テラーノベル
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一方その頃、自室へ戻った湊はソファーに腰を下ろしてスマートフォンの画面を見つめていた。
別れてから何年も経った相手なのだから、連絡が来る保証などどこにもない けれど、それでも画面を確認してしまう自分がいる。
「……和葉に娘、か」
消え入りそうな声で呟き視線を落とした湊。
正直なところ、その事実は今でも信じられなかった。
あの日、自分の前から突然姿を消した和葉。
彼女がいなくなった理由は何だったのか。
一年間の研修で離れ離れになったことが、彼女を寂しくさせてしまったのだろうか。
自分がいない間に誰かと出会い、その人を好きになったのかもしれない。
あるいは、一夜の過ちだったのかもしれない。
相手との間に子供が出来てしまい、その事実に悩み苦しんだ末に姿を消したのかもしれない。
どれだけ考えても答えは出ない。
けれど、一つだけ分かっていることがあった。
プロポーズをしたあの日、和葉は心の底から喜んでくれていた。
その笑顔に安心しきっていた自分にも責任はあったのだと。
だから今更彼女を責める資格などないと湊は理解していた。
「……でも、せめて何があったのかだけは知りたい」
静かな部屋に小さな声が落ちる。
相手とは離婚したのか、それとも死別したのか。
何故今和葉はシングルマザーとして娘を育てているのか。
知りたいことは山程あった。
勿論、調べようと思えば簡単だ。
金を払えば身辺調査などいくらでも出来るのだから。
だが、湊は小さく首を振る。
「そんなことをしたら、嫌われるな」
知りたくてたまらないけれど、それでも勝手に踏み込むのは違うと思ったし、彼にはずっと疑っている存在があった。
それは自身の父親だ。
以前から和葉との交際を反対していた父。
何年探しても和葉が見つからなかったことを思えば、父が裏で何かしていた可能性は決して低くなかったし、それについては何度も問い詰めた。
しかし父は最後まで認めなかった。
今は病に倒れて自宅療養を続けているものの、それでも調査会社を使えばどこから情報が漏れるか分からない。
今日の再会だけは絶対に知られたくないから慎重に事を運ばなくてはならない。
ようやく見つけた希望の光を、自ら消すような真似はしたくない。
「……まあ、それも全部……連絡が来なきゃ意味がないんだけどな」
湊はスマートフォンを見つめながら苦笑する。
どうすれば自然に距離を縮められるだろう。
どうすれば、もう一度彼女の隣に立てるだろう。
そして、二度と手放さずに済むだろうか。
考えても答えは出ない。
「和葉たちは、明日には帰るんだろうか……」
ホテルに滞在している間なら、また偶然会えるかもしれないけれど、帰ってしまえば次また会える保証はどこにもない。
シングルマザーとして娘を育てる生活は決して楽ではないはずだから、困った時に頼れる存在になりたい、支えになりたい。
そして何より、もう二度と和葉を失いたくなかった湊はスマートフォンを握りしめたまま静かに画面を見つめ続けていた が、この日和葉からの連絡が来ることはなかった。
西原衣都
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宇津Q
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鷹槻れん@コノカレコミカライズ

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#シークレットベビー
コメント
1件
湊の視点がじっくり描かれていて、胸がぎゅっとなりました。「連絡が来なきゃ意味がない」と苦笑する姿に、彼の不安と慎重さがよく現れていて…父親に疑いを向ける冷静さもあるのに、和葉の笑顔を信じたい気持ちが切なくて。彼女からの連絡がなかったラストも、現実的で余韻が残りました。続きが気になります🤍