キスだけにして。
*
*
「…今日はだめっ」
「今日だめな日?」
「駄目な日」
「…久しぶりに会えたのに?」
「ごめん」
頬に優しくキスが降りた。
「謝んなくていいよ」
近づいていた顔が離れて隣に座る。
「ちょっと残念って思っただけ」
「急に始まったんだよね…」
「体調大丈夫?」
「うん、それは平気」
「なら、よかった」
肩を抱きよせられる。
「悟…」
「んー?」
「エッチしたかった?」
下から見上げた顔に唇が降りてきた。
「んっ…」
顎に手をかけられ口が開き、舌が滑り込む。
「…ふぁ…」
歯の裏側をなぞるように。
「…舌、出して」
少しだけ舌先を出す。
「もっと」
「ん…」
「もっと、出して」
息苦しくなりながら、懸命に舌を伸ばした。
「良い子」
その舌に自身の舌をからませる。
「んっ、あ」
五条の両手が耳を塞いだ。
外の音を遮断されたことで、ぴちゃぴちゃとたてる卑猥な音が脳内で響く。
「エッチな音、するでしょ」
角度を変えながらわざとらしく音をたてる。
「…ふっ…」
「飲んで」
口内に熱を持った唾液が流れこむ。
「ん…っく…」
口の端から溢れて零れそうになる。
「ほら、ちゃんと飲んで」
舌がそれをからめとる。
まるで子供のようにすがって、飲み干した。
「よくできました」
頭をくしゃくしゃに撫でられる。
「欲しくなって困るね」
五条は少し笑いながら天井を仰いだ。
「欲しくなった?」
「もちろん」
額に頬に繰り返しキスをする。
「これ以上したら、襲っちゃう」
「だ、だめっ」
「わかってるって」
綺麗な顔は口元に意味深な笑みを浮かべていた。
「できるようになるまで」
キシッと座っていたソファが鳴る。
「キス責めね」
そのまま覆い被さって、目の前を彼だけしか見えないようにした。
今だけ
キスだけにして
欲しがって
良い子にして