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R-18『SとMの境界線。【腰が休まらない】優しい恋人とのSM初体験、その後』~m×s~
side佐久間
長時間のロケがようやく終わり俺たちは泥のように疲れた体を引きずってスタッフが手配してくれた宿泊先へと向かった。
見知らぬ土地での撮影は想像以上にハードで朝早くから夜遅くまでカメラの前に立ちっぱなしだった。
蓮も俺も車に乗り込んだ瞬間から無言になるくらいには体力を消耗していてただ早くシャワーを浴びてふかふかのベッドにダイブすることだけを考えていた。
けれどナビに案内された場所に到着して俺たちは思わず顔を見合わせた。
ネオン管がチカチカと怪しく光り「HOTELL’AMOUR」という筆記体のロゴがデカデカと掲げられたその建物はどう見ても普通のビジネスホテルではなかった。
入り口にはすだれのようなものが垂れ下がっていて駐車場は一台ずつシャッターが下りるシステムになっている。
「……ここって」
「……どう見てもラブホだね」
スタッフの手配ミスだろう。
地方のロケではたまにあることだと聞いたことはあったがまさか自分たちがその当事者になるとは思わなかった。
とはいえ今から別のホテルを探す気力も体力も残っていない。
俺たちは恋人同士だし同じ部屋に泊まること自体は日常茶飯事だから場所がどこであろうと問題はないのだけれどさすがにこの独特の雰囲気には少し気圧されてしまった。
フロントを通らずに自動精算機でチェックインを済ませ指定された部屋のドアを開けるとそこにはさらに強烈な空間が広がっていた。
部屋の中心には無駄に大きな円形のベッドが鎮座しており天井には鏡が張られている。
照明は薄暗いピンク色で壁にはベルベット調の赤い布が張られていた。
お風呂場はガラス張りでベッドから丸見えの構造になっている。
「うわぁ……すごい部屋」
「うん、なんか落ち着かないね」
蓮は苦笑いしながら持っていた荷物を床に置いた。
俺も靴を脱いでとりあえずその円形ベッドに腰を下ろしてみる。
スプリングがやけに柔らかくて体がふわりと沈み込んだ。
疲労感と非日常感が入り混じってなんだかおかしなテンションになってくる。
部屋の中を見渡すとサイドテーブルの上に普通のホテルには絶対に置いていないようなものが並べられているのに気がついた。
綺麗に包装されたアメニティの横に黒い革製の小さなトランクのような箱が置かれている。
好奇心に駆られて俺はその箱に手を伸ばした。
「佐久間君、それ何?」
「分からない。なんか置いてあったから……開けてみるよ」
カチャリと金具を外して蓋を開けると俺は思わず息を呑んだ。
そこには黒い革でできた鞭赤い蝋燭そして不気味なほど艶やかな黒いロープが綺麗に整頓されて収められていた。
他にも目隠し用のアイマスクや用途のわからない金属製のクリップのようなものまである。
「うわぁ……」
「……マジか」
蓮も俺の隣を覗き込んで絶句している。
テレビや映画でしか見たことのないような本格的なSMグッズの数々。
こんなものが普通に部屋に常備されているなんてこのホテルは一体どういう層をターゲットにしているのだろうか。
俺たちはしばらくの間その箱の中身を無言で見つめていた。
恥ずかしいような見てはいけないものを見てしまったようなそわそわとした空気が二人の間に流れる。
「……SMってどうなんだろ」
沈黙を破ったのは俺のそんな一言だった。
自分でもなぜそんなことを口走ったのかわからない。
ただ目の前にある非日常的なアイテムたちが俺の中の好奇心を少しだけ刺激したのだ。
蓮は驚いたように目を丸くして俺の顔を見た。
「どうって……佐久間君、興味あるの?」
「いや、興味っていうか……痛いのは嫌だけどこういうのって信頼関係がないとできないって言うじゃん?俺らならどうなるのかなってちょっと思っただけ」
