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帰り道。
並んで歩く足音だけが、静かな通りに響く。
咲は何か話さなきゃと思うのに、言葉が見つからなかった。
――沈黙が、こんなに苦しいなんて。
ふと、悠真が横目で咲を見て口を開いた。
「……妹ちゃん、進路はもう決めてるのか?」
「え?」
思いがけない質問に足を止めかける。
「ほら、もう三年だろ。受験とかさ」
「……まぁ、はい。まだ、ちゃんとは……」
視線を落とす咲に、悠真は小さく笑った。
「焦んなくていいよ。俺だってギリギリまで迷ってたし」
その何気ない声が、不思議と胸を軽くしてくれる。
気まずさも、ほんの少しだけ和らいでいた。