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ショコラ🐤
68
#キャラ崩壊注意
stpr 緑赤 様
誤字脱字注意
日本語おかしい
第4話 先生じゃなくて
それから数日。
こえは、少し変だった。
大学にいても。
講義を受けていても。
友達と話していても。
ふとした瞬間に、ゆうのことを考えてしまう。
「……」
スマートフォンを見る。
ゆうとのトーク画面。
最後に送られてきたメッセージは、三日前。
『また時間が合ったら、ご飯行こうね』
たったそれだけ。
なのに。
こえは何度も読み返していた。
「……会いたい」
小さく呟く。
その瞬間。
「こえー?」
「うわっ!」
隣から友達に声をかけられて、こえは飛び上がった。
「な、なに?」
「さっきからスマホばっか見てない?」
「……見てない」
「いや見てたでしょ」
「……」
こえは黙った。
「もしかして彼女?」
「違う!」
思わず大きな声が出る。
「じゃあ彼氏?」
「ち、違う!」
「なんだよ、顔赤いぞ」
「……もういい」
こえは机に突っ伏した。
彼女でもない。
彼氏でもない。
ただ。
好きな人。
そう言えるほど、まだ勇気はなかった。
*
その日の夜。
こえは思い切ってメッセージを送った。
『ゆうさん、今週どこか空いてますか?』
送信。
既読はすぐについた。
けれど。
返信は来なかった。
「……」
五分。
十分。
三十分。
一時間。
こえはスマートフォンを握ったまま、ベッドの上で丸くなった。
「……忙しいのかな」
そう思おうとした。
けれど。
胸の奥が、嫌な方向へ考えてしまう。
――もしかして。
何か、嫌なことをした?
――距離を置かれてる?
――昔の教え子と会うのは、やっぱり迷惑だった?
「……やだ」
自分でも驚くほど、声が震えた。
目の奥が熱くなる。
泣きたくない。
もう子どもじゃない。
そう思っているのに。
涙が一粒、頬を伝った。
そのとき。
スマートフォンが震えた。
『ごめん。返信遅くなった』
こえは慌てて画面を見る。
『今週はちょっと仕事が忙しくて。来週なら時間取れるよ』
その文章を読んで。
こえは大きく息を吐いた。
『よかった……』
思わず、そう打ち込んでしまう。
送る直前。
慌てて消した。
そして。
『じゃあ来週、お願いします』
送信。
すぐに返信が来る。
『うん。楽しみにしてる』
こえはスマートフォンを胸に抱いた。
「……よかった」
今度は。
泣きながら笑った。
*
一週間後。
待ち合わせ場所に現れたゆうは、少し疲れていた。
「ゆうさん」
「こえくん。待った?」
「今来たところです」
「そっか」
ゆうが笑う。
けれど。
こえには分かった。
「……疲れてます?」
「え?」
「ちょっと顔、疲れてる」
「そんなに?」
「はい」
「そっかあ」
ゆうは苦笑した。
「保育園、今ちょっと忙しくてね」
「……大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
「無理してません?」
「してない、してない」
そう言って笑う。
こえは少しだけ不安になった。
「……じゃあ今日は、ゆっくりしましょう」
「え?」
「僕がゆうさんを休ませます」
「ふふ」
ゆうが笑う。
「こえくん、大人になったね」
「……子ども扱いしないでください」
「あ、ごめん」
「僕、もう大学生ですよ」
「そうだね」
ゆうは少しだけ目を細めた。
「本当に、大きくなった」
その言葉に。
こえの胸が、少しだけ痛んだ。
――まただ。
ゆうは自分を「昔のこえくん」として見ている。
かわいい教え子。
それ以上じゃない。
そう思った。
*
二人は静かな公園を歩いた。
ベンチに座って、コンビニで買った飲み物を飲む。
「……ゆうさん」
「ん?」
「僕って、昔どんな子でした?」
「またそれ?」
「知りたいんです」
「そうだなあ」
ゆうは少し考える。
「泣き虫」
「……」
「照れ屋」
「……」
「ちょっと寂しがり屋」
「……」
「でも、すごく優しい」
「……それ、褒めてます?」
「もちろん」
こえは少し笑った。
「あとね」
「はい」
「ゆうさんのことをすごく信頼してくれてた」
「……」
こえは黙った。
「ゆうさんがどこかに行こうとすると、すぐ追いかけてきて」
ゆうが笑う。
「『ゆうせんせー、どこいくの』って」
「……」
「ゆうさんが戻ってくるまで、入口で待ってたり」
「……そんなに?」
「うん」
こえは俯いた。
「……好きだったんですね」
「うん」
「先生のこと」
「たぶんね」
「……」
こえは拳を握った。
「じゃあ」
顔を上げる。
「今の僕は?」
「え?」
「今の僕は、ゆうさんにとって何ですか?」
ゆうが黙った。
