テラーノベル
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朽ちかけた礼拝堂の天井から、真っ赤な三日月が覗いていた。その光は、かつて神を祀った大理石の床を不気味な血の色に染めている。そこに蠢くのは、総数二十体を超える醜悪な肉塊――生ける屍たちだった。
先頭に立つ一体だけが異質だった。他のゾンビが本能のままに呻いている中、この男だけは口元を歪めて嘲笑っていたのだ。それはゾンビでありながら理性を持った異常個体――”ゾンビ長老”とでも呼ぶべき存在だった。
「さあ来いよ、薄汚れた魂食らい」長老は嗄れた声で挑発した。「お前の使うのは『喰魂』だろ? 死者の魂を啜って力を得る外道魔法……だが今日でおしまいだ」
対峙するのは、闇に溶け込む漆黒のローブを纏った魔道士。顔の半分は焼けただれ、右腕は骨まで見えるほど肉が剥げ落ちていた。彼こそが王国を追放された禁術使い、闇の魔道士ギルガメスだった。長い前髪の下でぎらつく隻眼は、目の前の”死んだ獲物”を見据えていた。
「ふん……知った風な口を」ギルガメスはかすれた笑い声を漏らし、両手で印を組む。「ならば見せてやろう! 貴様らがどうして地獄に逆らえないのかを!」
突如、腐敗臭が一気に濃くなる。ギルガメスの足元から黒い霧が噴き出し、瞬時に広がってゾンビ軍団を包囲した。霧の中から無数の骸骨の手が伸び、次々とゾンビ達の足首を掴む。
「何だこれは!」長老が慌てて命令する。「動け! 奴の術を振り払え!」
しかし霧の力は凄まじかった。掴まれたゾンビたちは骨の手に引きずられ、地面に這いつくばる。皮膚から出た白骨が露わになり、叫び声を上げるのも束の間、次の瞬間には内側から爆ぜるように肉体が弾けていた。飛び散る臓器と腐敗汁が祭壇に降り注ぐ。
「喰魂・連鎖破砕式」ギルガメスの口元が吊り上がる。「死者同士が争えば必ず犠牲が出る……そしてその痛みは瘴気となって新たな餌食を求めるのだ」
ゾンビたちが次々と自滅していく。だが長老だけは違った。他の個体とは桁違いの耐久性を見せ、骨の手を引き千切りながら前に進む。
「貴様……本当に死者を弄ぶのが好きなんだな?」長老の目が怪しく光った。「だが忘れてないか? 私たちは常に増殖する……永遠に!」
突然、長老の背中が裂けるように盛り上がり、そこから新たなゾンビの頭が突き出した。さらに別の腹から二本の腕が伸び、ギルガメス目掛けて襲いかかる。
「分裂再生……なるほど!」ギルガメスは即座に対抗魔法陣を描いた。「ならば一つ残らず喰らうまでだ!」
彼が描く魔法陣の中心で、巨大な歯を持つ髑髏が現れる。それは地面ごと引き剥がすように周囲のゾンビ達を吸い込み始めた。腐肉の塊が螺旋状に飲み込まれていく光景は、まさに地獄絵図だった。
しかしその時――。ギルガメスの喉奥で苦痛の呻きがこみ上げた。喰魂の反動が彼自身を蝕んでいるのだ。禁術使用による魔力消耗と、引き換えに得た寿命の代償。彼の身体は急速に崩壊しつつあった。
「ぐふっ……」吐血しながらも魔法は止められない。その隙に分裂した長老の片割れが爪を突き立て、ギルガメスの左肩を引き裂いた。「やはり限界があるようだな、魔道士よ!」
均衡が崩れる刹那、朽ちたステンドグラスが轟音とともに砕け散った。月光を遮るほどの大量のコウモリの群れが侵入し、空間全体を覆う。
「邪魔をするか……!?」驚愕するギルガメスの耳に、高慢な笑い声が響いた。
「いや、良いショーだったぞ。闇の同胞よ」
ステンドグラスの穴から黒衣の人影が滑り降りてくる。彼こそが隣国の大司教にして邪法結社の幹部――サファイア・ブラックウッドであることを誰もが悟った。
「残念だが……君の力は我が組織が必要とする」ブラックウッドの瞳孔が縦に細くなる。「協力しないなら、今ここで君の魂も狩らせてもらう」
闇夜の戦いは思わぬ方向へ転換しようとしていた。喰われるか、喰うか。それとも第三の選択肢を選ぶのか――廃墟に立ち込めた腐臭と鉄錆の匂いの中、決断の時は迫っていた。
コメント
3件
おつかれさまです!!🎀✨ いやもう、第1話からぶっ飛ばす展開すぎて息止まりかけたよ😭💕 朽ちた礼拝堂に真っ赤な三日月、剥げ落ちた魔道士の姿、ゾンビ長老の理性的な笑み…もうね、ビジュアルがバチバチに映える!! 喰魂・連鎖破砕式の演出もえぐカッコよすぎて「うわぁ…!」って声出た。で、禁術の代償で吐血しながらも戦い続けるギルガメス・推せる予感しかしないんだけど…!!🖤最後にブラックウッド登場で一気に世界観広がったよね~続きが待ちきれない〜⋆♡
麗太
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🐬しぅ💚
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