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俺が走馬灯から目覚めて落ち着いた後くらいだろうか、blood戦参加メンバー(messiahを除く)は指揮の部屋に集められていた。
messiahは回収できなかった、と指揮が零しているあたり、おそらく今も何らかの戦いに巻き込まれているか、それか計画の首謀者に詳しい話を聞いているかだろう。
ともかく、指揮はどうやら重要な話をするらしい。
指揮の部屋は男共3人と女1人が入るには狭いから、広い所で話そうとも言ったのだが、万が一bloodに聞かれるとまずいと言うことで、身体をぎゅうぎゅうにしながら指揮の部屋に集まった次第だ。
指揮は、俺達が部屋に入り切り、ドアを閉めたのを確認すると、話を切り出した。
「第一回!blood対策会議ー、いえーい!パチパチパチー!」
「お前そういうキャラだっけ??」「……キャラとか言わないでください……」
「そもそも効果音を口で言うなよ」「編集とか知らないんですか」「かっ……火力が……」
「……ゴホン、今回皆様を集めたのは他でもありません、」
「blood対策会議だろ?」「なっ……なぜそれを!?」「自分で言ってただろ」「記憶とかないんですか」「う……」
「ーーもう能力使いますからね!!早く会議を始めましょう!!」
「で、結局何を話すんだ?」
「はい。まず前提として、bloodの戦力が現状不明です。おそらく、戦うまで能力も強さも分からないでしょう。唯一分かっていることは、神化人であることからとても強力だろう、ということのみです」
「情報戦の時点で負けてるのか。当然、bloodに俺達の能力はバレてるだろうしな」
「かなり不利な状況ですね」「ですから、このようにして会議を開かせていただいたのですけれども」
「ーーそこで、皆さんと一緒に作戦を考えたいのです。私一人で考えてもみたのですが、それが実現できるのかどうか、無理な話ではないか確認したくて」
「お前単体でも作戦があるのか、なかなかやるじゃん」「どうも」
「まずその作戦についてなんですが、私の考えとしてblood戦は全員が役割を全うできないと勝利はもらえないと思います。誰か一人でも動けない人がいたら、負ける可能性が高いでしょう。そのために、皆さんの役割を考えてみました」
「まず、messiahさんと星斗さんは火力担当ですね。二人ともかなり高い威力の技を撃てます。ただ、messiahさんの能力には現状謎が多いんですよね」
「禁忌の能力、だっけか。何が禁忌なんだろうな」
「衣川さんによれば、圧倒的な破壊力を持つ上にネームドの同士討ちが可能になってしまう点から危険と判断され、通常は得ることのできない能力らしいですね。今回はなぜかそれが配られてしまったと」
「そうなると、代償も不明なんでしょうか」
「はい、というか概要が不明ですね。私たちが能力を貰った時に出てきた説明文がないらしいですし、一回tear相手に撃った時も『黒い腕のようなものが出てきて、tearを一撃で殺してしまった』ということのみを覚えていて、その辺の意識はもうろうとしているんだとか。今でも夢のように感じるらしいですね」
「こわ」「ですよね。ただ、その火力は魅力的ですし、連発せずに不味そうな時だけ打つ感じでいかがでしょうか」
指揮のその答えに、異を唱える者は誰もいなかった。
「……となると、メインアタッカーは俺か」
「はい、星斗くんに一存する形になります」
「でも俺は溜めないと撃てないぞ、タメなしも練習してみたけど、なんか……カスみたいな火力だった」
「それが問題なんですよね」
「主力にするには手数が少ないかもってことですか」
「溜めてる間に攻撃されたら本末転倒だぜ」
「じゃあ誰がアタッカーすんの?」
俺が発したぶっきらぼうな問いに、指揮は少しトーンを下げて話し出した。
「まず、星斗さんとmessiahさんは無理です。それから私も、能力的に無理ですよね」
「仕切る能力でどうやって攻撃する、って話だよな」
「俺様はどうなんだ?」
「うーん……バグを追加する能力の概要がいまいちよくわからないんですが、システム面に入り込めるって意味で解釈していいんですかね?」
「大体それで合ってます。即死とかはできないらしいんですけど、能力とかをバグらせたりもできるとか」
バグの意味をよく分かってない天竺に代わり、小指が簡単に問いに答える。
その答えを聞いた途端、指揮は飛び上がるように立ち上がり、両手を挙げて万歳のような動きをした。
なんか今日のこいつの動き(言動含め)、やけに子供だな……
「それです!!それ!!」
「「「何が????」」」
「それで!!やれば!!いける!!!!」
「「「いや、何が????」」」
「ぃやったー!!!」
「「何がって言ってるだろ!!!」」
「あ……すみません……ついテンションが上がってしまいました……」
「それどころじゃない上がりっぷりだったな」
「……で、俺様の能力がどう生きるんだよ」
「能力をバグらせられるってことは、今他の人についてる能力も変えれるってことですか?」
「どうだろ。どうなんだよ、小指」
「僕なんですか……でも実際、出来るんじゃないですか?」
「本当に!?」「なんで今日そんなにテンション高いんですか……」
「まあ小指が言うなら、できるんじゃね?」
「よしよしよしよし!!じゃあ私の作戦は成功しそうです!」
