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:D ream C0RE

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26 - 第26話 人工生命体 シルヴェール

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2025年06月08日

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リクたちは氷窟の奥深く、機械音と無機質な声が響く中で《シルヴェール》の存在を感じていた。傷を負ったアイビーの首筋に絡みついていた黒い触手──あれはただの植物の根やクリーチャーの触手ではなかった。


リクが意識を研ぎ澄ませると、触手の中に複雑な機械構造と生物的な組織が混ざり合っていることに気づく。

それは人為的に作られたハイブリッド生命体の一部であり、精神を侵食するためのナノマシンと寄生植物ブリリオンの融合体だった。


リクはその触手が《シルヴェール》の制御下にあることを直感し、この生命体が氷窟の記憶を食らい操っている元凶だと理解する。


アイビーはまだ意識が不安定で、触手の侵食を止めなければ完全に乗っ取られてしまう。

リクは共鳴因子を最大限に活用し、触手のナノマシンと生体構造を分解する作戦を立てるのだった──。


断面図がホログラムとして浮かび上がる。

そこには、有機的な筋繊維と、明らかに人工物と見られる金属質のコードが絡み合った異様な構造があった。


《検出:寄生植物ブリリオンの神経核成分+ナノ機械構造体》

《推定:記憶情報を抽出・蓄積する中枢機構》

《制御信号:未特定端末より定常的に発信中》


「……やっぱり、ただの触手じゃない。ブリリオンに、何かが“接続”してる」


リクの目に緊張が走る。


「記憶を奪うのが目的だとしたら、あれはただの生物兵器だ……。しかも、誰かが遠隔で操ってる」


ロビンが横から覗き込む。


「じゃあ、あの氷徘者も……?」


「……多分、そうだと思う。記憶を抜かれた人間の亡骸を、あの触手とナノマシンで動かしてる。生きてる人間の記憶すらも素材にして。」


アイビーはまだ横になったまま、眠るように微かな寝息を立てている。

その顔を見ながら、リクは拳を強く握った。


「これ以上、奪わせない……」


彼は触手に刻まれていた微細な信号パターンを抽出し、スキャナに保存する。


「もしこのパターンが共通なら、次に来ても“先に遮断”できる。共鳴因子で、逆にこっちが侵入できるかもしれない」


ロビンが驚いたように言う。


「まさか、あいつらの神経網にアクセスするってこと……? それって下手したらリクの記憶まで……」


「……でも、アイビーを助けられたのは、共鳴因子のおかげだ。

逆に考えれば……この力で、あいつらを制御できる可能性もある」


すると、再びスキャナが低い警告音を鳴らした。


《探知:信号源の本体、接近中――》


それと同時に、氷窟の奥から金属をこするような不気味な足音が響いてくる。


ロビンがすぐに構えを取りながら呟いた。


「……来たか」


氷を砕きながら姿を現したのは、仮面を被った人間のようなシルエット。

肌は白銀、腕は触手のように細長く、背中には数本の冷却管がうねっていた。


《人工生命体:シルヴェール──記憶制御ユニット起動。対象:リク・ロビン・アイビー》


ついに、直接の対峙が始まろうとしていた。


共鳴因子反応──干渉開始。」


シルヴェールの仮面の奥から、複数の金属声が重なったような音が響いた。

その瞬間、周囲の空間がノイズのように歪み、リクたちの脳内に“違和感”が流れ込む。


──記憶に、何かが侵入してくる。


「うぐっ……!」


リクは頭を押さえて膝をつく。視界がぶれる。

“現実”と“過去の映像”が一瞬ごちゃ混ぜになり、目の前に死んだはずの研究者の顔がちらついた。


《記憶汚染レベル2:侵入継続。》


ロビンが叫ぶ。


「ダメ、これ……ただの攻撃じゃない! 精神に直接アクセスしてる!」


「なら……こっちもやる!」


