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ある日曜日の朝。瀬島家はわくわくとした顔でなにやら動いていた。瀬島陽馬(せじまようま)、瀬島春馬(せじまはるま)、瀬島玲香(せじまれいか)とその両親の、瀬島桂馬(せじまけいま)と瀬島よしこの一家だ。末妹の玲香は生まれたばかり。春馬は1歳で陽馬は二歳。子育ても慣れてきたので、三年ぶりに猫を飼うことにした。今、家には盲導犬引退犬のバルダがいる。バルダは子どもたちのよき姉として、遊び相手となっていた。しかし、老犬なので疲れてはいけないと、新しいお兄ちゃんを迎えることにした。
ある日、子どもたちを連れ、譲渡会へ行った。しばらくすると、夫の桂馬がよしこの元に小走りで来た。「あら。どうしたの?陽馬は?」よしこが聞くと、桂馬は頭をかきながらいった。「その、さ、陽馬が気に入った子がいて、その子のそばを離れないんだ」「そうなの?じゃあ陽馬のところへ行こう」よしこはそう言ってベビーカーにいる冷香と春馬の元へ行った。
「陽馬」よしこが言うと、くるっと陽馬が振り返った。「陽馬。その子が気に入ったの?」コクっと陽馬は頷くと視線をケージの中にいる猫に移した。
中にいたのはキジトラ猫だった。右耳をV字形にカットされているさくらねこだ。ケージ越しに陽馬の指先をペロッと舐めている。その子のケージの上を見ると、「人が大好き甘えん坊!」と書かれていました。名前はハリー。そのプロフィールの左下にはQRコードがあり、ハリーの過去がわかるというのです。よしこはポーチからスマホを取り出し、見てみることにしました。
ハリーは多頭飼育崩壊現場にいたキジトラ猫だった。ハリーは多頭飼育崩壊現場の家主の猫ではなかった。「この猫はうちの猫じゃない」そう言った。そして「その子は近所のばあさんがうちに置き去りにしていったんだ。」と続けた。
ハリーは人は嫌いではなかった。だが、家主から聞くと、大切にされておらず、ただ餌と水を置くだけだった。だから人との甘え方を知らず、ほんの少しだけ警戒してしまう。
右の足先は血が滲んでおり、きれいなキジ模様は砂とほこりで薄汚れていた。
ハリーは、ボロボロの状態で、多頭飼いされていた他の猫たちと同様、「大事にされる」という経験がなく、人との接し方も甘え方など知るよしもなかったのだ。
だが、保護した後のハリーは驚くほどの甘えん坊となり、みんなの人気者となった。
ただ、プロフィールを読んで、家族に迎えられるかも!と思っていたが、プロフィールの途中、「ハリーは猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)のキャリアです。」と書かれていた。桂馬も気づき、スマホで検索を始める。それでわかったのは、
「ストレスや体調に気をつけていれば、発症せずに寿命をまっとうする猫も多い」と出てきて、ハリーの預かりさんの多田密子(ただみつこ)が、「猫エイズの子も普通の猫と変わりませんよ」といってくれた。それで瀬島家はハリーを家族にと申し込んだ。
もう一人、ハリーに里親を申し込んだ人がいたが密子は瀬島家を選んでくれた。そしてなんとも奇跡なことに、「お見合いの日なんですけど、9月30日はどうでしょうか?」と言った。9月30日は陽馬の誕生日だ。そして、お見合いが無事終わり、トライアルに入る日は、「10月4日はどうでしょう」と言った。10月4日は陽馬の出産予定日だったのだ。あまりの偶然に、よしこは涙が出たほどだ。
トライアル。ハリーは初日は緊張気味だったものの、すぐに慣れ、家族、ことに陽馬にはデレデレだった。陽馬はハリーを迎えてからというものとても優しく、賢い子になりました。ただ、春馬にはあまりやさしくしませんでしたが。
密子は、瀬島家なら、ハリーを幸せにしてくれる。そう信じて密子は瀬島家にハリーを託した。
「新しい名前は何にしますか?」密子に聞かれると、間髪入れず陽馬が言った。「月馬がいい!」「つきま?よく思いついたねえ」密子はしゃがんで陽馬を見た。
そしてハリー改、月馬は家族になった。ちょちょっといたずらしても、それがかわいいとみな喜ぶ。月馬は家族となって幸せになったのです。二匹目を迎えるときは保護猫にしようと瀬島家は今も話し合っているそうです。
あとがき
みなさん、最後まで見ていただき、ありがとうございます。ところでみなさん、犬猫殺処分を知っていますか?捨てられたり、捕獲された犬猫を「ドリームボックス」という機械に入れ、二酸化炭素で窒息死させることです。
しかし、犬猫は何もしていません。そして、捨てられてもなお、死んでもなお飼い主を信じて待ちずづけます。そんな子たちを、裏切るなんてことはしてはいけません。人としてありえないと言ってもいいでしょう。
犬猫殺処分について、知ってるよ、知らなかった、など、なんでもいいので感想あったらコメント下さい!
では、ありがとうございました