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6 - 第6話

2025年11月25日

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四時間目


俺は、心を燃やしている。


何かに気付いてしまった様な、触れてはならない、何かに触れたかの様な、凄まじい緊張に呼吸を荒らげていた。


もしかして。

小物は、鬼から存在を隠す。小物を肌身から離さぬと、鬼にも殺されることは無い。


俺が今立てた大それた仮説である。


俺の緊張の所以ならば、これに、もし本当なら、と言うのと、もし違ったら、と言うので、武者震いと、畏怖とをしていたと言う事だった。


胸の奥から、首の周りへ、そして顔の全体へと、血と燃えるような熱が、血管を通して蒸し上がって来る気がする。

右腕が全部震えている。体全体が熱い。


狐の肌は、緊張で火照る下の俺の頬とは相反し、ここの室温に晒されて、ひんやりと冷気を帯びている。それに触れる指が、その感覚で、ひたりと吸い付くのである。その指は、この肌が木製である事を俺に思わせる。その中でも、檜で出来ている物と見た。


そのまま表面を滑り落ち、親指の付け根を、自身の心臓に押し込めた。

心臓の鼓動を封そうとして。

その鼓動は大きくて、液体を飲み込む喉越しの様に、大きく形を変えているのを感じた。この緊張は、総じて武者震いなのである。

自分の仮説に確信があったから、それには別に、畏怖のばかりでは無かったのだ。


自分を押し留める様に、程よく、短く、深いため息を着く。

決意を固める。

やっと統制を取り戻し、右脚を床に突き立てた。


窓の無い、全く暗い廊下がある。

床は鏡の様に照り、少し畝って、壁はコンクリートで出来ている。

明かりも無く、光源は奥に両脇と手前に右脇の3部屋だけの、教室から漏れる光である。


床はその起伏に従って、水面の様に畝っている。

3つの教室全てには、幾らか人間が入っている。

一人一人が違う感情を持っていて、どよめいていたり、震えていたりする訳であるが、総括して、恐怖に怯えている訳である。

その一つの、奥の両脇の左の方。但、そこの中に居る1人だけ、特異な思索を巡らして、情熱している様なのを含んで。


ベージュのスラックスに、白いコットンのシャツ。スラックスは薄いが、シャツは重くて分厚い上、コットンだから上質なので、重厚を幾らか感じさせる。それに青のジーンズの長いのを羽織って、下を俯いて立っている。

右膝を立て、俯きながら立ち上がり。

胸は右手に抑えられ、肩は呼吸で僅かに動いていた。

木製の狐の面を着けたその少年の、小さくて弱々しいその肩は。


今の体は、燃炭の様にじんわり熱い。

まだ力強く跳ねている心臓から手を離し、両掌で狐の面に触れる。

感触を手の全体で確認し、万全であるかを推し量る。


最後に決意を固め、腕を垂らし、ゆっくり、大きな一歩を、右足から前に突き出した。


窓の無い、暗い廊下である。

床は滑らかなタイルで照り、壁はコンクリートで出来ている。

両脇の教室の1つから、1人の少年が走り出た。

羽織るジーンズを靡かせて、首の所の肌色と、顔の狐の白の色、そのcontrasteを暗闇の中で際立たせながら。

その姿は、その面は、その青年の顔として、違和感無く既に体に馴染んでいた。

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