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攻🐉×受🔝の捏造まみれのジヨタプ小説。ご本人様たちとは全くの無関係。
今回はそれぞれの視点から見た🐉🔝。
いつも以上にご都合主義の矛盾まみれ解釈違いもろもろですので要注意。たくさんの愛はある。
相当な覚悟の上読んでくださる方はそのままお進みください…!
side.ヨンベ
ジヨンとの付き合いはもう何年になるだろう。
まだ大人になる前から一緒にいて、共に活動をして、ステージに立って、苦楽を分かちあってきた。苦しいこともつらいこともたくさんあって、それでもそれら全てがいい思い出だったと思えるほど幸せな瞬間を何度もこえてきた。
でも、彼のこんな顔を見たのは初めてだった。
「………ジヨン、」
俺は、人が本当に悲しくてつらくてどうしようもないほど苦しいときに、全ての感情が抜け落ちてしまったかのように表情がなくなってしまうんだということを、彼に教わった。
トップがグループを抜けることは、俺たちメンバーも突然の知らせだった。
最後に4人で歌った曲も、MV撮影はバラバラの日にちでそれぞれ場所で撮影したから、顔を合わせてはいない。互いにソロ活動もあったしなかなか会えないことも多かった中、「話がある」と事務所に呼び出され行った先にはジヨンとテソンがいた。久しぶり、と声をかけあって近況報告をしながらも、俺はなんだかそわそわと落ち着かなかった。座ったソファの、おしりのあたりがムズムズするような、背筋がぞわぞわするような、そんな感覚。きっと俺だけじゃなく、2人もそうだったように思う。
「…なんですかね、話って」
突然訪れた沈黙を嫌がるように、テソンが声を上げた。みんなが思っていても触れられなかったこと。みんなが何よりも気になっていて、そしてこの落ち着かない感覚の原因がきっとこのことだということ。同時に、なんでかはわからないけど、きっとこの話は俺たちにとってあまりいい話ではないだろうということ。
なぜか俺は、分かっていた。
トップがもう俺たちと共に活動をしないことを、淡々と告げられた。衝撃を受けたのに、同時になんとなく分かっていたのが不思議だった。
マネージャーが席を外したあとも、俺たちはずっと黙っていた。なにか話さなければ、そう思ったときに、ふと隣の彼が気になった。本当にそこに存在するのか分からなくなるほど静かな彼が。声をかけようと横を向いた時に、俺は息を飲んだ。何度も見慣れた横顔なのに、まるで初めて見たような顔だった。全ての感情がなくなってしまったかのように、無表情で、まるで陶器の人形がそのにあるかのような、呼吸すら感じないような。
「……ジヨン、」
人が本当にショックを受けたとき、耐え難いほどの苦しみを感じたとき。怒るように眉を釣り上げるでも、驚愕にその瞳を揺らすでも、悲しみに顔を歪めるでもなく、それら全てを忘れてしまったかのように表情が消えてしまうことを、初めて知った。
「……なに?」
こちらも見ずに彼は答える。それはまるで声というより音がその口からこぼれ落ちたように聞こえた。
「…………大丈夫か?」
なにが?と聞かれたらそれまでだった。けど、どうしても聞かずにはいられなかった。
「……」
彼がゆっくりとこちらを見て、そして眉を下げて微笑んだ。何も言わずに。
個人的な意見になってしまうが、俺から見て、ジヨンとトップは少し特殊な関係だったと思う。いや、特殊と言っては語弊があるかもしれない。
彼らはもちろん仲が悪かったわけでもないし、普通に話すしたまに互いの家を行き来しては酒を飲んでいたという話も聞いたことがあった。
それでも常に一緒に過ごしているかと聞かれればそうでもない。トップはどちらかと言えばテソンにベッタリだったし、ジヨンはスンリや俺と共にいる時間の方が多かったと思う。
