さてさて、どうしようかな…。
どうやらこの子に“おはなし”の現場を見られてしまったらしい。それはもうしっかりと。
気を失ってる今が怖い思いをせずに殺してあげれるしなぁ…んー。
「…や〜めた!」
何故なら…始末書を作成するのが非常に面倒だからだ!!
とりあえず抱えて部屋を出る。
近づいたらわかったけどこの子“混じってる”
「この様子じゃあ、大変だろうなぁ〜」
きっとニンゲンと同じ“場所”じゃ馴染めないだろうに…。
…背後から激しい足音。敵か?
「“みんな”拘束してくれる?」
ボソリと呟くと自分の足元から影が蠢いて後方へ向かう。
「イィダバァァ!?!?」
「アレ?」
拘束した瞬間にすごく聞き覚えのある声が聞こえてきて、慌てて来た道を戻る。
あちゃあ…。
そこには触手によって逆さ吊りにされているレウさんがいた。
「わー、ごめんね…レウさんだったとは」
離してあげて、と言うとスルスルと触手は影の中へ消えてしまった。
「いてて、あ!コンちゃん、男の子見なかった?ちょっと雰囲気鋭い感じの子!!」
…見たも何も。
「この子?」
今まさに抱えてるんだけどね。
「あ!その子!!…その子がらっだぁが言ってた“あの子”かもしれないんだよねぇ」
おや、それは初耳だ。
「そうなの?連れてくカンジ?」
「うん!あ、俺が預かるよ?コンちゃん仕事終えたばっかで疲れてるでしょ??」
そう言って手を出してくるレウさんの優しさにほっこりしつつ、そんなに疲れてないから安心して?とやんわり断る。
レウさんも最近仕事詰めで忙しくしていたから、少しでも楽をさせたいし。
「ほら、行こ行こ〜」
「わかった!」
らっだぁのいる部屋の前で声をかける。
「らっだぁ、いる〜?開けてもいーい?」
部屋に入るには必ず声をかけてからじゃ無いといけない。俺達は大丈夫だと言っているのだが、らっだぁ自身が“食事”を見られたく無いのだとか。
気にしなくてもいいのになあ…。
「んぁ…?こん、ちゃん……?」
しばらくの沈黙の後、ふわふわとした声が返って来た。
あ、これは寝てたな…。
「入るよ〜?」
案の定らっだぁの前髪は寝癖でぴょこんと跳ねている。
「らっだぁ〜…寝るなら布団で寝てよぉ…」
過保護なレウさんはここでも持ち前のお母さんっぷりを発揮して、らっだぁの寝癖を整えている。
「ねぇ、コンちゃん…その子……!」
幾分はっきりした声で俺が抱える男の子を指差すらっだぁ。
「うん、迷い込んできたっぽい。それにこの“面”ちょっと前に紛失した物だよね?」
男の子のつけている面を指先でトントン、とつつく。
面はこの世界と人間の世界…“現世”を繋ぐ物 面は世界の境界。紐は境界と境界を結ぶ橋。
…とされている。原理はよくわからない。
その辺に詳しいのは“彼”だろうが、きっと今頃現世をウロウロしているのだろう。
「…生きてたんだ。また会えたね」
「昔会ったことあるの?」
レウさんの言葉にちょっと昔にね、と懐かしむような目をするらっだぁ。
「とりあえず…起きるまで放置だね!」
畳に置こうとするとレウさんが慌てて止めてきた。なんかあった?と聞くと驚いたようにありまくりだよ!!と返される。
「いやいや、気絶してるんだからさぁ!?もうちょっとちゃんと寝かせてあげよう!?」
…それもそうか。
今度はレウさんが引っ張り出して来た布団の上に寝かせた。
「良い夢見てね〜」
どうも、チェシャで御座います。
きょーさん最近よく寝ますねぇ。
今回はコンちゃん視点。
よく一人称と三人称の視点がごちゃ混ぜになってしまうチェシャで御座います。
また次回。