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人気者の晃河くんは俺の恋人 13話 嫉妬
明日香はそう言って2人を凝視した。

明日香が颯人に頭を撫でられているのを見た晃河は、明日香と目が合ってそっぽを向く。そんな晃河を見て、莉久は席を立ち、晃河の元へ寄る。


「どうしたの。そんな怖い顔して。彼女と喧嘩でもした?」


「してないよ。ちょっとムカついてるだけ」


「そう。でも、そんな怖い顔したらせっかくの可愛い顔が台無しだよ?」


「可愛い?俺が?」


「うん。ほら、こうしたらもっと可愛いよ」


そう言って莉久は晃河の頬を両手でむにむにと触る。


「ちょっちょ、やめれりょ」


ほっぺを触られて上手く喋れない晃河を見て、莉久はふふっと笑う。


「全然喋れてないじゃん。可愛いな〜」


そう言いながら莉久は晃河のほっぺを触り続ける。


「やめれっれ」


「いいじゃん。昔からこういうことしてんだからさ〜」


莉久はわざと明日香に聞こえる声で言った。

それを聞いた明日香の表情が曇る。そんな明日香は、颯人に問う。


「あの二人っていつから仲良いの?」


「さぁ。俺は高校で初めて2人と会ったから。でも、1年の時2人と同じクラスだったけど、元々仲良い感じだったよ」


「そうなんだ」


(じゃあ、結構前から仲良いのかな…)


明日香の心のモヤは大きくなる。その時、ふと「晃河」と聞こえ、近くで喋っていた女子達の会話に耳を傾ける。


「ほんと仲良いよね、あの二人」


「仲良いって言うか、良すぎる!莉久くんなんて晃河くんのほっぺ触りながら可愛いとか言ってたし」


「友達の距離感じゃないよね〜。もしかして、付き合ってたりして!」


「え〜!やばい!それめっちゃ推せる!2人ともイケメンだからお似合いだし!」


「わかる!お似合い〜!こがりく?りくこが?推せるね〜」


そんな2人の会話を聞いて、明日香はイラッとした。


(なんだよ。推せるって。大体こがりくでもりくこがでもなくあすこがだし…)