でもなぜか、2人には他にはない別の空気が漂っていた、気がする。友達とも家族とも違う。互いの欠けた部分を補い合って、それが隙間のないほどぴったりと合わさるような、2つの色が混ざりあって1つの色になるような。神秘的で、他が容易に触れてはならない聖域のようでもあった。
それはファンやスタッフ含め周りが勝手に崇めて作り上げた2人のイメージかもしれない。でも言葉にするのは難しくとも、俺も同じように感じていたし、なにより2人もそれがまるで当たり前のように自然だった。
俺は2人を見ると、常にそういった感覚に囚われていた。そして、ジヨンの感情のなくなってしまった顔を見たとき、唐突にそれを強く感じた。自分の身体の半分がなくなって、人間の形を保てなくなってしまったかのように見えたのだ。
(これから、どうなってしまうんだろう)
俺たちは。
そして、ジヨンは。
side.テソン
今まで僕たちの歌は、全てジヨンが作詞をしてきた。詩とは、ただの言葉でありながらも、表現や言葉回しでその人自身が表されるものだと思っている。
ジヨンの書く、特に恋愛系の歌は、失恋に悲しむものが多かった。好きなのに別れなければならない悲しみや苦しみ、別れてしまった後悔、離れてしまっても願う相手の幸せ。その表現の仕方に毎回驚かされていたし、この歌をみんなに届けるには、胸に響かせるには、どう歌ったらいいか考えるのが好きだった。
解散、ではないけれど、3人になってしまった僕らは実質活動休止という形で、それぞれソロの活動に勤しんでいた。でも、昔のように毎日顔を合わせることはなくなってしまったけど、互いの活動を誰よりも応援し合っていたし、言われずともソロ曲はチェックしていた。
しばらく歌を出していなかった彼。そんな彼が沈黙を破るようにリリースされた新曲。ファンが待ち望んだ彼の歌。僕はその衝撃を忘れない。
『今日も月が綺麗だね』
『ねぇ元気にしてるかな』
『ところでなんで離れていったの?』
『君のいない世界がこんなにも寂しいなんて知らなかった』
『僕たちって似てないところが多いのに、まるで2人で1つだったみたい』
『君がいなくなってから、僕は呼吸の仕方も忘れちゃったよ』
『ねぇ元気にしてるかな』
『ところであのキスはどんな意味だったの?』
『僕は知っていたよ、でも怖くて気持ちを伝えられなかった』
『僕たちって周りから強い人だと思われてるのに、本当はすごい弱虫の臆病者』
『あのとき僕が言った言葉、君は覚えてるかな』
『ねぇ全部許すからさ』
『一つだけお願いがある』
『早く僕の元へ帰っておいで』
『ただいまって言って、その笑顔を見せて』
『そしたら今度は、ちゃんと言うね』
『好きだって言うよ』
『好きだって言うからさ』
『君のただいまを聞かせてよ』
『今日も月が綺麗だね』
散りばめられた言葉に、気づけば鼻の奥が痛くなって慌てて上を向いた。目の奥が熱い。彼が、こんなにもストレートに愛を伝えたことがあっただろうか。たくさんある言葉や表現の中から、こんなにも真っ直ぐに。
みんなはきっと、この歌詞の真相を知らない。でも僕は、知っている。この話を随分と前に、聞いたことがあったから。
それはいつだったか。トップと2人で飲んでいたときのこと。彼はお酒が大好きでたくさん飲むから、いつも最後にはべろべろになっていた。
でもその日は、いつもと少し違った。酔いが回るのが早く、割と早い段階で潰れかけていたのに、ふと影が差し込むような顔をする。その大きな瞳が湿って、焦点が合ってないような顔で、それでもどこか冷静な部分を持ち合わせているような不思議な表情だった。
「タプヒョン、今日ちょっと変ですよ」
「はあ?変ってなんだよ」
「いいから、水飲んで」
「水なんていらない!お酒!もっと!」
どうしたものかと呆れる。まるで駄々をこねる子どもだ。酒を飲んでる時点で立派な大人なんだけど。
「あーあ。あー……くふっ。あはは、」
突然意味もなく母音を発していたな、と思うとふと笑い出す。肩を揺らして、面白そうに笑っている。
「……タプヒョン?」
「く、はは……はーあ。まったくさ」
「……」