「その作戦を教えてもらうか」
指揮は、改めて椅子に座り直し、明らかな裏声で咳ばらいをした後、半分叫ぶようにして作戦名を告げた。
「私の作戦はズバリ、小指くんの能力変えちゃおう大作戦です!!」
「「……小指くんの能力変えちゃおう大作戦??」」
「ぼ、僕……ですか?」
急に名前が挙がってたじろぐ小指に、数秒してなんとなく意味が分かった俺達。
小指の能力はほぼ産業廃棄物(そのおかげで周りの能力が強くなったわけだが)だから、それをまともなのに変えたいって魂胆だろう。
やはり彼女の頭脳は本物かも知れない。
「天竺さんの能力でバグらせて、小指くんの能力を手数多めのアタッカーにしたいって作戦です」
「はぁ……つっても、その能力を何に変えるんだよ」
「実はもうそれも考えてあります!」
「まあ、私が知っている範疇でしか考えられないのですが。能力は衣川さんの『魔法を操る能力』でいかがでしょうか」
「魔法……ぶっちゃけよくわからん能力だよな」
「何の魔法が使えるかすら分からないですし」
「安心して下さい、そもそも私は衣川さんから作戦を聞いてきたんですから、普通に能力の事も聞いてきましたよ」
「なんか有能すぎない?」
「当然です。桐原家の令嬢ですので」「なんかすごい家なんだなー」「天神家よりは小さいと思いますけどね……」
「魔法を操る能力なんですけど、自分の無意識下にある魔法ならなんでも使えるらしいです」
「むいしきか??」
「無意識に何かをしてしまうとか、反射で何か行動するってことがあると思うんですけど、その動きに関わってくる『存在すると思われている』意識のことですね。まあ難しいので、自分の中にある常識とでも考えていただければ」
「じゃあ、常識的にこの魔法はあるって思ったら使えるのか?」
「はい。ただ、それは自分の中にある自分はどれくらい魔法が使えそうか、というか……ゲームで言うところの、自分は大体何レベルくらいあるのか、という認識で使える魔法が選べるらしいです」
「仮に、自分は100レベル中10レベルくらいと認識しているとします。その場合、多分簡単な回復魔法とか火の魔法は使えそうだけど、ほぼ即死の魔法とか、最大火力の氷魔法!みたいな魔法は使えなさそうですよね」
「一方、自分は100レベルだ!と思っていたら、即死でも最大火力でも復活でもなんでも使える状態になる……だそうです」
「じゃあ、自分は100レベルだって思い込めばいい話じゃねぇか」
「それがうまくできないんですよ、無意識下っていうのは簡単に変わりませんから。常識みたいな物ですから、今日急に思い込みで変わる物でもありません。衣川さんも、自分は100レベルだ、と思い込むことは結局できなくて、40くらいで終わったって言ってましたから」
「……」
どんどん話が進んでいく俺達に反して、渦中の小指はさっきから口を結んでいる。
そもそも、今までレベルだの無意識だの話していたが、要は小指がどれだけできるかにかかってるわけだし、プレッシャーがかかる盤面だろう。
かといって小指自身が議論に入っていけそうな雰囲気でもないしで、彼はどうしようもない状態に陥っている。
取りあえず声をかけてみようかと思った時に天竺あたりから声がかかった。
「で、小指的にはどうなんだよ?」
「僕ですか?僕は……この能力のまま行っても荷物になるだけですし、能力を変えていただけるのなら変えてほしいけど……」
「ごめんなさい、つい話すぎちゃいました。小指くんの意見を聞いた方が良かったですよね、反省です」
「で、でも、その……僕が急に魔法を使えって言われても、高いレベルから始まんないと思いますし、衣川さんみたいに優秀な魔法使いにはなれないと思うんです、だから……あんまり期待しないで欲しいと言うか、少なくともメインアタッカーにはなれないんじゃないかなって」
「そうなると思ってました!!きっと小指くんなら『僕なんかじゃ何もできないよぉ(裏声)』とか言うと思ってました!」
「似てる似てる」「僕にはまったく似てません!!」
「なので、代替案を用意いたしました。小指くんにはメインアタッカーではなくーー」
「ーー回復役をやってほしいです」
「回復……ですか」
「衣川さんに聞いたんですけど、初期から回復魔法はあったらしいんですよ。まあ、今の衣川さんが使っているほど強力じゃないらしいんですが、傷を二つまで治せるとか、そんな感じだったらしくて」
「僕、使えるかな……」
「本当に1レベルからあったらしいですよ。それに、戦闘中にレベルが上がることもあるとか」
「じゃあ、小指は回復兼できそうだったらアタッカー?」
「それでお願いします。天竺さんも頃合いを見て能力を渡してください」
「了解。頑張ろうな、小指」
「は、はい……!」
*
天竺が小指の手を取り、目をぎゅっと瞑ったと思えば、途端、パソコンがバグった時みたいな警告音と共に大量の黒い四角がちりばめられる。
その四角に包まれ、俺達にも小指が視認できなくなったタイミングで、また矢印が飛んでくる。
それを指揮が能力で曲げ、二人の安全が担保された。
しばらくして、天竺が四角から離れると、その四角たちも消え、俺は小指の手から淡い光が出ていることに気付く。
ついでに言えば、天竺の足に出来ていた傷も消えていた。
「……秘策は成功しましたね」
「ありがとな、小指。感謝するぜ」
「ど、どうも……」
小指は恥ずかしそうに顔を下げていたが、その顔には今まで見た事ないくらいの自信があった。