リクは必死に手を地面へつけた。共鳴因子が、脳を介して“氷窟そのもの”へ接続する。


この空間自体が、“神経網”として機能している。


「……だったら、逆に“アクセス”できる……はず……!」


氷の奥に眠るブリリオンの根、それを介して拡張された神経領域。

リクは自身の記憶の一部を“偽のルート”として送り出し、意図的に“罠”の記憶領域をシルヴェールへ渡す。


《反応:記憶データ受信──錯乱記憶……確認不能》


「ひっかかった!」


ノイズが走る。シルヴェールがリクの偽装記憶に侵入し、処理を誤ったのだ。


「今のうちに、ロビン、アイビーを──!」


だが――シルヴェールの片手が変形し、再び“触手”を生み出す。


「──警告。干渉源の除去、優先処理。」


冷たい金属の触手がリクへ向かって襲いかかる。

しかしリクは、わずかに笑みを浮かべた。


「遅いよ……俺の“記憶”の中に、もうお前が踏み込んでるってことは……」


共鳴逆流が起こる。


氷の神経網を逆流した因子が、シルヴェール自身の“中枢領域”へ干渉を始める。

人工知能とはいえ、生体ベースの神経系統は“共鳴”に極めて弱い。


《共鳴反応:内部ノード汚染率、急上昇中……警告、エラー、エラー──》


「ロビン!今のうちに攻撃して!」


「了解っ!」


ロビンが抜刀し、氷の床を滑るように跳躍。

シルヴェールの胸部装甲の接合部に、一直線に剣を突き刺した。


「これで、終わりだ!!」


ガンッッ!!


光が爆ぜ、仮面が砕けた。

だが、内部から溢れ出るのは血ではなく、冷却液と絡みついたブリリオンの根。


リクは震えながら呟いた。


「……やっぱり、あいつ……“人間”だったんだ……もとは……」


ロビンが振り向く。


「でも、もう止まったよ。少なくとも……今はね」


アイビーがようやく目を覚まし、頭を抑えながら顔を上げる。


「……変な夢だった……。なんか……誰かの“記憶”の中にいたみたいで……」


リクは静かに頷く。


「それ、多分……この施設の“本当の正体”に関わってる」


彼らの前には、崩壊しかけた《人工生命体》の残骸が転がり、そして氷窟の更なる奥へ続く通路が静かに開かれていた。


触手がうねり、空間を切り裂くように襲いかかる。


だが、もう怯える者はいない。


「ロビン、右から回り込んで!」


リクの声に、ロビンが氷壁を蹴って走る。

その動きに合わせるように、アイビーが地を蹴る。まだ傷は完全じゃないが、動ける。


「さっきの分、返してやるんだから!」


氷窟全体に、再び共鳴因子の波が走る。

リクが制御を取り戻した氷の“神経網”が、まるで生きているかのように地を這い、シルヴェールを包囲する。


《記憶侵蝕、反転開始──》


「お前の手口はもう通じない!」


リクの叫びと同時、アイビーのパイプが、雷鳴のような音を立てて振り下ろされる。

ブリリオンの触手を払い飛ばし、ロビンがその隙にシルヴェールの背面へ。


「これで……終わりッ!!」


氷に覆われた剣が、正確に接合部へ突き立つ。


ズブ……ッ!!


仮面の内側から迸ったのは、白い蒸気と青く光る“脳核”の破片。

シルヴェールの動きが止まり、音もなくその場に崩れ落ちた。


静寂が、戻る。


「……やった……?」


ロビンが剣を引き抜きながら振り返ると、リクは既に次の手を打っていた。


氷床に指を這わせる。


「念のため、神経ネットワークを完全遮断する……」


青い光が走る。

氷窟全体が、まるで電源を落とされたように“沈黙”する。


もう、動くものはいない。


「終わった……本当に……」


アイビーが力を抜くように座り込み、パイプを肩に立てかけて笑った。


「なんかさ……スッキリしたね」


ロビンも小さく笑う。


「これでようやく、次に進める……」


リクは、倒れたシルヴェールの仮面の破片を見つめていた。

その奥に、誰かの名前が刻まれていたのを──彼だけが見た。


「行こう……もう、ここに用はない」


氷窟の奥に差し込む光。

その先には、新たなエリアへの扉がゆっくりと開き始めていた。



【To be continued…】

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