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敦芥推し
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#文スト中原中也夢
茉莉(まつり)
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かいじう🦖
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あのアジトでの「仮噛み」から一年。
十六歳になった太宰治と中原中也は、裏社会で「双黒」の名を轟かせ始めていた。
中也の首元には、あの日太宰の手によって引きちぎられたものの代わりに、新しい黒い革のチョーカーがしっかりと巻かれている。
それはまるで、太宰の歯型を世間のαの目から隠すための防壁であり、同時に太宰が中也に与えた「二代目の首輪」でもあった。
「おい太宰。次の任務の資料、これで全部か」
マフィアの薄暗い書庫で、中也は不機嫌そうに書類を机に叩きつけた。
十六歳になり、中也の身体は男らしく引き締まってきたものの、Ωとしての成熟も着実に進んでいた。
週に一度、太宰から直接「αのフェロモン」を分けてもらい、仮噛みの傷を上書きしなければ、並の抑制剤ではヒートを抑え込めない身体になっている。
「そうだよ。相変わらず頭の悪い敵組織で退屈だねえ。ねえ中也、そんなことより、君さ」
太宰はソファに寝そべったまま、首だけを中也の方へ向けた。
その瞳が、中也の首元──黒いチョーカーの隙間に、わずかに覗く白い肌へと注がれる。
「最近、マフィアの他のαの構成員たちと、妙に距離が近くないかい?」
「はあ!? 何言ってやがる。あいつらは俺の部下だ。作戦会議で近くに寄ることくらい普通だろ」
中也は眉をひそめて言い返したが、太宰はゆっくりと起き上がると、音もなく中也の背後に回り込んだ。
冷たい気配が背中を掠め、中也の身体がビクリと跳ねる。
「普通、ね。君は自分がどれだけ無防備な匂いをさせているか分かっていないんだ。いくら僕の仮噛みがあるとはいえ、熟し始めたΩのフェロモンは、馬鹿なαたちを刺激する。さっきも、廊下で君とすれ違った奴が、いやらしい目で君の腰を見ていたよ」
太宰の低い声が、中也の耳元で鼓膜を震わせる。
太宰の手が伸び、中也の首元のチョーカーを指先でぐいと引っ張った。
「ぐっ……、おい、苦し……っ」
「これじゃ緩いんだよ。もっと君が『誰の犬』なのか、骨の真髄まで分からせてあげなきゃいけない」
太宰の身体から、十六歳になってより濃密さを増した、氷のように冷たくて暴力的なαのフェロモンが溢れ出す。
中也の膝が、本能的なプレッシャーでがくがくと震えた。
机に両手を突き、荒い息を吐きながら太宰を見上げる。
「手前……っ、ここは書庫だぞ……!」
「関係ないよ。中也、君の身体をマフィアの戦力として維持管理するのは、僕の役目であり権利だ」
太宰は中也の身体を机に押し付け、背後から覆い被さるようにして、その黒いチョーカーを乱暴に横へずらした。
そこには、一年前に付けられたはずの、しかし今も太宰のフェロモンによって生々しく維持されている「歯型」がある。
太宰は躊躇なく、その傷跡に再び己の牙を立てた。
「──っ、あ、ぁう……ッ!!」
中也は声を殺しようと自分の腕を噛んだが、うなじから脳へと直接突き刺さるようなαの支配感に、視界がチカチカと明滅する。
本当の番になるための結合ではない。
しかし、十六歳の太宰が放つ衝動は、十五歳の頃よりも遥かに容赦がなかった。
「は、あ……っ、ん、太宰……冷てぇよ、お前の、フェロモン……っ」
「嘘だね。身体はこんなに熱くなって、僕の匂いを欲しがっているくせに」
太宰は中也の髪を掴んで顔を上げさせると、涙で濡れたその唇を、強引に自らの唇で塞いだ。
それはキスというよりも、互いの領土を貪り合うような、痛みを伴う口づけだった。
中也の口内にも太宰の支配が染み渡り、中也は悔しさに胸を締め付けられながらも、その圧倒的な快感に身を委ねるしかなかった。
「……よし。これでまた一週間は、僕の匂いで満たされるね」
唇を離した太宰は、口元を拭いながら冷たく笑った。
中也は机に突っ伏したまま、激しく上下する肩を抑え、消えかけた理性のなかで「いつかこいつを殴り殺す」と心に誓うのだった。