氷徘者たちも、人工生命体《シルヴェール》も沈黙し、ようやく静けさを取り戻した氷窟の奥。
重々しい音を立てて、最奥の扉がゆっくりと開いた。
「……光?」
まばゆい白が、リクたちの瞳を射抜いた。
中へ踏み入れると、空気がまるで異質だった。
床も、壁も、天井も──全て真っ白なタイルで覆われている。
それはまるで、無菌室か、あるいは“記憶の保管庫”のような冷たさを帯びていた。
「なにここ……今までの空間と全然違う……」
アイビーが呟く。パイプを肩に乗せながら、少し緊張の色を見せた。
中央に立てかけられた一振りの斧だけが、異様な存在感を放っている。黒鉄の刃は重厚で、柄には黄金の文様が刻まれ、空気すら震えるような力を秘めていた。
「……これって、誰かの武器だったのかな?」
ロビンが小声で呟いたとき、アイビーが斧に歩み寄っていた。静かに手を伸ばし、柄に触れると、空気がピリッと張りつめたように変わる。
「……ごめんね、今までありがと」
アイビーは背中に背負っていた鉄パイプに目を向け、優しく語りかけるように呟いた。
リクが眉をひそめる。「アイビー……?」
「ううん、大丈夫。……でもね、この斧、なんかすごく……呼ばれてる気がするの」
彼女は躊躇なく斧を持ち上げた。手にした瞬間、その大きさに見合わないはずの細腕に、静かな共鳴の振動が走る。
「私、この子を使いたい。もう、鉄パイプじゃ守れない気がするから」
アイビーの瞳はまっすぐで、どこか大人びていた。
ロビンが思わず口元をほころばせる。「……似合ってるよ。戦士みたい」
リクも軽く頷いた。「ああ。……じゃあ、そいつは君のだ。霊斬斧(ユルグレイヴ)。神器に相応しい使い手だと思うよ」
アイビーは小さく微笑み、新しい相棒を肩に担いだ。
かつての鉄パイプは、白いタイルの隅にそっと置かれていた。
リクがそっと手をかけた扉は、ひんやりと冷たい金属製の取っ手だった。
深呼吸をしてから、ゆっくりと押し開く。
ギギ……と軋む音とともに、扉の向こうには柔らかな明かりが漏れ、
障子越しに浮かぶ朧月のような光景が広がっていた。
薄暗い廊下を一歩踏み出すと、和の静謐な空気が包み込む。
木の香り、畳の擦れる音、どこか懐かしくも不思議な感覚。
「ここ……まるで昔の旅館みたいだな」
リクは呟き、辺りを見渡す。
遠くに見えるのは、古びた提灯が揺れる廊下の先、畳敷きの広間。
その奥には、朱色の格子戸が控えている。
「……油断はできないけど、少しだけ安心できる場所かも」
ロビンが小声で言った。
アイビーは神器の斧《幽斬斧》をしっかりと握り締め、身構える。
三人は互いに視線を交わし、ゆっくりと歩みを進めていった。
リクがそっと手をかけた扉は、ひんやりと冷たい金属製の取っ手だった。
深呼吸をしてから、ゆっくりと押し開く。
ギギ……と軋む音とともに、扉の向こうには柔らかな明かりが漏れ、
障子越しに浮かぶ朧月のような光景が広がっていた。
薄暗い廊下を一歩踏み出すと、和の静謐な空気が包み込む。
木の香り、畳の擦れる音、どこか懐かしくも不思議な感覚。
「ここ……まるで昔の旅館みたいだな」
リクは呟き、辺りを見渡す。
遠くに見えるのは、古びた提灯が揺れる廊下の先、畳敷きの広間。
その奥には、朱色の格子戸が控えている。
「……油断はできないけど、少しだけ安心できる場所かも」
ロビンが小声で言った。
アイビーは神器の斧《幽斬斧》をしっかりと握り締め、身構える。
三人は互いに視線を交わし、ゆっくりと歩みを進めていった。
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