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夫とだけはしたくありません

26 - 第26話 遠藤との会話、父の気になる行動

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2024年11月13日

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3人でランチを楽しんだ後、成美は“仕事に戻るからお先に”と帰って行った。


遠藤とまた二人きりになったけど、成美がいたおかげでさっきまでの緊張は消えていた。


成美からはLINEで、さっきの若い子はいなくなったと報告があった。


_____もう大丈夫ってことね


成美の機転に感謝して、あと少しのこの時間を楽しむことにした。


「いいお友達ですね、杉山さんは。仕事もできて楽しい女性だ」


遠藤が成美を褒めたことが、うれしいのと悔しいのとごちゃ混ぜになる。


それでも、遠藤の前では私はいい人になりたいから成美を悪く言うことはしない、本当にいい友達なのだから。


「はい、彼女は前向きで楽しくて、いつも助けてもらってます」


嫉妬の感情を知られたくなくて、私も成美を褒めた。


「岡崎さん?」


「はい?」


「類は友を呼ぶとか、朱に交われば赤くなるって言葉、ありますよね?」


「はあ……」


「だからきっと岡崎さんも、杉山さんのように前向きで素敵な女性ですよ」


「……!」


面と向かってそんなことを言われて、顔が赤くなって恥ずかしくて俯いてしまう。


「すみません、直接、“岡崎さんは素敵な女性ですよ”と言うのが恥ずかしくて」



_____きゃーーーーっ!!


わかってる、社交辞令だということは、でも。


「いや、あの、私なんてただの専業主婦ですし、成美みたいに仕事もできないですから」


「仕事はきちんとやってくれてますよ。ミスが少なくて助かってます。それに……」


私を見て何か言おうとした遠藤は、コホンと軽く咳払いをして目を逸らした。


「それに?ってなんですか?」


「いや、こんなこと言うのはどうかと思ったので」


「言ってください、気になりますから」


「そうですね、じゃあ……。最近、いいことでもありましたか?特に今日は雰囲気が違う気がして。あ、いい意味で、ですよ、もちろん」


_____気づいてくれてた?


ほんの些細なことなのに、私のことを見てくれてたことがとてもうれしい。


それは“あなたに会えるからです”と言いたかったけれど、コーヒーカップを持つ遠藤の薬指に残る指輪の跡を見たら、言えなかった。




ランチを終え、これから先の仕事の話を少しした。


「パワーポイントなどもできるなら、そちらの仕事もお願いするのですが」


「会社員の時はやってましたが、今は自信がないです。でも、やってみようかな?」


「ぜひ、お願いします。そうすると単価も上がりますし」


昔やっていたとはいえ、どんどんバージョンアップされてるはずだからついていけるかわからない。


それでも、退屈な主婦業ばかりよりずっとワクワクする。


単価が上がれば、それだけお給料も増えて貯蓄もできそうだ。


いざとなったら、自分で生きていくという覚悟にもなる。


_____いつ、離婚を切り出されても、離婚したくなっても慌てずに済む


父親が母に向かって言っていたセリフ“誰のおかげで暮らしていられるんだ?”を、雅史が言うことがあっても、卑屈になることはない。


「ぜひ、やってみたいです」


「わかりました、では次の仕事に入れてみますね」






ランチを終え、圭太を迎えに実家へ向かう。


途中にあるコンビニの駐車場に見慣れた車があり、中にはスマホを操作する父がいた。


「あれ?お父さん?」


近寄って声をかけた。


「あ、あぁ、杏奈か。どうしたんだ、うちに用か?」


慌ててスマホをしまう父。


「お母さんに圭太を預けてるから、迎えに行くとこ。って、お父さんこそ、こんなところで何してるの?」


考えてみたら、圭太を預けに行った時には父はもう出かけた後だった気がする。


「喉が渇いたからな、飲み物でも買おうと寄ったところだ。乗って行くだろ?」


「うん、ありがと。ジュースは?」


「いや、もう飲んだところだ」


なんとなく違和感があったけれど、深く訊かないことにした。


“わざわざ知らなくてもいいことも、たくさんあるのよ”


いつだったか、出かける父を送り出した後、そんなことを言う母を思い出したからだ。


一旦会社を定年退職した父は、今は後進の指導者として不定期で出社しているらしい。


「どこか、行ってたのか?」


「うん、お友達とランチしてきたとこ」


「いいなぁ、そんなことを許してくれる雅史君は、優しい旦那さんだな」


「お父さん?それくらい普通でしょ?お母さんも自由にさせてあげてよ、今までお父さんを支えてきたんだから」


「……あぁ、わかってる」



ぴこん🎶


《さっきのランチの写真、SNSにアップしといたからね》


成美からだった。








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