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家の前に着くと、悠真が立ち止まった。
「ここまでだな」
夕焼けの光を背にした横顔は、どこか大人びて見える。
咲は鞄の持ち手をぎゅっと握りしめ、うつむいた。
「……今日は、ありがとうございました」
視線を上げると、悠真が少し不思議そうに笑う。
「なんで礼なんか言うんだよ。普通に帰っただけだろ」
軽い調子の声なのに、その言葉が温かく胸に残る。
「じゃあ、またな」
ひらりと手を振って、悠真は玄関の中へと入っていった。
残された咲は、しばらくその背中を思い出しながら、立ち尽くしていた。