言い訳のように早口で捲し立てる俺を見て蓮は少しだけ考えるような素振りを見せた。
彼の黒い瞳が箱の中のロープと俺の顔を交互に見つめる。
普段は真面目で誠実な蓮だけれどベッドの上では時々俺がドキッとするような独占欲を見せることがある。
もし蓮がこのロープを手にしたらどんな顔をするのだろう。
そんな想像が頭をよぎって急に心臓の鼓動が早くなった。
「……やってみる?」
蓮の低い声が静かな部屋に響いた。
冗談かと思って彼の顔を見るとその瞳は真剣そのもので冗談を言っているようには見えなかった。
俺はごくりと唾を飲み込んで小さく頷いた。
「うん……ちょっとだけなら」
俺の返事を聞いて蓮は箱の中から黒いロープを手に取った。
革製の鞭や蝋燭はさすがにハードルが高すぎるけれどロープで縛るくらいならまだ遊びの延長として楽しめるかもしれない。
蓮はロープの感触を確かめるように両手で軽く引っ張ってみている。
ナイロン製なのか少し光沢のあるそのロープは見た目よりも柔らかそうだった。
「じゃあ、佐久間君……仰向けになって」
「うん」
言われるがままに俺は円形ベッドの上に仰向けに寝転がった。
天井の鏡に自分の間抜けな姿と蓮の真剣な顔が映っているのが見えてなんだか無性に恥ずかしくなってくる。
蓮はベッドの上に膝立ちになり俺を見下ろした。
いつもより少しだけ熱を帯びたその視線に射抜かれて俺の体は自然と強張った。
これから何をされるのかどうやって縛られるのか。
未知の体験に対する恐怖と期待が入り混じって指先が微かに震える。
蓮は俺の右手をそっと取ると手首にロープを巻きつけ始めた。
「痛くない?」
「うん、全然痛くない」
蓮の手つきは拍子抜けするほど優しかった。
ロープが肌に擦れる感触はあるけれど締め付けられるような苦しさは全くない。
むしろ壊れ物を扱うかのような慎重な手つきにくすぐったさすら覚える。
蓮は俺の右手首にロープを巻き終えると今度は左手首を取り同じように丁寧にロープを巻きつけていく。
「きつくない?擦れて痛かったらすぐ言ってね」
「うん、大丈夫。蓮、すごく優しいな」
「だって佐久間君の肌に跡が残ったら嫌だし……痛い思いさせるのも嫌だから」
真剣な顔でそう言う蓮を見て俺は思わず吹き出しそうになった。
SMというのはもっとこう支配と服従というか無理やり縛り上げて身動きを取れなくするものだと思っていた。
けれど今の蓮の縛り方はまるで俺に怪我をさせないように保護しているかのようだ。
両手首を緩く縛られた後蓮は俺の足首にもロープを巻き始めた。
ここでもやはり「痛くない?」「苦しくない?」といちいち確認しながらふんわりとロープを絡めていく。
天井の鏡に映る俺の姿は一応ロープで縛られてはいるものの少し力を入れれば簡単に抜け出せそうなほど緩い拘束だった。
「……蓮、これじゃあSMじゃないね」
「え?そう?」
「うん。優しすぎるもん。全然身動き取れるし」
俺が両手足を動かして見せると蓮は困ったように眉を下げた。
「でもこれ以上きつく縛ったら佐久間君が痛いかもしれないじゃん。俺、佐久間君が痛がるの見るの無理だよ」
「ふふっ、蓮らしいよ。でもなんかこれはこれで楽しいかも」
続きは、pixivにて同タイトルで公開中です。
よかったらR-18『SとMの境界線。【腰が休まらない】優しい恋人とのSM初体験、その後』で検索してみてください。
※最初から最後まで甘く、濃く、容赦なく。読み応えたっぷりのR-18作品となっております。
コメント
1件
読ませていただきました……。 ラブホの非現実的な空間に、SMグッズの箱。好奇心に駆られて口にした一言から始まる、優しくて切ない実験みたいな時間が、すごく繊細でドキドキしました。とくに蓮さんが「痛くない?」って何度も確認しながら縛るところ、あれがもう愛おしさでいっぱいで……SMのイメージが全然変わりました。 続き、すごく気になります。素敵な作品をありがとうございます🌙