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LUNA
96
#ハイキュー
もちもちうさぎ@限界生命
17,533
「あと五分」
「なんで?」
「なんとなく」
あまりにも素っ気ない返事に、思わず呆れた顔をする。
「……意味わかんない」
「うん」
「うん、じゃないでしょ」
国見くんは机に頬杖をついたまま、窓の外を眺めている。
放課後の教室には、私たち二人しかいない。
もう帰ってもいい時間なのに。
「先帰れば?」
「……え?」
「待っててって言ったけど、別に待たなくてもいいし」
「じゃあ最初から言わないでよ」
「それはそう」
淡々と返されて、思わず笑ってしまう。
ほんと、この人は何を考えてるのかわからない。
「……あと5分だけだからね」
「ん」
仕方なく、私は自分の席に座り直した。
静かな教室に、時計の秒針だけが響く。
なんとなくスマホを眺めてみたり、鞄の中を整理してみたり。
でも、隣にいる国見くんのことが妙に気になってしまう。
「……ねえ」
「なに」
「ほんとにあと5分?」
「たぶん」
「たぶんって何」
「時間見るのめんどい」
「……もういい」
そう言いながらも、席を立つ気にはならなかった。
結局、5分が過ぎても私たちは教室にいた。
「……もう5分過ぎたよ」
「そっか」
「帰らないの?」
「帰る」
国見くんがようやく立ち上がる。
鞄を肩にかけて、教室の出口へ向かう。
その後ろを、私もついていく。
「……待ってた意味あった?」
廊下に出たところで聞くと、国見くんが少しだけ振り返った。
「あった」
「……なんで?」
一瞬だけ、目が合う。
だけど国見くんはすぐに前を向いてしまった。
「なんとなく」
「またそれ?」
「うん」
そう言って、国見くんは少しだけ歩く速度を落とした。
私が隣に並べるくらいに。
夕方の廊下を、二人で歩いていく。
――なんとなく。
その言葉の意味を、このときの私はまだ知らなかった。
コメント
2件
フォロー失礼します!
結月さん、第3話読ませていただきました🌷 「なんとなく」って言葉ひとつで、ここまで空気感を描けるんですね。国見くんの素っ気ない返しと、それに呆れつつも席を立たない主人公の距離感が、夕方の教室のひそやかな時間にぴったり合っていて、すごく好きです。最後、歩く速度を落とすところで「あ、この子なりに気遣ってるんだ」って伝わってきて、胸がじんわりしました。続きが気になります!