彼はグラスに残っていたワインを一気に流し込んだ。そして空になったそれをゆっくりと置くと、頬杖をついてどこか遠くを見つめた。空中を睨みつけるような強い瞳なのに、その奥には全てを諦めているかのような憂いと、もどかしい悲しみの色が混ざっていた。
「……月が綺麗だね、だってさ。そんなんで、伝えた気になってんじゃねーぞ、ばーか」
そのときは意味が分からなかった。でも、ジヨンの歌を聴いた今なら分かる。
そんな意味があったのか、と。
これは彼に向けてのメッセージだったんだ、と。
僕から見て、2人はとても不思議な関係だった。互いに干渉しない性格で程よい距離感を保っているように見えるのに、ふとした瞬間に溶け合って混ざり合って1つになってしまうようにも見える。友達とも家族とも違う。決して自分が触れてはならないような領域。いつもそんな感覚に囚われる。
(ジヨンヒョン。タプヒョン。あなたたちは今、なにを考えていますか。なにを思っていますか)
一人で。独りで。
きっとその心を覗き込んでも、僕にはなにも見えないんでしょうね。
side.ジヨン
その日はよく晴れた日だったから、雲ひとつない綺麗な夜空だったのを今でも覚えている。
「久しぶりにどうかな、いいワインが手に入ってよ」
そう言いながら乾杯するような仕草を見せたトップの誘いに、俺は笑顔で頷いた。最近忙しかったから、彼と2人で酒を飲むのは本当に久しぶりだった。
彼の家は彼にピッタリのシックな作りで、芸術肌を感じさせる、細かい部分まで拘りのあるもの。黒が基調の部屋に、手の込んだお洒落な家具、綺麗に並べられたグラスとお酒。どこか生活感のないような雰囲気なのに、とても心地良い。
「乾杯」
チーズやナッツをツマミに俺たちは酒を飲んだ。音楽の話から仕事の話、最近あったできごとや面白かったもの、この前行ったレストラン。お互い口数が多い方ではないのに、いつまでも話題がつきないから不思議だった。
気付けば彼は3本目の赤ワインを開けようとしていて、さすがに俺も酔いが回ってふわふわだ。お腹も程よく満たされ眠いと思いながらも、まだ永遠に飲めるような気もしていた、そんなとき。ふと隣に座る彼の匂いが鼻腔をくすぐった。散々並んでソファに腰掛けて話していたのに。
「たぷひょん、」
自分でも、なぜそのとき突然そうしたのか分からない。でも、自然な流れでもあった気がする。名前を呼んで、こちらを見た彼の頬を優しく撫でて、ゆっくりと顔を近づけて。そして、当たり前のようにその唇を塞いだ。彼も一切拒まなかった。まるでそうなることが分かっていたかのように、俺たちは静かにキスをした。
子どものような口付け、ただ唇と唇を合わせただけのそれ。しばらくそうしていたあとに、ゆっくりと離れる。視界に見えた彼はいつも通りの顔をしていて、互いに驚きも困惑もなかった。
「………なんだよ、急に」
そう言って彼は小さく笑った。なにそれ。急にって、急じゃなかったら疑問にも思わないってこと?面白いね。
「…んー」
ふと、窓から見える月の方を向いた。釣られて彼もそちらを見る。雲ひとつない夜空に浮かぶ、淡く光る満月。
ああ、この気持ちをどう伝えようかな。
「…月が綺麗だね」
君は知ってる?この言葉の意味。
昔日本でさ、ILoveYouをそう訳した人がいたんだって。すごい綺麗だと思わない?直接的な表現じゃないのに、大きな愛に満ち溢れたような、美しくて透明な言葉。きっと君は知らないよね、この言葉にどれほど俺の気持ちが重なってるか。
彼は何も答えずに、ただ小さく微笑んだ。
事務所に呼び出されて、トップが抜けると聞いたあとのことを、正直よく覚えていない。突然足元に大きな穴があいて、そこにゆっくりと落ちていく。何も見えない真っ暗闇に包まれたような気がして、そしてそこには悲しみも怒りも苦しみもなにもない、「無」だけがあった。
気付けば自分の家についていて、ベッドに転がっていた。見慣れた天井、視界には入ってるのに何一つわからない不思議な感覚。自分は今生きているのに、心臓も何もかもなくなって抜け落ちたような感覚。何も感じないし何も聞こえない何も見えない。
