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雨が降ってきたため、ナオトたちは一旦アパートに戻った。
「はぁ……」
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)がため息を吐《つ》くと、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)が彼に話しかけた。
「ご主人、ため息を吐くと幸せが逃げてしまうよ」
「え? あー、そうだな。はぁ……」
「わざとやってるなら怒るけど、そうじゃないみたいだね。僕で良ければ話し相手になるけど、どうする?」
ナオトは少し考えた後、彼女にこう言った。
「じゃあ、お願いしようかな」
「うん、いいよ。それで? どうして、ため息なんか吐いてたの?」
「あー、まあ、その……なんだ。そろそろ天候を自由に操《あやつ》れないのかなーと思ってな」
「それは一生できない方がいいと思うよ」
「どうしてだ?」
「うーんとねー、自然の摂理というものに逆《さか》らうと、ろくなことがないからだよ」
「それって、つまり、人ごときが操《あやつ》れるものじゃないってことか?」
「うーん、そうだなー。人はやたらと管理しようとするから、それだといつか暴走しちゃうってことかな」
「そうか。たしかにそうかもしれないな。もし俺にそんな力があったとしても、それは一生使わないことにしよう」
「うんうん、そうした方がいいと思うよ」
彼女はニコニコ笑いながら、彼を抱き寄せた。
「ちょ、いきなりどうしたんだ?」
「うーんとね、さっきご主人が昼寝をしている間に添い寝をしている子たちがいたから……その……羨《うらや》ましくなってね」
「そうなのか? 全然気づかなかった」
「あははは、ご主人らしいね」
彼女がそんなことを言うと、カオリ(ゾンビ)が二人の間に割って入った。
「おい、ミサキ! 抜け駆けは許さねえぞ! あたしも混ぜろ!」
「それはちょっと無理な相談だねー」
「何? だったら、あたしと戦え!」
「いやだよ、どうして僕が君と戦わないといけないんだい?」
「それは……ほら、あれだ。お前ばっかりマスターとイチャついてるのが気に食わないからだ」
「なら、君も混ざればいいじゃないか。ねえ? ご主人」
「え? あー、まあ、そうだな」
「ほら、ご主人もこう言ってるよ。だからさ、無意味な戦いをしようとしないでおくれよ。ね?」
ミサキが微笑みを浮かべると、カオリは頬を赤く染めながら、二人に近づいた。
「しょ、しょうがねえなー、今回だけだぞ?」
「ありがとう、カオリ。よしよし」
彼女がカオリの頭を優しく撫でると、カオリの顔が真っ赤になった。
「あ、あんまりあたしをからかうな」
「別にからかってなんかいないよ。僕はただ、僕のお願いを聞いてくれた君に感謝しているだけだよ」
「だーかーらー! あたしはそういうの苦手なんだよ! あー! 調子狂うなー! もうー!」
「まあまあ、そんなに怒らないでよ。ねえ? ご主人」
どうして俺に振るんだ?
「え? あー、まあ、そうだな」
「だそうだよ。だからさ、もっと素直になりなよ」
「う、うるせえ! もうあたしのことは、ほっといてくれ!」
「はいはい」
ナオトが二人に抱きしめられているのをじーっと見つめている者《もの》が一人……いや、二人以上いることを知っているのはミサキとカオリ、あとナオトだけである。