力致します! 」
「よろしく。えっと〜」
(名前なんだっけ)
「私はシーナ・リエンと申します。お嬢様の専属メイドでございます」
「よろしくシーナ」
「はい、お嬢様」
この出会いから次々と困難が降りかかることを、当時の私はまだ知る由もなかった。