そんなことを考えている明日香に、颯人は言う。


「ちょっと明日香、顔に出しすぎ。すごい顔してるよ?」


「えっ」


「そんなに嫉妬したの?」


「いや、そうじゃなくて…まぁ、嫉妬もしたけどさ、女子達があの2人のことお似合いだの推せるだの言うからな?かムカついて」


「え?そんなこと言ってたの?いつ?誰が?」


「さっきだよさっき。そこの女子達」


明日香はそう言って女子達をチラッと見る。


「へぇ〜。何。盗み聞き?」


「別に聞く気はなかったけど聞こえてきたの」


「ふ〜ん。それで?2人がお似合いって言われてて嫉妬してんだ」


「うん、まぁ…そう」


「なにそれ。結局嫉妬じゃん。可愛いんだけど〜」


颯人はそう言って明日香の頬を両手でむにむにと触った。


「なに。莉久のまね?」


「真似は真似だけど、言ったことは本心だよ?」


「それって、俺が可愛いっていうのは本心ってこと?」


「うん。そうだけど?」


「やめろよ。晃河みたいなこと言いやがって」


「だって本当に可愛いんだも〜ん。ほら、よしよ〜し」


そう言って颯人は明日香の頭を撫でる。


「ちょっと颯人。やめろって」


明日香は颯人の手を掴んで、頭から離れさせる。そんな二人を見て、さっきの女子達は嬉しそうに騒ぐ。


「やばい。ここにもカップルいたんだけど」


「はやあすだね!」


そんな2人の会話を聞いて、明日香の表情が曇る。


「ちょっと颯人。なんか俺たちくっつけられたんだけど」


「やったね。俺たちもカップル認定じゃん」


「よくね〜よ。晃河は俺のだし俺も晃河のなの」


そんなことを言う明日香の元へ晃河が来る。


「なに?明日香。今のもっかい言ってよ。ちゃんと颯人に聞こえるように」


「今颯人に向かって言ったんだけど」


「だめ。もう1回言ってよ。明日香は俺のだってちゃんと分からせないと。ね?」


晃河はそう言いながら明日香の頭をゆっくりと撫でる。


「わかったよ…」


明日香は颯人の目をまっすぐ見て言う。


「颯人。晃河は俺のだし、俺は晃河のだからね?」


「はいはい。俺の負けだよ」


そう言って颯人は明日香から離れ、両手をあげる。そんな颯人を見て、晃河はニヤッと笑う。そして、明日香に視線を戻す。


「よくできました」


そう言って晃河は明日香の頭を撫で、席に戻った。そんな晃河を見送った後、颯人は再び明日香に近寄る。


「いや絶対晃河がタチだろ」


「またその話?俺がタチだよ」


「嘘だ〜。今の見て明日香がタチなんて誰も思わないって」


「まぁ、別にどうでもいいけどさ。晃河は自分がタチって思われてる方がいいと思うし」


「たしかに。莉久は可愛いって言ってるけど、晃河が可愛いなんて思ったことないし。あんなのただのイケメンじゃん」


「莉久ね」


明日香は不機嫌そうにそう言う。


「あれ?もしかしてまた嫉妬?も〜。可愛い〜」


颯人はそう言って再び明日香の頭を撫でる。


「ちょっ、もう。いい加減にしてよ」


「いい加減に…撫でようか?」


そう言ってまた頭を撫でようとする颯人の手を明日香は掴む。


「さっきの聞いてた?俺は晃河のなんだって」


「別に明日香が誰のだろうと関係ないし。頭撫でてるだけでしょ?」


「頭を撫でるな。どうしたんだよ急に。冬休み会えなくて寂しくなっちゃったんですか〜」


「そうだっていったら慰めてくれんの?」


「いや…それは…」


明日香は、そこで口を噤む。


「なに?」


颯人がそう言った時、チャイムが鳴った。颯人は諦めたように椅子ごと席に戻った。

そしてその後、1日中颯人は明日香に、莉久は晃河にちょっかいをかけていた。帰りのホームルームが終わり、明日香と晃河は学校を出る。しばらく歩き、人気が無くなってきたところで晃河が言う。


「ねぇ明日香。なんか今日、颯人と距離近くなかった?」


「あぁ…なんか颯人がめっちゃくっついてきてさ。急にどうしたんだろう」


「俺の明日香って言ってんのに全然辞めないし」


「ほんとに。でもさ、そっちだって莉久となんか距離近くなかった?」


「まぁ、莉久とは元々あんな感じだから…高校入ってからそういうのなかったのに、また急にやり始めたけど」


「なに。莉久とはいつからの付き合いなの?」


「小学校だけど」


「へぇ〜…じゃあ結構長い付き合いなんだね」


(なんか悔しい)


明日香はそう思い、少し怒った表情になる。そんな明日香を見て、晃河が言う。


「あれ。なんか怒ってる?」


「いや、怒ってはないけど…なんか悔しくて」


「悔しい?」


「うん。莉久が晃河と長い付き合いなんだな〜って」


「えっ。それって嫉妬?」


「そうだけど」


「へぇ〜」


晃河はそう言ってニコニコと笑っている。そんな晃河を見て明日香が問う。


「なに。そんなににやけちゃって」


「明日香も嫉妬するんだなって」


「するよ。嫉妬くらい」


「え〜?明日香が?嫉妬?」


そう言って晃河は再びニコニコ笑う。


「そんなに意外?」


「うん。意外!可愛すぎる!」


「可愛い…」


その言葉で明日香は朝のことを思いだし、ボソッとつぶやく。


「晃河の可愛いは俺だけなのに…」

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