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一方、銀次郎は 桜子が住むマンションへ車を走らせていた。
桜子がクラブに出てないという事は 家に居てる可能性大であると推測した銀次郎。
前に騙される形で米原の家を知る事になったが、今となってはありがたい話だと桜子の強引さに感謝していた。
死ぬほど頑固な桜子が自分の店の客の事を何か知っててもそう簡単に教えてくれるとは思えないが、調べる価値はあるし、 何もしないよりかはいくらかマシだと車を走らせた
ミナミの街から少し車を走らせた市街地、 銀次郎は桜子のマンションの下に車を停めた。
車の中で煙草を吹かしながらぼんやりと残っている記憶の中から桜子の部屋番号を掘り起こしていた。
「確かこの番号やったはず…。」
煙草を消し、車から降りた銀次郎はマンションのエントランスへ向かう
記憶の中の番号を頼りにオートロックパネルのボタンを押した…
ピーンポーン…
………
………
………
「…はい。 」
インターホン越しに聞こえてきた桜子であろう声の主。
「米原、萬田や。」
「え…萬田くん…!?」
桜子に間違いない。
「夜遅くにすまん。ちょっと聞きたいことがあるんや。」
「聞きたいこと…。分かった、今開ける。」
“ウィーン…。”
銀次郎の予想とは裏腹に桜子はすんなりオートロックを開けた。 中に入り桜子の部屋へと向かう。
一方、いきなりの銀次郎の訪問に家の中でソワソワと待つ桜子。
銀次郎が自分の家へ来る理由なんてお金の問題以外ないであろう事は容易に想像出来る…。
「お前に会いたくて来た。」
そんな事言ってくれるはずが無い。
そんな事分かっている…
だからこそ余計に切なくなったが、例えお金の事が理由だとしても銀次郎の姿が見れる、それだけで桜子にとっては幸せだった。
“ピーンポーン”
「来た…。」
銀次郎の姿を見たい気持ちと何を聞かれるのか分からない不安な気持ちがせめぎ合う中、桜子は急いで玄関へ向かった。
―ガチャ。
….
「…しばらくやの、米原。」
久しぶりに見る桜子の姿。
銀次郎はその姿を見てどこか懐かしい安心感を覚えていた。
「そうやね。でも、あんまりいきなりやからびっくりした。」
「すまんな。どうしても米原に聞きたいことがあるんや。」
「全然大丈夫。聞きたいこと事って何?」
「米原のクラブに高瀬伸也っちゅう客おるやろ。米原の事贔屓にしてる客や。」
………!
この時、桜子は内心でひどく動揺していた。
銀次郎の口からその人の名前だけは聞きたくなかったから… どうしても知られたくない理由があった。
でもここで知らないと嘘をついた所で頭も勘も鋭い銀次郎にはすぐにバレてしまう。
桜子は動揺を必死に隠しながら口を開いた。
「うん、私のクラブのお客さんで贔屓にしてもらってるけど…そのお客さんがどうかしたん?」
「わしに借りた銭返さんと飛びよったんや。米原やったらあいつが行きそうなとこ何か知ってるん違うか思ってな。」
「…高瀬さんそんな借金して…。確かによく遊びに来てもらってるけどプライベートな事はほんまに何も知らんねん。ごめんね…。 」
………
………
………
この時、銀次郎は桜子の嘘を見抜いていた。
“この瞳の揺れ方…
嘘ついとる時の人間の目や。
平静を装おうとして逆に普段と違う口調や空気感になる…”
これまで数え切れない人間にお金を貸して来たからこそ分かる銀次郎の感覚だった。
「ほーう…”何も知らん”か…。」
「うん、来てもらってごめんやけど…。」
「そうかぁ、米原。」
ガタッ…
「え…。 」
桜子の嘘を察した銀次郎は玄関のドアに足を引っ掛け閉まらないよう固定した。