なのに、なぜかあの唇の感触だけは、リアルに覚えているなんて。
気付けばあの歌ができあがっていた。歌詞を書いた記憶なんて全くない、久しぶりにリリースする新曲。
「…君のただいまを聞かせてよ」
口ずさみながら窓を開ける。今夜は雲が多くて、月がよく見えないな。
「今日も月が綺麗だね」
君が好きだよ。
side.トップ
「また、その歌うたってるの?」
「…ぇ?」
隣から覗き込むように俺を見ながら姉が言う。しばらくの休み、俺は実家に帰って過ごしていた。さっきまで一緒に遊んでいた姉の子どもも疲れてしまったのか今は眠りの中。ソファに腰かけながら、さして興味もないテレビをボーッと見ていた。
「……俺、なんか歌ってた?」
「あらやだ無意識?」
クスクスと姉が可笑しそうに笑う。はい、と俺にお茶を差し出しながら、洗濯物を終えた姉も隣に腰掛けた。
「今だけじゃないよ。帰ってきてから、ふとした時に口ずさんでる。それ、最近リリースされたジヨンさんの歌でしょ?」
ジヨンの歌詞を見たとき、なんとも言えないたくさんの感情が一瞬にして身体を駆け巡ったのを今でも覚えている。それが頭の先から全身に回って、そしてそのまま全て表に出ていってしまったのか、そのときから心が空っぽだった。
「………うん」
全てを裏切ってしまった。ファンも、メンバーのみんなも、彼も。
なぜあのとき、ジヨンが俺にキスをしたのか。
久しぶりに2人で飲んだ夜、よく晴れた日で月明かりが部屋を照らす夜。3本目のワインを開けようとした最中、彼に突然キスをされた。彼の顔が近づいてくるのが酷くゆっくりに感じて、止めることも避けることもできたのに。俺はしなかった。気付けば目を閉じて、自然と受け入れていた。そこには驚き困惑もなかった。合わさった唇は、ぴったりと重なって、まるで初めから1つだったような気がするほど。
「………なんだよ、急に」
自分で言ってて可笑しくなった。これじゃまるで急じゃなかったら良かったみたい。でも実際にそうだったのかもしれない。あまりにも自然すぎて、それが当たり前のような口付けだったから。
「…んー」
ふと彼が窓の方を向いた。そこには雲ひとつない夜空に浮かぶ、淡く光る満月。
「……月が綺麗だね」
「また歌ってる」
隣で姉が笑った。俺はどう答えていいか分からなくて、曖昧に微笑む。流れていたバラエティ番組はいつの間にかニュース番組に変わっていて、穏やかに流れる時間の中、なんだか自分だけが一歩も動けずに、置き去りにされた気分になった。ゆっくりと目を閉じる。真っ暗で何も見えない。身体が軽くて、空っぽになったみたい。その暗闇が、今は心地いい。
「……ふは、なんだそれ」
俺が笑えば、ジヨンも楽しそうに笑った。3本目のワインをあけて、空になったグラスに注ぐ。酔いも回ってふわふわする。寝てしまいたいのに永遠に飲んでいたいような、不思議な感覚。
「そんな回りくどい言い方じゃなくて、はっきり言えば?」
「え?」
「俺が好きだって」
そう言えば、彼は驚いたような顔をしたあと、その目を細めて嬉しそうに微笑んだ。
「…なんだ、やっぱりこの言葉知ってたんだ」
「当たり前だろ」
「じゃあちゃんと言うね?」
俺、タプヒョンのことがさ、
「ちょっと、」
ハッとして目を開いた。持っていた湯のみが少し傾いていて慌てて持ち直す。
「寝るならベッド行きなよ。座ったまま寝たら身体痛くするよ?」
あとこぼさないでね、と言い残して姉がキッチンに消えていった。時計を見ると、ほんの数分だが寝ていたらしい。
「……夢、か」
あまりにもリアルで、夢との境界線があやふやだったけど、間違いなく夢だった。だって現実の俺は、あんな言葉を返していない。臆病者で弱い俺は。夢の中でなら素直になれたのに。実際はあのあと、彼の言葉を曖昧に流して終わったはずだ。
「……君のただいまを聞かせてよ」
ただいま。
俺にそれを言う資格はない。