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お湯
467
45,070
おこめ。@さぶ
46
※オリキャラ出現注意 (?
💎.視点
僕は、外へ飛び出した。
後ろから何度も名前を呼ばれたけれど、振り返らなかった。
振り返れば、また見えてしまう。
りうちゃんの頭から流れていた血。
赤く染まった指先。
それでも僕を安心させようと笑った顔。
僕が投げた本が当たった。
僕が、りうちゃんを傷つけた。
わざとじゃないなんて、関係ない。
あそこに戻れば、また誰かを傷つけるかもしれない。
そう思うと、足を止められなかった。
喉が焼けるように痛い。
息を吸うたび、胸の奥が軋む。
それでも走った。
住宅街を抜け、大きな道路を渡る。
何度か角を曲がった頃には、追いかけてくる声も聞こえなくなっていた。
僕はようやく足を止めた。
見覚えのない橋の上だった。
川の水が、街灯の光を歪ませながら流れている。
ここがどこなのか分からない。
帰る方向も分からない。
僕は欄干に手をつき、荒い呼吸を繰り返した。
その時、ポケットの中でスマホが震えた。
一度。
二度。
すぐに三度目の振動が重なる。
画面を見ると、匿名アカウントからの通知が並んでいた。
内容を読むより先に、次の通知が上へ重なる。
また一件。
また。
また。
画面を閉じても止まらない。
短い通知音と振動が、何度も何度も繰り返される。
静かな橋の上で、その音だけが異様に大きく聞こえた。
指が震えて、電源を切ることもできない。
誰かが僕を見ている。
ここまで逃げてきたことも、今いる場所も、全部知られている。
そんな気がした。
もう嫌だ。
見たくない。
何も届かないで。
僕はスマホを地面へ叩きつけた。
画面にひびが入る。
それでも通知音は止まらなかった。
拾い上げ、もう一度叩きつける。
端が欠け、細かな破片が散った。
最後に、力いっぱい振り下ろした。
画面の光が消える。
ようやく、静かになった。
僕は壊れたスマホを見下ろした。
これで、もう通知は来ない。
そう安心したのは、ほんの一瞬だった。
地図も見られない。
誰にも連絡できない。
りうちゃんが無事なのかも分からない。
助けを求めようにも、僕には声がなかった。
急に怖くなり、何度も電源ボタンを押した。
画面は真っ暗なままだった。
僕は壊れたスマホを拾い、橋を渡った。
来た道を戻る勇気はなかった。
だから、反対側へ進んだ。
橋の先には、古い商店街があった。
ほとんどの店は閉まり、シャッターが下りている。
明かりのついた店を見つけても、中へ入れなかった。
知らない人が怖い。
声が出ないと知られるのも怖い。
道を聞かれても、事情を尋ねられても、何も答えられない。
僕は誰とも目を合わせず、商店街を抜けた。
歩いているうちに、空は完全に暗くなった。
足が重い。
喉が渇いた。
お腹も空いていたけれど、何かを食べる気にはなれなかった。
やがて、自動販売機の明かりが見えた。
僕はその横へ座り込み、膝を抱えた。
誰にも見つけられたくなくて逃げた。
それなのに今は、誰かに見つけてほしいと思っている。
でも、人の足音が聞こえるたび、体が勝手に強張った。
助けてほしい。
近づかないでほしい。
どちらが本当なのか、自分でも分からなかった。
??「お兄さんっ?」
突然、知らない声がした。
僕の肩が大きく跳ねる。
??「うわっ、ごめん、驚かせるつもりは!!」
顔を上げると、コンビニの袋を持った青年が立っていた。
僕より年下だろう。
黒い髪と、人懐っこそうな目。
青年は僕が怯えていることに気づくと、すぐに二歩下がった。
??「こ、これ以上近づかないから。ね?⋯えと、大丈夫?」
僕は答えられなかった。
青年の視線が、僕の手元へ落ちる。
??「え、ちょっと待って??」
壊れたスマホを見て、目を丸くした。
??「スマホ、ばっきばきじゃん!」
僕は反射的に、スマホを胸元へ隠した。
青年は少し考え、急に真剣な顔になる。
??「もしかして……お腹空いて、噛んじゃった!?」
僕は勢いよく首を横に振った。
??「違うの!? よかったあ。スマホって絶対おいしくないもんね!」
そこじゃないけど、。
僕が呆れて見つめると、青年は楽しそうに笑った。
??「ごめんごめん。すっごい暗い顔してたからさ!!」
僕の口元が、ほんの少しだけ緩んだ。
声を失ってから、初めて笑った気がした。
青年はそれには触れず、僕の顔をじっと見る。
??「もしかして、声出せない?」
僕は迷ったあと、頷いた。
驚かれると思った。
かわいそうだと言われると思った。
けれど、青年はあっさり頷き返した。
??「そっか。じゃあ、頷くか首振るかで話そ!」
理由は聞かれなかった。
いつからとも、どうしてとも言わなかった。
??「スマホは使えないよね。」
僕は頷く。
??「帰る道も分かんない?」
もう一度、頷く。
??「連絡したい人とかいる?」
僕の動きが止まった。
みんなの顔が浮かぶ。
りうちゃんの血が浮かぶ。
僕は答えられず、俯いた。
でも青年は追及しなかった。
コンビニの袋から未開封の水を取り出し、僕の少し前へ置く。
??「これ、あげる。あ、怪しい薬とか入ってない新品だからね!?笑」
??「いや、そんな説明するほうが怪しいか?」
一人で悩み始めた青年を見て、また少しだけ笑いそうになった。
青年は自分を指差した。
夢斗「俺、夢斗。二十歳。たぶん善人!」
夢斗は僕の隣ではなく、少し離れた場所へ腰を下ろした。
近づきすぎず、僕が水へ手を伸ばすまで何も言わなかった。
僕が一口飲むと、夢斗は安心したように笑う。
「よかった。ペットボトルまで噛み始めたらどうしようかと思った笑」
さっきまで、知らない人が怖かった。
今も、完全に信じたわけではない。
それでも夢斗の明るさは、なぜか嫌ではなかった。
昔の僕も、誰かが暗い顔をしていたら、
こんなふうにくだらないことを言っていた気がする。
夢斗は少し考え込んだあと、突然手を叩いた。
夢斗「声出ない、スマホ使えない、帰り道分かんない。」
指を一本ずつ折りながら確認する。
夢斗「うん。完全に詰んでるね!」
僕の顔を見て、夢斗は慌てて続けた。
夢斗「でも、おれに会ったから詰み解除!」
そう言うと、何かを思いついたように顔を明るくした。
夢斗「とりあえずさ!」
知らない夜の町に、夢斗の明るい声が響く。
夢斗「おれの家、来るっ?」
あまりにも突然で、僕は目を見開いた。
その笑顔は、元気だった頃の僕によく似ていた。
夢斗くぅんは名前6秒で決めました。
怠惰の青月で更新サボってた🙃
♡くれてもいいんだよ。
コメント
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