こえは自分でも驚くほど真剣だった。
「……こえくんだよ」
「それだけ?」
「……」
「昔の教え子?」
ゆうは答えなかった。
こえは少しだけ笑った。
「やっぱり、そうですよね」
「こえくん」
「大丈夫です」
立ち上がる。
「分かってましたから」
その瞬間。
ゆうがこえの手首を掴んだ。
「待って」
「……」
「ごめん」
ゆうは困ったような顔をしていた。
「今のゆうさんには、ちゃんと答えられない」
「……どうして?」
「こえくんが昔の教え子だから」
その言葉に。
胸を刺されたような気がした。
「……そっか」
こえは笑った。
「じゃあ、僕が悪いんですね」
「違うよ」
「でも」
「違う」
ゆうの声が少し強くなる。
「こえくんが悪いわけじゃない」
「……」
「ゆうさんが、ちゃんと整理できてないだけ」
ゆうは手を離した。
「ごめんね」
こえは何も言えなかった。
*
帰り道。
二人の間には、少し距離があった。
いつもなら隣を歩いているのに。
今日は数歩分離れている。
駅が近づく。
「じゃあ、またね」
ゆうが言った。
「……はい」
「気をつけて帰ってね」
「……ゆうさんも」
こえは背を向けた。
歩き出す。
けれど。
数歩進んだところで。
「……待って」
振り返った。
ゆうがこちらを見ている。
「こえくん」
「はい」
「……少し時間が欲しい」
「……」
「ちゃんと考えたい」
こえは黙っていた。
そして。
「分かりました」
笑った。
「待ちます」
「……ありがとう」
「でも」
こえは一歩だけ近づいた。
「僕、諦めるとは言ってないです」
「……」
「僕、ゆうさんのことが好きです」
言った。
とうとう。
ちゃんと言葉にした。
ゆうは目を見開いた。
「……こえくん」
「昔の先生だからじゃない」
こえの声は震えていた。
「今の、ゆうさんが好きです」
涙が滲む。
「優しいところも」
ぽろり。
「僕のことを覚えててくれたところも」
もう一粒。
「一緒にいると安心するところも」
こえは涙を拭った。
「全部、好きです」
ゆうは何も言わなかった。
こえは笑った。
「……返事は、今じゃなくていいです」
「……」
「でも、嘘じゃないです」
それだけ言って。
こえは駅へ向かった。
今度は振り返らなかった。
*
帰宅したこえは。
部屋に入った瞬間、ベッドに倒れ込んだ。
「……言っちゃった」
顔が熱い。
心臓が痛い。
恥ずかしくて。
怖くて。
それでも。
「……言えてよかった」
泣きながら笑った。
もう隠さない。
昔の自分がどんな気持ちだったのか。
今の自分がどんな気持ちなのか。
全部。
ちゃんと伝えた。
*
一方。
ゆうは駅前に一人で立っていた。
こえの姿はもう見えない。
けれど。
さっき聞いた言葉が。
頭から離れなかった。
『今の、ゆうさんが好きです』
「……」
ゆうは目を閉じる。
昔の記憶が蘇る。
小さなこえ。
泣きながら自分の服を掴んでいた。
その子が。
今は自分の目を見て。
一人の男として。
好きだと言った。
「……ゆうさんは」
ゆうは胸元に手を当てる。
そこが。
少しだけ苦しい。
こえが他の誰かと一緒にいるところを想像すると。
嫌だと思った。
こえから連絡が来ないと。
気になった。
こえが笑っていると。
嬉しかった。
こえに触れたとき。
もっと近くにいたいと思った。
そして。
今日、こえが自分から離れていこうとしたとき。
無意識に手を掴んでいた。
「……」
それは。
先生としての感情なのか。
それとも。
もっと別のものなのか。
ゆうには、まだ分からない。
けれど。
ひとつだけ。
はっきりしていることがあった。
「……失いたくない」
小さく呟く。
そして。
その言葉を口にした自分自身に。
ゆうは初めて気づいた。
――もう。
ただの「昔の教え子」ではないのかもしれない。
*
数日後。
ゆうからメッセージが届いた。
『こえくん』
『はい』
『今度、会えないかな』
こえの心臓が跳ねる。
『会いたいです』
すぐに返信した。
しばらくして。
『よかった』
そして。
『話したいことがある』
その一文を見つめて。
こえは息を呑んだ。
もしかしたら。
これで全部終わるかもしれない。
それとも。
何かが始まるのかもしれない。
分からない。
でも。
次に会うとき。
二人の関係はきっと。
今までとは違うものになる。
そんな予感がした。
コメント
1件
みぅです🤍🥀 こえくん、ついに言っちゃったね…!「今のゆうさんが好き」って、あの場面でちゃんと伝えられたの、すごい勇気だと思う。泣きながら笑うところ、胸がぎゅってなったよ。ゆうさんの「失いたくない」って気づきも、先生と生徒じゃなくて一人の人間同士として向き合おうとしてる感じがしてドキドキした。次に会うとき、二人の関係がどう変わるのか待ちきれない…!